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魔道士の弟子
しおりを挟む昔、好きだった人は今どうしているかなってたまに考えてしまう。もう過去の人なのにね。なんでだろうね。
ベッドに横たわって考えている少年はアンドレ。黒髪でエメラルド色の瞳が美しい15歳の少年だ。
「探すっていっても南の都までここから歩いて三ヶ月かかるし。大変すぎる」
トントントン、ドアをノックする音。師匠か。
「はい」返事をするとドアが開いた。
肩までかかる黒髪の若い男性がマグカップを持って部屋に入ってくる。
「また夜更かしして。ほらこれでも飲んで寝な。きちんと寝ないと身長のびないぞ」
「うん」
あったかい飲み物を両手で受け取ると、ずっとすすった。
カモミールティーか。もうすぐ秋も終わるから冬の前にハーブの収穫をしておかないと。
師匠にちゅっと髪にキスされた。
「じゃあ、おやすみ」
師匠は優しい人だ。身寄りのない自分を引き取ってくれて魔術も教えてくれる。ここでの生活はもう1年になる。
身体目的で家に置いてくれているのかと思ったけどそうではない。不思議な人だ。
ずっとここで師匠と住んでいれば平和で安定した生活ができる。でも最近、退屈だ。
こんな森の奥で二人っきり。食べるものは森で取れるものだけ。師匠は魔道士だからそれで満足だろうけど、お菓子もパンもない生活は正直しんどい。
街に一人で行ってはいけないと釘をさされているし、お金持ってないから買い物に行ってもしかたないんだけどさ。
「師匠の言うこと聞いてもう寝るか」
空になったマグをサイドボードの上に置く。外からはフクロウの鳴き声が聞こえている。
***
11月半ばを迎え、そろそろ冬の準備を始めなければいけなかった。
魔法の講義が終わり、アンドレは出かける準備をする。保存のきくヘーゼルナッツやベリー類を集めておかないと。
つるで編んだバスケットを掴むと玄関に向かう。
「師匠、ナッツと果物を採集しに行ってきますね」アンドレは手を振って玄関のドアを静かに閉めた。
「暗くなる前に戻ってくるんだよ」ドアの向こうから師匠の大きな声が聞こえる。
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