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2-5 少年立志編:友人としての線引きを
113 父親を探してる子どもたちがいるぞ……になった
しおりを挟むそんなこんなで3時間程聞いて回っていたら、遠くに見える時計塔がお昼を告げる鐘を鳴らした。
結局手がかりも無く、待ち合わせの場所にトボトボと帰るとイブは先に噴水の中を覗いて水面に指をつけたりしていた。
雰囲気的に当たりはなさそうだけど……一応聞いてみるか。
「どうだった?」
「なーんにもなし、クラディスは?」
「一緒。なーんにもなかった」
「ファザーもしかして帰っちゃったのかなぁ」
「一緒にこの国に来たのは、そのファザーって人とイブだけだったんでしょ? だったら、それはないと思うけどなぁー」
「んー、だといいけど……」
「じゃ、どうしたらいいかなぁ。絵とか書ける?」
「糸人間しか書けないけど、それでいいなら」
「黒い糸人間で見つかるなら苦労しないけど……」
イブが座ってる噴水の縁の横に座って、作戦を練ろうとした。
人探しの時はどうしたらいい? それこそ警察とかに出す方がいいのか? でも、イブがそれをしていない時点であまりそういう手段はとりたくないというか、大事にしたくないのだろう。
(顔の絵がダメならどうしたらいいんだ? ギルドのスタッフさんに話をしてみるのが一番手っ取り早い?)
ロベル王国から来た冒険者のことまで把握しているモノなのかな……。
「イブ、ごめん。色々と考えてみても、あまりいい方法が思い浮かばなかった」
「気にしないでって、手伝ってくれてるだけで助かってるからさ。ありがとね。ただの不法侵入の人だったボクにここまでしてもらって」
「それは全然。僕も助けてもらってるからお互い様だね」
「あははっ、やっぱりクラディスは変な人だ。普通はそんなこと言わないよ」
「イブも変な人でしょ。あとはケトスも変な人だ」
「変な3人でクエストやってるってことか! アハハ、最高だね」
広場で遊んでいる子どもや待ち合わせをしている冒険者やカップルなどを目で追っていると、ハトのようなのが僕の所に飛んで来た。
足先でウロウロしていたから少し足を動かしてみると、バサバサと飛んで行った。
平和だ。すごく平和……。水の音、人の声、足音、羽音……イブの声。たまにはこうやって来たことない所でゆっくりするのもいいなぁ。これこそ『楽しい』ではないか?
以前イブに注意されたことを意識していると、隣の注意してくれた人は近寄ってきたハトに両手を広げて威嚇をしていた。
そんな子どものような一面があるのか。いや、イブは元々大人っぽくは無かったか。
雰囲気的にはケトスの不思議な感じに拍車をかけて、マイペースを引いた感じだな。
「よしっ! 今日は満足いくまでファザーを探そう!」
「おぉっ! 昼の部まであるの!?」
「昼どころか夜までやろう!」
「夜! 夜……? お腹すいちゃうけど……」
「それは我慢して……夕食は外で食べる?」
「外食よりクラディスのご飯が食べたいなぁ」
「じゃあそうしようか。ファザー探しが終わったら少し買い物をして帰ろう」
「はぁーい。ちなみにご飯は」
「オムライスが気に入ってるんでしょ?」
「さっすが、クラディス。分かってる!」
パチンッと指を鳴らして喜んでる。
「あと、ここら辺からあまり離れないようにね」
「もう迷子はごめんだから、そんなことはしないよ。まっかせなさい」
昼から夜にかけて手分けして探していたけど、この日は夜までファザー探しをしていたけど、何の情報も出てこなかった。
日が暮れてきて辺りが暗くなるまで探していたけど、声をかけて変な人に捕まってもダメだからということで中央広場に来た方法を使ってその日は終わった。
「訓練がない日はイブと一緒にファザー探しに動くことにした」とケトスに伝えたら「僕も暇だから人探し付き合うー」と言ってくれて、二日に一回は朝から夜まで三人で人探しをするようにした。
「ファザー知りませんか~」
「すみません、お時間少しよろしいですか? ファザーっていう暗黒森の番人の人探してるんですけど……」
「ファザーって人知ってる?」
こんな感じで三人で聞いているけど、ファザーに関する情報は全然入ってこない。
朝から夜までファザー探し、そんな日々を送っていると『広場で親が行方不明になった子どもが三人いて、父親を探し回ってるらしい』という噂が広まっているらしく、何度か憲兵のお世話になった。その度にリリーさんがすっ飛んできてくれて、説明をしてくれた。
場所を変えたとしても効果が薄いと思って広場からは場所を変えなかった。
そんな調子でイブと会って大体1週間が経って月末まであと1週間と少しとなった日。
ケトスが何か情報を掴んだようで、僕とイブを血盟のところに呼んできた。
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