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 その言葉を聞いた途端、アナリスは息を呑んだ。

──胸の奥から嬉しさが込み上げてくるのを感じた。

「ラフィー様……」

 アナリスは嬉しさと戸惑いが入り混じったような複雑な表情で彼を見上げた。

「迷惑だったかな? 荷が重かったりしたか?」

 ラファエルは、不安そうな面持ちで訊いてきた。

 アナリスは慌てて首を横に振る。

「いえ……そんなことありません」

 アナリスは、微笑みを浮かべて言った。

「よかった……」

 ラファエルは安堵のため息をつくと、ほっとした表情を浮かべた。

 それから、アナリスの手を包み込むように握ってくる。その感触はとても優しくて温かかった。

(ああ……わたし、本当にこの人のことが好きなんだわ)

 アナリスは胸の奥から湧き上がってくる感情を抑えることができなかった。

 自然と涙が滲んでくる。

──それは嬉しさと、そして彼への愛おしさが入り混じったものだった。

「メイリーン嬢?」

 ラファエルはアナリスの涙を見ると、心配そうに顔を覗き込んできた。

「ごめんなさい……なんだか急に胸がいっぱいになっちゃって」

 アナリスは涙を拭いながら答える。

「ありがとう」

 ラファエルはアナリスの頭を優しく撫でた。

 その優しさが心地よく、アナリスの心は安らいでいくのを感じた。

「アナリス……まだ時間はあるかい?」

 ラファエルが躊躇いがちに尋ねた。

「ええ、大丈夫ですわ」

 アナリスは微笑みながら答える。

 すると、ラファエルは立ち上がって手を差し伸べてきた。

 アナリスはその手をそっと握ると、彼の後についていった──。



 二人は王宮の中庭を通り抜けると、やがて薔薇の咲く庭園に辿り着いた。

 すっかり日が落ちていて、月明かりに照らされた薔薇はとても美しく幻想的だった。

「とても綺麗……」

 アナリスは思わず感嘆の声を上げる。

 ラファエルは微笑むと、近くのベンチに腰を下ろした。

「きみも座ろう」

 そう言って彼は自分の隣をぽんぽんと叩く。アナリスは少し躊躇いがちに腰を下ろすと、彼との距離の近さに鼓動が高鳴った。

(ああ……どうしよう)

 アナリスは心の中で呟く。

──だが、不思議と不快感はなかった。むしろ心地よいくらいだ。

(ラフィー様……好き)
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