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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁27:最初の結末とは 1
しおりを挟む「…ハレ…?」
何が起きたのか理解が追い付いていない彼。激突に押し勝った飛ぶ眼は彼の背後の壁に突っ込まない様に角度を調整しながら旋回すると、再び空間の中央付近まで戻って行く。
「神々廻さん!!!」
彼の元に駆け寄る。
「…なんで…? アレ…?」
そして、視線を自分の右の腕に落とした。───衝撃によりズタズタに裂けた肉、あり得ない方向に曲がった腕、折れた骨が皮膚から突き破って露出した手指。脱臼しているのかもしれない腕は肩口の辺りからぶら下がり、普段の腕の長さよりも少し伸びて見えた。
「あ…? うあ……あぎゃあああああああああああああ!!!!」
思考が追い付き同時に痛みが襲ってきたのだろう、凄まじい絶叫を上げる彼。過度の痛みによるショック症状も引き起こしているかもしれない。しかしまだ現状は戦闘中だ。介抱に回る事は出来ない。この怪我の様子では再生までにどれ位の時間を要するか想像もつかない。
どうする…!?
どうするも何も、相手を全滅させない限りどうにも出来ないだろ!
ガクガクと痙攣する彼の横っ面をキツめに引っ叩く。後で謝ろう。
「あぐァ…! あ…? み、 観沙稀ちゃん……オレ…ごめ…」
「全部終わってからにしましょう! 痛いかもしれないけれど下がってて!」
返事を待たずに彼の前に立ち、残る回転型に構えを取る。
やはりこれは『試験』だった。単純に飛んで来る攻撃を見切って反撃するという『基本』を道中で学び、そして威力を増した攻撃をする個体に対してどう対処するかの『応用』。まだ体術で撃退出来るだけ難易度的には高くないのかもしれない。
「ッラァ!!」
咆哮と共に右の足刀を叩き込む。鋭い衝撃により軌道をずらされた砲弾が真下の土を派手に弾き飛ばしつつ地面に埋まり、そのまま生命活動を止めた。
「…痛ッ…!」
まずい、二撃で早くも足に来た。緩やかではあるものの再生されているので痛みが引く感覚はあるが、このペースでは先に体の方がダメになるだろう。痛めた足を軸にするのは頼りないが、蹴り足をスイッチさせて衝撃を分散させるしかない。
二匹連続で突っ込んで来る回転体。溜め無しに二匹目は倒せない、ならば一匹目を倒して二匹目は躱す!
「疾ッ!!」
足を入れ替え姿勢をスイッチ、左の前蹴りで一匹目を押し返し、衝突の際のインパクトを利用してバックステップの要領で二匹目を回避する。
───心算だった。
「ぁぐ…!」
入れ替えて軸足にした右足に想定外の激痛が走る。もしかしたら骨にヒビが入っていたのかもしれない。
一匹目は撃退出来たが…二匹目は…!
迫り来る衝撃に不覚にも目を閉じてしまった。
「……!」
…あれ。
覚悟していた衝撃はタイミングを過ぎても訪れず、代わりに響いたのは───
「ぅオウらぁ!!!」
『彼』の叫びと、真横から蹴られて軌道が狂い、壁に激突して絶命した飛ぶ眼の姿だった。
「成程、重心を意識した蹴りなら何とかなるみたいだな」
「シュウさん!? 『彼』は!?」
「引っ込ませた。邪魔だ」
「邪魔って…」
だからと言って怪我が完治した訳ではない。シュウさんに入れ替わってもその体は相変わらず大量の脂汗を吹き出し続け、右腕は力無くぶら下がっている。そもそも使い物にならないどころか痛みという妨害を絶え間なく送り続けてくる腕を抱えてまともな蹴りが繰り出せる訳が無い。
「無理しないで下さい!」
「何言ってる? あんた、今死んだぞ」
「う…」
確かに、助けてもらわなければ死にこそはしないとは思うが重篤なダメージを受けていただろう。私も行動不能になればそれは即ち全滅を意味する。
「…助けて頂きありがとうございました」
「お互い様だ」
(次頁/27-2へ続く)
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