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メガネスーツ女子と未知との遭遇
頁26:初めてのボス戦とは 2
しおりを挟む「わあ……」
モコモコと土の中から現れたのは、最早お馴染みとなった飛ぶ眼。飛行種の癖に土中から現れるなんてかなり無理している。羽が明らかに邪魔そうだった。
「鳴き声と言い、あいつらどんだけ自分に無理重ねてるんだろうネ…」
「………」
丸い体を必死にくねらせて土から出ようとしている。短い脚のせいでうまくバランスが取れないのか、よちよち歩いては時々躓いてコロンと転がっている個体もいた。
「実は今がチャンスなんじゃね…?」
神々廻さんがじりっと前進する。
「…ん? ねえ、チョット…」
「……癒し動画録りたい……」
可愛いが過ぎるでしょう! 例え倒さなきゃならないとしても!!!
「ちょ!! バっ!? こんな時に何言っちゃってるのよぉぉぉぉぉ!!!??」
その絶叫を合図としたかの様に一斉に羽ばたく飛ぶ眼達。ああもう!!
「大きい声出すからですよ!!」
「オレのせいなの!?」
「他に誰がいるんですか!」
「テラ理不尽!!!」
近い位置にいた数匹が突撃して来る。相変わらず同時攻撃という概念が無いみたいだが、それ以上に数が多すぎる。目視で確認出来る数だけでも10どころか20以上いるのではないだろうか。
「落ち着いて確実に対処していきましょう」
「なんかナットクいかないけどイエス・みさ!!」
馴れ馴れしいです。
順序良く飛来するボールを次々と叩き落とす。周辺に次々と転がっていくヴィクティムの亡骸。チクリチクリと胸が痛む。
「へへっ、なんだただ数が多いだけジャン! 落ち着いてよく見ればこんなのもう楽勝ォ!」
む、悪い癖が出始めてるな…。けれど確かに気になる。あまりにも簡単すぎないだろうか?
このダンジョンが天然の洞窟ではなく『本により創られた紛い物』であるという事は、この中に据え置かれている物全てが意図して配置されている可能性がある。宝箱についてもシュウさんが言っていた様に。
ならば敵対生物もそうなのでは?
何種類か新種に遭遇するかと思ったけれど結局最奥に至るまで飛ぶ眼だけだった。彼らの行動パターンなら数回戦えば攻略法は見えてくるだろう。それがこの星の戦闘職ならば尚更。まるで練習みたいだ。
これがもし本当に初級者の為の訓練を意図したダンジョンであった場合、ボスというのは『試験』なのでは───
「試験…?」
もう一匹を弾き飛ばす。数は半数ほどになっただろうか。このペースであれば難なく勝利出来るだろう。しかし───
「ゼェ…ゼェ…、あ、あと、半分くらい…?」
まずい、神々廻さんの体力が落ちている。精神的な緊張の連続からスタミナ消費が多くなっているのかもしれない。
「無理しないで私の後ろに!」
「チョー…余裕…っス♪」
汗だくの顔で笑顔のサムズアップ。それは彼なりの痩せ我慢だったのだろう。
しかし我々の状態など当然の事ながらお構いなしに再び飛来する飛ぶ眼。私目掛けて一匹、そして間を置いて神々廻さん目掛けて別の一匹。
「…!?」
何か違う。姿がブレて大きく見え───
「(いけないっ!!)」
突きの姿勢から咄嗟に重心を移動し、右足の裏に全体重を乗せ押し返すイメージで渾身の蹴りを叩き込む。足から伝わる重い衝撃。何とか押し負ける事無く弾き飛ばせたが、力負けしていたら恐らくは足がねじ折れていたかもしれない。
そう、姿がブレて見えた気がしたのは高速で回転していた故の残像だったのだ。明らかに攻撃のパターンが違う! まずい!!
「神々廻さん!!!」
「いっけぇぇぇぇ!!!!」
振り向いた瞬間目に映ったのは、高速で回転する飛ぶ眼に対し彼が同じ様に拳を突き出す瞬間だった。
(次頁/27-1へ続く)
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