1 / 6
魔道士の弟子
しおりを挟む昔、好きだった人は今どうしているかなってたまに考えてしまう。もう過去の人なのにね。なんでだろうね。
ベッドに横たわって考えている少年はアンドレ。黒髪でエメラルド色の瞳が美しい15歳の少年だ。
「探すっていっても南の都までここから歩いて三ヶ月かかるし。大変すぎる」
トントントン、ドアをノックする音。師匠か。
「はい」返事をするとドアが開いた。
肩までかかる黒髪の若い男性がマグカップを持って部屋に入ってくる。
「また夜更かしして。ほらこれでも飲んで寝な。きちんと寝ないと身長のびないぞ」
「うん」
あったかい飲み物を両手で受け取ると、ずっとすすった。
カモミールティーか。もうすぐ秋も終わるから冬の前にハーブの収穫をしておかないと。
師匠にちゅっと髪にキスされた。
「じゃあ、おやすみ」
師匠は優しい人だ。身寄りのない自分を引き取ってくれて魔術も教えてくれる。ここでの生活はもう1年になる。
身体目的で家に置いてくれているのかと思ったけどそうではない。不思議な人だ。
ずっとここで師匠と住んでいれば平和で安定した生活ができる。でも最近、退屈だ。
こんな森の奥で二人っきり。食べるものは森で取れるものだけ。師匠は魔道士だからそれで満足だろうけど、お菓子もパンもない生活は正直しんどい。
街に一人で行ってはいけないと釘をさされているし、お金持ってないから買い物に行ってもしかたないんだけどさ。
「師匠の言うこと聞いてもう寝るか」
空になったマグをサイドボードの上に置く。外からはフクロウの鳴き声が聞こえている。
***
11月半ばを迎え、そろそろ冬の準備を始めなければいけなかった。
魔法の講義が終わり、アンドレは出かける準備をする。保存のきくヘーゼルナッツやベリー類を集めておかないと。
つるで編んだバスケットを掴むと玄関に向かう。
「師匠、ナッツと果物を採集しに行ってきますね」アンドレは手を振って玄関のドアを静かに閉めた。
「暗くなる前に戻ってくるんだよ」ドアの向こうから師匠の大きな声が聞こえる。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

有能官吏、料理人になる。〜有能で、皇帝陛下に寵愛されている自分ですが、このたび料理人になりました〜
𦚰阪 リナ
BL
琳国の有能官吏、李 月英は官吏だが食欲のない皇帝、凛秀のため、何かしなくてはならないが、何をしたらいいかさっぱるわからない。
だがある日、美味しい料理を作くれば、少しは気が紛れるのではないかと考え、厨房を見学するという名目で、厨房に来た。
そこで出逢った簫 完陽に料理人を料理を教えてもらうことに。
そのことがきっかけで月英は、料理の腕に目覚めて…?!
料理×BL×官吏のごちゃまぜ中華風料理BLファンタジー。ここに開幕!

平凡な俺、何故かイケメンヤンキーのお気に入りです?!
彩ノ華
BL
ある事がきっかけでヤンキー(イケメン)に目をつけられた俺。
何をしても平凡な俺は、きっとパシリとして使われるのだろうと思っていたけど…!?
俺どうなっちゃうの~~ッ?!
イケメンヤンキー×平凡

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生当て馬召喚士が攻め度MAXの白銀騎士に抗えません
雪平@冷淡騎士2nd連載中
BL
不幸体質大学生の青年が転生したのは魔術師ファンタジーBLゲームの世界だった。
当て馬として生まれたからには攻略キャラの恋の後押しをする事にした。
しかし、この世界…何処か可笑しい。
受け主人公が攻めに、攻め攻略キャラが受けになっていた世界だった。
童顔だった主人公は立派な攻めに育っていた。
受け達に愛されている主人公は何故か当て馬に執着している。
傍観者で良かったのに、攻めポジも危ぶまれていく。
究極の鉄壁一途な白銀騎士×転生当て馬召喚士
ゲームを忠実にするためには、絶対に受けとしてときめいてはいけない。
「君といられるなら、俺は邪魔する奴を排除する」
「俺はただの当て馬でいい!」
※脇CP、リバキャラはいません、メインCPのみです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる