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二章 恋の病に薬なし
-28- 疫病災物討伐作戦開始
しおりを挟む大火々本帝国軍。
数多くの軍人が籍を置き、国に有事が発生した際に武力を以ってして解決することを目的とした組織である。
その本拠地は帝都の南に位置する朱町内にあり、帝都東の吾妻町で船に乗ったり、朱町真南にある駅舎から蒸気機関車に乗って任務へ向かいやすいようになっている。
有事の際に動くことが鉄則である帝国軍だが、常に兵士を動かし続けている大隊がある。
災害の動物――災物による被害を食い止めることを任務としている災物対策炎護隊だ。
第一炎護中隊を指揮する火焚太蝋は任務中の居住先として基地内の宿舎を利用している。
いつ災物が現れ、猛威を振るうか分からない以上、常に災物の情報が入ってきても問題が無いようにしているのだ。
……とは言え、まがいなりにも新婚なのだから今回の休暇は火焚の屋敷で過ごそうと考え、その為の届出もきっちり出していた。
部下達も休息を取れるようにと、第二、第三炎護中隊に仕事を任せる気でいたのだが……。
太蝋は宿舎の一棟へ入り、とある部屋の扉を叩きながら声を掛けた。
「斬島。休暇は終わりだ。今すぐ全員、招集しろ」
ばたばたと部屋の中で暴れ回る音が響いて数秒後。扉が開くと同時に廊下に声が響き渡った。
「昨日、雨鷺の処理が終わったばかりじゃないっすか~!」
軍から支給されているシャツは皺がよった状態。上着である軍服を肩に羽織っただけのだらしない格好で姿を現した斬島。寝癖にまみれた後頭部を手櫛で何とかしようとしている。
先ほどまで眠っていたことが分かる見た目の側近を見下ろし、太蝋は深い溜息を吐く。
「仕方ないだろう。病雀を見つけてしまったんだから」
「病雀ぅ~!?」
「あぁ。朱ノ里の方で発見した。討伐数は二羽。恐らく病鼠まで発生してるものと思われる」
「休みの日まで災物調査してるんすか!? 病的ですよ! 夏なんですからスズメる場所に居ましょうよ!」
「駄洒落が言えるほど元気なら大丈夫だな。私は大隊長の元へ行ってくる。その間に全員召集させておくように」
「鼠に構ってネズにいたら、ミが滅びますってぇ!」
懲りることなく駄洒落で抗議してくる斬島に背を向け、太蝋は炎護隊の大隊長がいる部屋へ向かった。
病雀を発見したことから始まり、疫病の頭災物である病鼠が発生してる可能性も視野に入れていると話し、長屋一帯の調査許可を求めた。
場合によっては討伐作戦に移行するとも付け加えて。
帝都内の疫病災物発生と言うこともあり緊急性が認められ、大隊長からの許可はすぐに降りた。
太蝋は第一炎護中隊が使用している事務室に入る。
太蝋が入室したと同時に斬島を含む部下達が、ざざっと音を立てて敬礼した。
召集命令を受け取った下士官以上の部下達が揃っている。
太蝋は自身が使っている事務机の前に立ち、部下達を見渡しながら現状説明を始めた。
「本日、一一二○に朱ノ里二丁目付近の長屋に於いて、病雀二羽を発見。他に病雀の姿は見られなかったが、発見場所である長屋一帯が異様な静けさに包まれていた。恐らく病雀は頭災物である病鼠に食われ、数を減らしているものと思われる。しかし、調査は充分ではない。病雀が各地へ飛び回り、疫病の影響を広めている可能性もある。夕陽町や上ノ杜への影響も考えられるだろう」
太蝋は小さく溜息を吐いてから、再び口を開く。
「大隊長より調査及び討伐の指令が下された。これより、我々第一炎護中隊は疫病災物調査及び討伐作戦を開始する。疫病の伝搬は早い。油断すれば帝都全体に広がりかねん。大雨災物討伐作戦終了より間もないが、各々、気を引き締めて取り掛かるように」
第一炎護中隊の隊員達は太蝋の言葉に対し、声を揃えて「了解!」と返答し背筋を伸ばした。
そして、太蝋の指示を受け、各々にすべき仕事に就いていく。
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