私のわがままな異世界転移

とみQ

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第2章 ピスタ襲来、限界を越えたその先に

2-22

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「はあああっ……!  エンチャント・ストーム!」

  私はこの瞬間ディバインテリトリーを解除。
  ユニコーンナックルに暴風を宿す。
  私のマインドのありったけを込めて。とは言っても、もはやほんの残りカスでしか無いのだけれど。
  今の私に出来得る最強の攻撃で、一体でも多く数を減らすのだ。ただ、この攻撃を放てばこれ以上魔族を倒すことは厳しくなる。せいぜい弾除け程度の仕事しかできなくなるだろうか。
  でも今の私の力では魔族に通用する攻撃を放てるのはここらが限界だ。あとは――。
  私は隼人くんの方をちらりと見る。
  こんな状況なのに奇しくも目が合った。そんな余裕なんてお互いに無いはずなのに。

「ごめん、隼人くん。――あとは頼んだ」

  彼には到底届かない声音でそう告げた。
  隼人くんの顔はもう見れなかった。
  すぐに魔族へと視線を移し、私は両足に力を込めて跳躍。
  そのまま風を噴射し、魔族へ向けて自身の体を一条の矢と化す。

「はあああっ!!」

  放たれたヒートブレスを四方へと撒き散らし、回りのレッサーデーモン数匹を焼き払う。
  熱風に髪を焼かれながら、三体のレッサーデーモンを貫いた。
  ボボボンッと霧散するように消滅し、そのままの勢いで本命である狼の魔族の核へとユニコーンナックルを構えて自身を照射。
  ものの見事に私の攻撃は狼の魔族の核を貫き、打ち砕き、その体を灰へと化すことに成功する――はずだった。

「残念だったなあ!」

  私の渾身の一撃は狼の魔族の左腕の一部を吹き飛ばし、既の所で避わされてしまう。
  レッサーデーモンを経由したのがまずかった。
  狙いも加速も逸れ、奪われ、四級魔族の命を刈り取るには至らなかったのだ。
  完全に欲張りすぎた。
  魔族は腕を飛ばされながらも獲物を捉えることに喜びを感じているのか、痛がる様子もなく残った右手で後方へと突き進もうとする私の足首を掴んだ。

「――っ!?」

  そのまま私の体はいくらかの浮遊感の後、もの凄い勢いで地面に叩きつけられた。

「がっ……はっ……!!」

  背中にあり得ないくらいの衝撃が走り、息が詰まる。
  そんな瞬間も束の間。すぐに狼の拳が私のお腹にめり込んできた。

「……っっ!!」

  声も出ない、出せない。
  内臓がぐちゃぐちゃになったんじゃないかってくらい痛くて、気が遠くなりそうになりながら、けれど下から湧き上がってくる嗚咽の不快感で意識を失うには至らなかった。
  そのまま立て続けに数発殴られた、と思う。
  その一撃だけで私の体力は底をついたようになって何も考えられなくなった。

「おっと、まだ寝るなよ?」

  気がつけば前髪を掴まれて、ぺしぺしと頬を叩かれていた。
  意識を失ったのかどうかさえ分からない。ただ気分は死ぬほど最悪だ。

「ほらよっ!」

「がっ……!」

  またまた膝がお腹に入って、今度は地面に倒れ伏した。
  もう感覚は麻痺して痛いのかどうかさえも分からない。
  頭がぐらぐらして、身体は動いてはくれない。
  ふと、死ぬんだと思った。
  死というものがすぐそこに、身近に。現実のものとして迫っているんだって。
  そんな状態の中、魔族はというと今も周りにいるはずなのに、動こうとしない。
  ただ笑い声が遠くで聞こえてくる。
  私のことを弄んでいるんだ。
  遠退いていく意識の中でそんな思考が頭を過る。
  本当に、魔族っていう種族は最低だ。
  それでも頭の中は曖昧で、はっきりとした思考ももはやできないでいた。
  考えることをやめたくなってしまっているのかもしれない。
  いつもあんなに近くに感じていた風さえも今は凪いでいる。
  隼人くんは大丈夫だろうか。
  美奈は泣いてないかな。
  工藤くん。――バカ工藤。
  ごめん。
  ごめんなさい、って何に謝っているの私。バカじゃないの。
  私の近くに一つの陰を感じる。きっとあの魔族だ。
  別に見なくとも、ニヤニヤとさも愉しそうに私を除き込む狼の魔族の顔が容易に想像できた。
  もう耳も聞こえない。身体中が痛い。息をするのも苦しい。
  私……負けちゃったんだ。こんなあっさりと。
  その時すぐ側で気配を感じた。
  狼の魔族が私に向かって爪を振り下ろして来たのだろう。止めを刺すために。
  痛そう。嫌だ。嫌だよ。やめてよ。そんなことしないでよお。
  ここにきて恐怖の感情が湧き上がってきた。
  死ぬのが恐い。どうしようもなく恐い。
  やけに時間がスローモーションに感じられて、でも体は1ミリも動かせなくて。体が勝手に小刻みに震えていた。
  ――ああ、もうダメだ。
  ――もうどうしようもない。
  ――私は――死ぬんだ。
  そう思った時。私は薄れ行く意識の中で誰かの声を聞いた気がした。
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