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メガネスーツ女子と死後?の世界
頁34:男だらけのおっさん祭とは 1
しおりを挟む「さあて、気合入れなきゃメシまでに終わらんぞぉ…♪」
ひろっさんがどこか楽し気に呟いた。マジすか。体動かすの好きなのかな? そういう体には見えないケド…。
ついさっきまでいた棺桶が並ぶ墓場予定地に再び来たワケだけど、そこには既に何人ものおっさん達がひしめいて穴掘り作業に勤しんでいた。
お……男臭ェ……。トイレの振りして逃げようかな…。
そんな算段を立てていると、ひろっさんが大声でみんなに叫ぶ。
「おいみんな聞いてくれ! なんと…旅人さんであるこのにーちゃんが、一緒にあいつらの為の穴掘りを手伝ってくれるってよォ!! こんな有難い事はねぇよなあぁ!!」
一瞬の沈黙。おっさん達がきょとんとしている。しかしその直後───
『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』』』
「ヒェッ」
地面が割れるんじゃないかってくらいの大歓声。罵声だったらどれだけ良かったでしょう。逃げられたのに。
こんなに喜ばれてたらやるしかないじゃないか。
「あんちゃん、名前は?」
おっさんズの中の一人、確か最初にこの村に来た時にひろっさんと話していた体格のいいおっさんだった気がする。
「えと…神々廻 志雄です…」
「おお、外国の名前だけあって変わってんな! シシバでいいか? おれはたけしだ! よろしくな!!」
「あ、ハイ、よろしくお願いしますたけしさん…」
『『『うおおおおおおおおシシバァーーー!! シ・シ・バ!! シ・シ・バ!!!』』』
なにこのサバト。こわい。
「よっしゃ、旅人さんに弔ってもらえるなんざあいつらも喜んでくれるってモンよ! 頑張ろうぜみんなァ!!」
『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』』』
たけしさんの掛け声で活気付くおっさん達。もうそれいいですって。叫びだけで疲れそう。
───これで逃げるに逃げられなくなったな。
この状況をさも楽しそうにシュウが茶々入れしてくる。
───うるさいな。逃げるつもりなんて無いっつーの!
───どうだか。
───俺達のせいで死んじまった人達なんだから…知らん顔なんて出来ないだろ。
───フン。御立派な事だな。
───あ、でもどっかで交代してくれよな。
───…。
───あの…シュウさん…? なんで黙ってんの? ちょ、おま!!!
───…。
あの野郎…こういう時だけだんまりかよ!
「シシバ、道具の扱いはどうだ?」
たけしさんがオレに差し出してきたのは…うん? なんだろうコレ??
名前が付いていないせいだろうか、それが何となくL型の農機具であるのは予想できたケドそれ以上の情報が全く分からない。
恐らくは…鍬だっけ? 鋤だったっけ?? まあどっちでもいいか。
「あ、多分イケますよ」
軽く返事してその物体の柄と思われる部分を握って受け取る。
うわ、何だコレ!? ワケ分かんない!
軽くも重くもない、感触が分からない、そこにあるのかも自信無い。空気を握りしめているみたいに現実味が無い。こんなんで本当に地面なんて掘れるの? 何て言うか無理矢理表現するとしたら『ああああ』だ。
「おい…大丈夫か? なんだか顔色悪いぞ…?」
ひろっさんが心配そうにこちらを伺っている。いけね、ボーっとしてる場合じゃないよな。
「ニャハハハ! 心配御無用! オレちゃんに任せておきなさ~い!」
持てているのかも分からない物体を感覚だけでぐるんと一回転させてバットの様に肩に担ぐとオレは大見得を切った。じゃないとカッコつかないジャン?
『『『うおおおおおおおおシシバァーーー!! シ・シ・バ!! シ・シ・バ!!!』』』
やっちまった。自分で煽ってどうするんだ。
いや、もうここまで来たら『やる』一択っショ!
「たけっさん、オレはドコをやったらいいの?」
「よっしゃ、じゃあシシバはど真ん中を行ってくれ。キツかったら無理しないで言ってくれよな!」
「ナハッハー! 余裕余裕♪」
背筋に流れる冷や汗を気付かない振りして、オレはみんながスペースを開けてくれた中央付近まで自信たっぷりに闊歩する。
分かってる…死亡フラグをガンガン打ち立ててしまっている事は。オレの馬鹿ァァァ!
肩に担いだ気がする農具を何となく両手で握る。たぶん握ってる。ハズ。
どうしよう、生まれてこの方農具なんて持った事すら無いのに、初めて持った農具が農具なのかすら分からないとかどんだけ無理ゲーだよ? そもそも先端の刃の向きが合ってるのかさえも不明だ。
「ぬああああああああ考えても無駄だしやっちゃうぜええええええええ!!!!」
空気の塊みたいな農具を大上段に振りかぶる。
「お、おいシシバ、向きが───」
「うらああああああああああああ!!!!!」
たけしさんが何か言い掛けてたけど気にしない!! こういう時は勢いが大事なのじゃああああああ!!!!
手の中の何かを全力で地面へと叩き込むッ!!
恐らく先端が地面と触れたであろう瞬間、時間が止まったみたいな感覚が辺りを包んだ。
(次頁/34-2へ続く)
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