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メガネスーツ女子とジャガイモとトイレ問題
頁47:小さな殺戮者とは 2
しおりを挟む「……!」
恐ろしく、冷たい目。年端も行かない子供がする目だとは到底思えない様な。
彼が瞬時に纏った冷気にも似た雰囲気に我々は息を呑んだ。いや、呑まされた。
「あんた達『 』の遣い、なんでしょ。大人達が騙されてる姿じゃなくて本当の意味で。見てたよ、色々」
思わず神々廻さんと目を見合わせる。【辞典】を弄る時は周囲に最大限注意していたつもりであったが…。だが『某の遣い』とやらだと思っているという事は我々の本当の姿には気付かれていないらしい。…そう言えば、我々のこの役割を知られたらどうなるんだろうか? 迂闊に喋ると制限がまた追加されそうだから口には出さないでおくけど。
「…だとしたら?」
鎌をかけてる訳ではない。この星の人から見れば人外魔境な現象を起こしている我々であっても敢えて接触を図る、という事はそれなりの目的があるからだろう。
先程のあの目を見る限り年齢がどうこうというレベルでは無い気がした。ならばはぐらかしたりする意味は無い。
あまりのギャップに気圧されてしまったが、私も漸く落ち着いた。
「僕、戦闘職になりたい」
「何故ですか」
「お父さんとお母さんを殺した敵対生物を皆殺しにしたいから」
「な…!?」
表情一つ変えずにとんでもない事を言う。神々廻さんは驚いた様だが私は可能性の一つとして予想はしていた。
「ひろしさんは戦闘職なのにどうやって戦闘職になったのか何故か知らなかった。僕が子供だからはぐらかしてるだけかと思ったけど本当に知らないみたいだった。そんな事ってある?」
「……」
恐らくそれはひろしさんが───【辞典】による歴史ルート決定の際に追加要素として据え置かれたからだろう。
考えたくなかった可能性がより現実味を帯びた。
「そこから考えられる事は色々あった。それでもお父さんとお母さんと過ごした記憶は僕にとっては真実だから。だから復讐する。その為に力が欲しい。それだけ」
この子は───まさか、理解しているというのか。
自分が、いや世界がある日突然創られたという事実を。もしそれを理解しているのであればその両親の記憶も、殺されたという事実も全ては───
「………」
神々廻さんが震える手を彼の肩に置く。
「ちょっと神々廻さん、落ち着い…」
「オバエ…グロヴジダンダナァ……!!」
涙と鼻水を同時に流しながら号泣していた。
「う、うん、まあ……あの、拭いたら…?」
余りにも酷いその顔に、心に氷原を宿す少年すらドン引きした。
(次頁/47-3へ続く)
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