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運命の出会い

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しゃがみ込んでヘーゼルナッツを拾う。地道な作業で飽きてきた。
「ナッツを拾う魔法があったらなあ。たぶんあるんだろうけど師匠は地味な魔法は知らない」

師匠が教えてくれる魔法は戦闘魔法のみ。攻撃魔法と一般に言われているものだ。弟子になってまだ1年だから基礎しか教えてもらっていない。やっと木を倒せるぐらいに上達した。焦点が定まらないというかパワーが足りないんだと思う。空を飛ぶ魔法は1メートル浮くのがやっとだし。師匠はまだ1年目なんだからそんなものだと慰めてくれた。

14歳から本格的に修行を始めたのは少し遅かった。魔法使いの子は生まれてすぐに魔法を学び始める。

ブツブツ考えながら一個一個ヘーゼルナッツを拾う。冬の間の貴重な食糧だからできるだけ集めておかないと。
「あれっ?」クンクンと鼻を動かした。

焚き火の匂いがする。誰だろう。

師匠が森に結界をはったから人間は森に入り込めないはずなのにおかしいな。

アンドレは立ち上がると、焚き火の匂いのする方に落ち葉を踏みながら進む。

低木に身を潜めて焚き火をしている者を正体を確認した。

黒い服を着た大柄のおじさんだった。魔法使いかと思ったが、よく見るとクロスのネックレスをしているから僧侶らしい。焚き火をして小さなフライパンでヘーゼルナッツを炒っている。

師匠に報告しようかと思ったが好奇心のほうが勝ってしまった。

結界が入っているのに入ってきたってことは人外? みた感じおだやかそうだし邪悪な気も感じられない。

「ど、どうしたの?」ちょっと緊張しながら僧侶に近づいた。なにせ師匠以外の人と話すのは1年ぶりでどう挨拶していいのか忘れていた。

「やあ。道に迷ってな。昨日もここで野宿したんだよ」僧侶はいやいや困ったとした苦笑いをした。
「結界がはってあるのにどうやって入ったの?」
「私は僧侶だから、普通の結界くらい解けるよ」
「はあ、そうなの?」
「でも他の呪いがかけてあるね。迷いの魔法。君も迷ったのかい?」
「迷ったと言うか。べつに、えーと。僕はこの森はよく知ってるから」
「じゃあ明日になったら道案内してくれるかい? もうすぐ夜になるから今日はここで休むよ」
「えーと、うーん」どうしよう。

僧侶は背負いカバンからごそごそ何か取り出した。
「これあげるよ」
小さな袋だった。聖ルーンマリー修道院と印字してある。
「ありがとう」
リボンを解いて中を見ると焼き菓子がぎっしり入っている。

「クッキーだ」お菓子なんて何年ぶりだろうか。
サクッと一口かじる。バターの濃厚な味と甘味が口の中に広がる。サクサクした食感、刻んだくるみがはいっている。
このクッキー、最高に美味しい。地味ながら高級品だ。
我を忘れて次から次に口に放り込んだ。気がついた時は完食していた。

「そんなにお腹が空いていたのかい?」
「あまりにも美味しくて。すっごく美味しかったです」
「じゃあ明日、道案内頼むよ」
「まだクッキーありますか?」
「もう無いよ。あれで最後だ」
「他にお菓子持ってますか?」
「ないよ。食いしん坊な子だね」僧侶は笑う。

アンドレは恥ずかしくて小走りにその場去った。

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