【完結】作家の伯爵令嬢は婚約破棄をされたので、愛読者の第三王太子と偽装結婚して執筆活動に邁進します!

朝日みらい

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 アナリスは彼の横顔を見つめ、心の中で呟いた。

 彼は何を考えているのだろう?気になって仕方がない。

「アナリス……」

 不意にラファエルが口を開いた。

 アナリスはどきりとして、身を強張らせた。 

──次の瞬間、ラファエルはアナリスを抱き寄せると、耳元で囁いた。

「愛している」

 その言葉を聞いた途端、アナリスの目から、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。

──それは今まで味わったことのない幸福感だった。

(ああ……わたし、この人から離れられない。偽装でなく、本気で好きなんだわ)

 アナリスはぼんやりとした頭でそう考えた。

 そして、無意識のうちにラファエルは彼女の背中に腕を回すと、ぎゅっと力を込めた。

「ダメだ。ずっときみのことばかり考えている」

 ラファエルはアナリスの耳元に顔を寄せて囁いた。

 その声はとても甘く優しく感じられた。

「まあ…うれしい……」

 アナリスは夢見心地で呟いた。

──その言葉を聞いた瞬間、ラファエルは彼女の顎に手を当てると、自分の方へ向けさせた。

 そして、ゆっくりと顔を近づけてくる──。

(あ……)

 アナリスは思わず目を閉じた。

──唇が重なる感触に全身が熱くなるのを感じた。

 それはとても甘く、そして幸せな気持ちにさせてくれるものだった。

「アナリス……」

 しばらくして唇が離れると、ラファエルはアナリスをじっと見つめたまま言った。

 その熱い視線に心を奪われる。

 ──彼は本当に自分のことが好きなのだと実感することができた。

(わたしもこの人のことをもっと知りたい。もっと好きになりたい!)

 アナリスは思った。

──この想いをどうしていいかわからないほどに、胸がいっぱいになる。

「ラフィー様……わたしもあなたのことが好き。愛してます。偽装結婚なんて、やっぱり嫌よ……」

 アナリスは自分の気持ちをはっきりと告げた。

──経歴が噓で、許されない恋だとしても構わないと思った。

 今、こうして一緒にいたい。それこそが幸せなのだから。

「ああ、アナリス……!」

 ラファエルはアナリスを強く抱きしめた。

 アナリスは彼の胸に顔を埋める。
 
──彼の鼓動が聞こえてくるような気がした。

 そのまましばらく抱き合っていたが、やがて名残惜しそうに離れると、再び唇を重ね合わせた。

「愛していくよ、一生かけて愛し抜くから」
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