知識0から創る異世界辞典(ストラペディア)~チャラ駄神を添えて~

degirock/でじろっく

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メガネスーツ女子と死後?の世界

頁33:気候とは 2

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 ◇◆◇◆◇◆




「に、苦手だったら苦手って言ってくれてもよかったのよ?」
「す、すいません…見栄みえ張ってしまいまして…。皆さんが良くして下さっているのに何もしない訳には!って思いまして…」
「やだよもうこの子ったら」

 よしこさんがカラカラと笑った。しかし他の人達のドン引きの視線は痛かった。もう大人しくしてようそうしよう…。
 ドロドロになった服は時間が経てば恐らくは元通りに再生されるだろうけれど、それを見られたらどう説明すればいいのか分からないのでとりあえず着替えた。
 【力】が制限された状態で箱ティッシュ(しっとり触感)の召喚みたいなのが出来るのか?と思ったけれど、そこは【対象を害する能力はことごとく封印】の制限対象外だったのか問題は無かったみたいだ。いずれ制限される可能性もあるけれど。
 なるべく村の人達の服装に合わせる様なデザインが良いかと思い私が選んだのは、リネン素材で無地の黄緑色Tシャツにデニム生地で茶色のサルエルアラジンパンツ、そしてなるべくデザイン性の薄いサンダル。靴下は履いていない。ついでに簡単なエプロンも一応。
 衣服が体から離れた状態は『再生』の基準ではないらしいのは助かった。この先スーツのままでは困るシーンもあるかもしれないし。

「その…やはり何もしない訳にはいかないので、私でも出来そうな事でお手伝いさせて頂けませんか?」
「そ、そうねぇ…」

 よしこさんの首筋に伝わる汗を見逃さなかった。つらい。

「あ、それなら、お墓を飾る『  』を集めてきてもらえる? 村の中だけでも沢山咲いていると思うから」

 咲いている、ということは『花』だろうか。
 まあ料理は触らせてもらえませんよね。分かります。つらい。

「それなら私でも大丈夫ですね。お任せ下さい」

 自分で言ってて悲しくなった。つらい。

「組み合わせはミサキさんのセンスで好きにしちゃっていいから。よろしくねぇ」
「ではちょっと行ってきます!」

 ここで汚名を返上せねば。
 意気揚々いきようようと私はその場を後にした。





 ◇◆◇◆◇◆





 よく見ると村の中には色とりどりの『花』が咲いていた。私は追加で軍手と剪定鋏せんていばさみを召喚してそれらの花をせっせとみ。…そう言えば今着ている服もそうだが、召喚した物については辞典未登録でも普通に認識出来る。この差は何だろうか…?
 当然ながらどの『花』も名前がまだついていないのでそれら一つ一つの姿を正しく認識する事は出来ないが、ぼやっとした色や形は何となくだが予想はつく。
 摘みながら詳しくない植物の知識の中のいずれかをつい脊椎反射せきついはんしゃで当てめてしまう。多分これも【提案】として送られている事だろう。
 平行世界の地球と言っても恐らくギアナ高地みたいに独立した生態系になっているのだろうと思っていたけれど、意外に知っている形の物が多い様に思えた。
 青く小さな星の花びらはネモフィラ…開いた翼みたいなのはナデシコ…沢山の花弁が集まっているのはアジサイ…大きい星型はキキョウ…あ、この真紅の御座みざはきっと曼珠沙華まんじゅしゃげだ。そして小さく集まって咲く紫色はクロッカス…この特徴的なラッパ型はスイセン………あれ?
 詳しくは無いと言え、流石さすがに異変に気付く。

「…これ、だっけ…?」

 必ずしも元の地球と同じではないとは言え、もしもこの花達の持つ性質が元の地球と限りなく近いとしたならば…

「ちょっと待って、今って何月…?」

 周囲に人がいないのを素早く確認すると【本】を召喚してページを開く。確かこの星も神々廻ししばさんによって一年が12ヶ月365日で設定されていたはずだ。

一月いちがつ…!? 世界地図表示!」

 ページが勝手にめくれ、メルカトル図法の世界地図が表示されたページに切り替わる。
 『たいりく大陸』の位置は…北半球のやや赤道寄り。分かりやすく言えば日本に近い経度緯度だ。どの季節から一月いちがつが始まっているのか分からないが、疑問を確認する術はある。

「えっと…世界の大まかな気温表示って出来ます?」

 本に向かって丁寧語で話しかける姿はさぞかし奇異きいに見える事だろう。すると開かれた地図のページ上にシステムメッセージが。

《 『気温』という概念が定着していません。》

 そりゃそうか。気温という物は元の地球で1850年頃から現在の形式で正式に観測され始めたデータの事だったはずだ。この星には全く関係無い。

《 元の地球の概念を一時的に当て嵌める事が出来ます。実行しますか? 》

 え?
 まさかのメッセージに目を疑う。ああ、、私。

「お願いします」

《 実行中。》

 そして地図上の至る場所に浮かび上がる気温を表す数字。

「やっぱり…!」

 標高の高い土地や砂漠に見える土地、極点などの特徴的な土地以外の気温が判を押したかの様にだった。北半球も南半球も赤道付近も。
 この星には、。いや、まだ四季という概念が無いと言うべきか。
 そう思うと唯一気温の差が付けられている地域も『そういう役割の土地だから』という雑な設定にも見える。
 がまた一つ増えた。

「(私達のミッション2…、手順を誤れば……!)」

 に、神々廻ししばさんからの【承諾しょうだく】はまだされていなかった。


 その時、村の外れから爆発の様な音と、一瞬遅れた振動が辺りを揺るがした。








   (次頁/34-1へ続く)








        
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