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第1章 人と魔族と精霊と
3ー2
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私と椎名は美奈が泣き止み、暫くの間落ち着くのを待った。
泣きたい時は泣けるだけ泣いてすっきりすれば頭の中もクリアになるものだ。
椎名も同じように思っているのか、泣きじゃくる彼女の背中を優しくぽんぽんと叩いてやっていた。
「はいはい……大丈夫だから」
まるで子供をあやすように、美奈を愛おしむようなその表情を見て、椎名もれっきとした女性なのだなと改めて思わされた。
ここまで戦友のように最前線で戦わせてしまっていた事を少し反省する。
慈愛の表情で美奈を抱きしめる椎名は本当に聖母のようだ。
とはもちろん言わないでおく。色々いじられそうだからな。
――一頻り泣き続けると、美奈もようやく落ち着いたようだった。
ふと見上げた彼女の顔は、何とも晴れやかで。憑き物が落ちたように清々しい光を放っているようであった。
その微笑みはいつもの女神のそれだ。美奈もいつもの調子を取り戻してくれたと思えた。
私はそこで椎名と目配せし、ベッドに腰掛け、三人互いに向き合った。
そこで一つコホンと咳払いをする。
「それではこれからの事について話そうと思うのだが、構わないか?」
椎名も美奈も並んで私の顔を見、こくりと同時に頷いた。
そんな矢先の事だ。
「……」
私は突然言葉を失ってしまう。
今更ながらに気づいてしまったのだ。
だが、これは正直かなり言い出し辛い。しかも美奈の前でというのが特に憚られた。
それでもこのまま黙っているというのも厳しい。
後々それを認識された時に何を言われるか分からないのだ。
少考した後、私は意を決して彼女に告げる事を決める。
「――あ~……、椎名?」
「ん……? どうしたの隼人くん」
椎名は目をぱちくりとさせ、まばたきと一つ二つ。
突然名前を呼ばれた意味には気づいていない様子。
それが彼女らしいというか。本当にいつもいつも人の気も知らずに迂闊な奴だと短いため息が漏れる。
「な、何なのよ……ため息とか。感じ悪いんですけどっ」
私は最早怒りを通り越して呆れ果てた。
いや、まあ実際は怒る程の事ではないし怒ってなどいない。
冷静に考えれば寧ろこれはラッキーというか。得したというか。
私はポリポリと頭を掻きながら顔を横に向け、椎名から視線を逸らす。
それからぽそりとようやく用件を伝えるのだ。
「――椎名よ……その……もう少し露出を控えたらどうだ?」
「へ?」
そんな私の物言いに、椎名は間の抜けた声で返すのだ。
最早コイツは露出狂なのではないかとすら思える。
彼女は今、激しい戦いの中で衣服は破れ大きく肌が露出している状態だったのだ。
元々生足が太腿の辺りから露出していた。上は二の腕からが見える程度のものであった。
それが先の戦いで、お腹回りや腕回りなどもかなり露出し、布面積がかなり減ってしまっていたのだ。
そんな私を見て椎名は、恥ずかしがるどころか俄然ニヤニヤとした笑みを浮かべる。
「何よ隼人くん。美奈というものがありながら、私を見て欲情しちゃってるわけ?」
「ばっ……!? 馬鹿なっ!? 下品だぞ椎名! こんな時にっ!」
と言いつつも私は平静が保てず声を荒げてしまう。
こうなれば椎名の思う壺だとは解っていても、女性にそれ程高い免疫力があるわけではないのだ。
チラチラと美奈の様子を落ち着きなく伺ってしまう。
美奈はというと、先程までの涙が嘘のようににこやかな笑みを作っている。
「ひっ……!?」
美奈の物言わぬ笑みに、変な声が漏れた。
私は彼女のこの笑みがが怖い。怖過ぎるのだ。
「み……美奈? ち、違うのだぞ?」
恐る恐る声を掛ける。
「何が違うのかな? 隼人くん」
「ひっ!?」
更に声が漏れるがもうそんなことは気にしてはいられなかった。
美奈の内側からどす黒い闇のオーラが湧き上がっていくのが見える。
それが彼女の外側にも漏れ出して、止められそうにない。
何だか『ゴゴゴゴゴゴ……』とかいう音が響いていそうだ。怖い。
椎名はそんな私を見て終始ニヤニヤとしている。
本当に……覚えておけよ、この女狐め……。
「わ~、隼人くんの目がヤラシ~。いや~ん」
「し、椎名! とりあえず布団を被っておけっ!」
私は両腕で自身の体を抱く椎名に向け、敷いてあった掛け布団を投げて渡す。
彼女は更にわざとらしく「いや~ん」と言いつつそれで体を覆い隠した。
とにかくこれで一先ず彼女の露出の憂いは無くなったのだ。
私は半ば開き直り、コホンと咳をして強引に話を進めていく事にした。
「えーとだな……、取り敢えずこれからどうするかだが、椎名、先ずはお前に起こった事について詳しく聞かせてくれないか?」
「え~、せっかく面白いのに~」
「も、もうその事はいいだろうっ」
冷や汗を浮かべる私を見て、楽しそうに笑む椎名。
「ククク……まあ、いーわ。本当はそんな場合でもないしね」
椎名はふうとため息を吐きつつ、その表情には若干の影を落とすのだ。
「あのさ。私の話の前に確認しておきたいことがあるんだけど」
彼女は急に居すまいを正すように、ベッドの上に正座し、真面目な表情を浮かべる。
それに私も美奈も、ほんの少し身構えてしまう。
「ここにいる私たち以外の……工藤くんとフィリアの安否について知ってることがあったら先に共有しておきたいんだけど。これからの動きにも関わってくると思うから」
今この場にはいない二人の名前が出てきて、部屋の中の空気が張りつめる。
目の前にいる美奈が、ふっ、と小さく息を呑んだ。
泣きたい時は泣けるだけ泣いてすっきりすれば頭の中もクリアになるものだ。
椎名も同じように思っているのか、泣きじゃくる彼女の背中を優しくぽんぽんと叩いてやっていた。
「はいはい……大丈夫だから」
まるで子供をあやすように、美奈を愛おしむようなその表情を見て、椎名もれっきとした女性なのだなと改めて思わされた。
ここまで戦友のように最前線で戦わせてしまっていた事を少し反省する。
慈愛の表情で美奈を抱きしめる椎名は本当に聖母のようだ。
とはもちろん言わないでおく。色々いじられそうだからな。
――一頻り泣き続けると、美奈もようやく落ち着いたようだった。
ふと見上げた彼女の顔は、何とも晴れやかで。憑き物が落ちたように清々しい光を放っているようであった。
その微笑みはいつもの女神のそれだ。美奈もいつもの調子を取り戻してくれたと思えた。
私はそこで椎名と目配せし、ベッドに腰掛け、三人互いに向き合った。
そこで一つコホンと咳払いをする。
「それではこれからの事について話そうと思うのだが、構わないか?」
椎名も美奈も並んで私の顔を見、こくりと同時に頷いた。
そんな矢先の事だ。
「……」
私は突然言葉を失ってしまう。
今更ながらに気づいてしまったのだ。
だが、これは正直かなり言い出し辛い。しかも美奈の前でというのが特に憚られた。
それでもこのまま黙っているというのも厳しい。
後々それを認識された時に何を言われるか分からないのだ。
少考した後、私は意を決して彼女に告げる事を決める。
「――あ~……、椎名?」
「ん……? どうしたの隼人くん」
椎名は目をぱちくりとさせ、まばたきと一つ二つ。
突然名前を呼ばれた意味には気づいていない様子。
それが彼女らしいというか。本当にいつもいつも人の気も知らずに迂闊な奴だと短いため息が漏れる。
「な、何なのよ……ため息とか。感じ悪いんですけどっ」
私は最早怒りを通り越して呆れ果てた。
いや、まあ実際は怒る程の事ではないし怒ってなどいない。
冷静に考えれば寧ろこれはラッキーというか。得したというか。
私はポリポリと頭を掻きながら顔を横に向け、椎名から視線を逸らす。
それからぽそりとようやく用件を伝えるのだ。
「――椎名よ……その……もう少し露出を控えたらどうだ?」
「へ?」
そんな私の物言いに、椎名は間の抜けた声で返すのだ。
最早コイツは露出狂なのではないかとすら思える。
彼女は今、激しい戦いの中で衣服は破れ大きく肌が露出している状態だったのだ。
元々生足が太腿の辺りから露出していた。上は二の腕からが見える程度のものであった。
それが先の戦いで、お腹回りや腕回りなどもかなり露出し、布面積がかなり減ってしまっていたのだ。
そんな私を見て椎名は、恥ずかしがるどころか俄然ニヤニヤとした笑みを浮かべる。
「何よ隼人くん。美奈というものがありながら、私を見て欲情しちゃってるわけ?」
「ばっ……!? 馬鹿なっ!? 下品だぞ椎名! こんな時にっ!」
と言いつつも私は平静が保てず声を荒げてしまう。
こうなれば椎名の思う壺だとは解っていても、女性にそれ程高い免疫力があるわけではないのだ。
チラチラと美奈の様子を落ち着きなく伺ってしまう。
美奈はというと、先程までの涙が嘘のようににこやかな笑みを作っている。
「ひっ……!?」
美奈の物言わぬ笑みに、変な声が漏れた。
私は彼女のこの笑みがが怖い。怖過ぎるのだ。
「み……美奈? ち、違うのだぞ?」
恐る恐る声を掛ける。
「何が違うのかな? 隼人くん」
「ひっ!?」
更に声が漏れるがもうそんなことは気にしてはいられなかった。
美奈の内側からどす黒い闇のオーラが湧き上がっていくのが見える。
それが彼女の外側にも漏れ出して、止められそうにない。
何だか『ゴゴゴゴゴゴ……』とかいう音が響いていそうだ。怖い。
椎名はそんな私を見て終始ニヤニヤとしている。
本当に……覚えておけよ、この女狐め……。
「わ~、隼人くんの目がヤラシ~。いや~ん」
「し、椎名! とりあえず布団を被っておけっ!」
私は両腕で自身の体を抱く椎名に向け、敷いてあった掛け布団を投げて渡す。
彼女は更にわざとらしく「いや~ん」と言いつつそれで体を覆い隠した。
とにかくこれで一先ず彼女の露出の憂いは無くなったのだ。
私は半ば開き直り、コホンと咳をして強引に話を進めていく事にした。
「えーとだな……、取り敢えずこれからどうするかだが、椎名、先ずはお前に起こった事について詳しく聞かせてくれないか?」
「え~、せっかく面白いのに~」
「も、もうその事はいいだろうっ」
冷や汗を浮かべる私を見て、楽しそうに笑む椎名。
「ククク……まあ、いーわ。本当はそんな場合でもないしね」
椎名はふうとため息を吐きつつ、その表情には若干の影を落とすのだ。
「あのさ。私の話の前に確認しておきたいことがあるんだけど」
彼女は急に居すまいを正すように、ベッドの上に正座し、真面目な表情を浮かべる。
それに私も美奈も、ほんの少し身構えてしまう。
「ここにいる私たち以外の……工藤くんとフィリアの安否について知ってることがあったら先に共有しておきたいんだけど。これからの動きにも関わってくると思うから」
今この場にはいない二人の名前が出てきて、部屋の中の空気が張りつめる。
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