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記憶の断片
【アイエフ01】少女、異世界転移する
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~初めに~
これから忙しくなるので投稿頻度が7分の1になるかもしれねぇのが怖いであります!こずえです。
そして、お気に入り数50、ありがとうございます!
読者の皆様のおかげで今日も生きていけますぜ。
そんなわけで、テンション爆上がりなう!
な・の・で!
作っちゃいました。
異世界から異世界転移するIFの物語。
あれ?これって、一周まわって現実世界じゃね?って感じの発想でどーんとアイエフでございmuscle!力こそパワー!
いえー!ドンドンぱちぱち!(盛り上げヘタクソか!)
そんなわけで今回は番外編です。
では、私からはこれで…
脳みそぶっ壊れるまで楽しんでいってくれよな!
では、番外編本編へGO!
…番外編本編ってなんかややこしいな?
「ふわぁ…」
少女が大きな欠伸をして身体を伸ばす。
「ここに来て2日目だけど、特に異変はなし…か…」
少女の名はシェラ。
昨日、寝て起きたら、突然魔力が無い世界にいたのだ。
「う~ん…よくわかんないけど、機械文明っぽい感じはするよね。皆、円盤のついた鉄の箱に乗って移動したりしてるし…」
私はこの世界の住民がそれを「自動車」と呼んでいた事を思い出す。
「まあ、なんにせよ。ここには私の知らないものしかないね。」
この世界の住民は皆、黒髪で黒い瞳の黄色人種だ。
私たちの世界ではとても珍しい存在だけど、ここにはそんな珍しい存在がわんさといるので、もはや珍しいなんて思うこともなかった。
そんな事よりも…
「私の緑の髪と青い目は目立つわね…」
私は魔法を使おうと試みる。
「…魔力自体は私の魔力を使えるけど、この世界では何が起こるかわからないから、あまり使わない方が良いわね。」
そして、服装を見る。
周囲の住民の服装より華美な帽子、服はエールからもらった制服と呼ばれる服装なので大丈夫そう。
「う~ん…こすぷれ?なる文化に便乗させてもらおうかな。あ、でも、それだとキャラ?が必要だよね…」
私はどこかで見たツインテールの歌姫の事を思い出す。
「あの子、なんて名前の子なんだろ…01?って腕に書いてたね。とりあえず、ゼロイチちゃんって事にしよう。」
読者の皆はだいたい察しただろう。
そう、あの伝説のVOCALOIDの事である。
当然だが、異世界にそんなものは無いわけで…
シェラにとってはよくわからないものだ。
「うんうん。あの01の子と同じような見た目になったわね。」
私はその完成度が高過ぎてもはやそのものになってしまっている事には全く気がつかないまま周囲を散策する。
「ヒソヒソ…(ねぇねぇ…あの子って…)」
「ヒソソヒソ…(めっちゃMIKUちゃんじゃん!)」
周囲の住民のそんな声が聞こえる。
(あの01の子の事かな?有名人みたいだね。高名な貴族だったりするのかな?)
「カシャッ!」
そんな音が背後から聞こえた。
私はその人の方を見る。
「デュフフ…これはいいですな…」
女の子の絵が書かれた服を着た太った男性がニヤニヤしながら、謎の光る板を見ていた。
私はその男性の目の前に移動して言う。
「ねぇ、君!」
「うわぁぁ!?ごめんなさい!」
男の人はすぐさま土下座して謝る。
「えぇ?!ちょっと、顔上げてって!聞きたい事があっただけだから!ね?」
私たちのやり取りに周囲の住民たちの目線が集まる。
「ヒソヒソヒソ…(あのブタ、土下座してるけど、何があったん?)」
「ヒソヒソ…(なんか盗撮がバレて詰められてるみたいよ)」
「ヒソヒソソ…(じゃあ、通報しとくか)」
私は「通報」の言葉を聞いてロクな事にならないと感じて、男性を急いで立ち上がらせて、その場から離れる。
人気のない路地裏まで逃げたところで私は改めて男性に言う。
「ねぇ!」
「ヒィッ!?な、なんでござるか?」
男性はビクビクしながら言う。
「まだ、なんにもしてないのに、そんなに怯えられると傷つくんだけど…」
「ご、ごめんなさい!盗撮した画像は消しますから、どうか警察だけは…」
「盗撮?」
そう言えば、さっきもそんな事を話してる人が居たな…
「う~ん…本来の聞きたい事とは違うけど、この世界の言語を知るいい機会かも。」
私がそんな事を呟いて見ると男の人は「ビクッ!」と身体を震わせながら不安そうな顔をしていた。
「とりあえず、君の名前教えてよ。」
「へ、へいっ!拙者…いや、僕はま、松田…け、健介でございます!」
「そう…マツダ…ね…」
私は本当の名を名乗るか迷っていた。
(まあ、ここで嘘を言う必要は無いし、大丈夫かな?)
私は少し深呼吸をする。
「私はシェラ・アルフェルンって言うの。よろしくね。」
「…は…え?あ、よろしくっす。」
マツダは訳が分からないと言う表情で私を見ていた。
「とりあえず、いろいろ聞きたい事があるんだけど、その前にマツダさんが聞きたい事ってあるかな?」
私がそう言うとマツダは「デュフ」とか言いながら、目を逸らして言う。
「そ、その…アルフェルン殿は外国人なのですかな?」
私はマツダの「外国人」と言う言葉によって、この世界にも国がある事を理解する。
「う~ん…多分そう…なるのかな?」
「多分…ですか?」
マツダは変なものを見たと言う様な表情で言う。
シェテラエンデの時に見慣れるほどにされてきた顔なので、私にとってはどうでも良かったが…
「そうね…信じてもらえるかわからないけど、私は異世界転移ってやつをやったのだと思うの。」
マツダは驚いた様子で目を見開いていた。
「ま、信じられないよね。私が逆の立場なら信じれないし…」
そう言って、私がその場を去ろうとすると腕を掴まれる。
「痛いって!」
「ご、ごめんっ!」
マツダは手を離すと言う。
「拙者…じゃなくて、僕はアルフェルン殿の言う事を信じるであります!」
「え?信じてくれるの?」
私がそう言ってマツダの目を見るとマツダは真剣な眼差しで見ていた。
「…そう。嘘じゃないわよね?」
「当然であります!なにより、もしアルフェルン殿が異世界人でなかったとしても、こんな可愛い子を一人にするのは危険であります!誘拐でもされようものなら、大変な事になるのは間違いないでしょう!」
マツダは凄く熱の篭った言い方をする。
「そ、そう…」
シェラはそう言うとヘナヘナとその場に座り込む。
「あ、アルフェルン殿?!」
マツダが心配そうに言う。
「あはは…安心したら、腰が抜けちゃったみたい…良かったら、君の家で休ませてほしいのだけれど…」
私がそう言うとマツダは慌てた様子で言う。
「せ、拙者の家でござるか?!そ、その…拙者の家はかなりアレと言いますか…あの…」
「…ダメかしら?」
シェラの潤んだ瞳がマツダの心を揺さぶる。
「だ、大丈夫でござるが…その…部屋が…女の子に見せるには…」
私はなんとなくマツダの服装でマツダの趣味はわかったつもりだ。
だが、私から言わせてみるとマツダは普通のヒトだ。
…ネイアみたいなのも居たしね。
あの子もなかなかヤバい趣味の持ち主だったし、私も変なものばっか集めてたからね。
今さら、男の子が女の子を好きなだけで引いたりしないわ。
頭が痛いレベルの同性愛とか想像つかないっしょ?
私はマツダに言う。
「私は大丈夫よ。私にも人に言えないような変な趣味があったからね。」
嘘は言っていない。
アンデットの不死の秘密を研究する為にアンデット収集してたり、ヴァンパイアの出すコウモリと普通のコウモリ型のモンスターの違いを研究するためにヴァンパイアを収集したり、単純に面白い形のモンスターを趣味で捕獲して飼育してたりしたからね。
マツダはそんな私の様子に押されたのか諦めた様に目を細めて言う。
「じゃあ、拙者についてくるでござる。」
マツダがそう言って光る板操作しながら、家までの道を帰ろうと歩き出した瞬間だった。
「あ、あれ…立てない…」
足に力が入らない。
魔力欠乏症に似た様な症状があったことを思い出すが、おそらく違うだろうと思っている。
理由としては、魔力を使っていない事や魔力の自然放出をしてないからだ。
魔力の無い世界で魔力を放出するのは、私にとってもこの世界にとっても良くないからね。
私は手を伸ばしてマツダに言う。
「申し訳ないのだけれど、背中に乗せてもらえるかしら?このままだと私、動けないし…」
「あ、その…せ、拙者、かなり汗かきなので…あの…」
マツダはオロオロと自身が大量に汗をかいていることを気にする。
「そんなの気にしないわよ。人間なんて、アンデットに比べたら臭いなんかしないも同然だもの…」
私は相変わらず動かない足を見ながら言う。
「そ、そこまで言うなら…その…臭くても文句はなしでござるよ?」
マツダはそう言うと「デュフデュフ」と鼻息を荒くしながらも私を背負って歩き出す。
(ほんとはあんまりしない方がいいけど…)
私はマツダにほんの少しだけ強化魔法を使う。
「デュフ…デュフ…あれ?なんか、拙者、思ったより歩けているような…」
マツダがそうして歩いていると人気の無い道で前から金髪のチャラそうな男たちが来て言う。
「おうおう!お前、良いもん連れてんじゃん!俺たちに寄越せよ。」
「な、なんでござるか?!」
「ギャハハ!なんでござるか?だってよ!聞いたかお前!」
「ふん。お前みたいな気持ち悪いオタクなんかじゃなくて、俺様みたいなイカした男にこそ、その子はお似合いだろ?ほら、さっさと渡せよ。」
「そ、それは出来ないでござる!」
「あん?オタクごときが俺様に逆らおうってんの?おもしれぇ!ぶん殴って奪い取ってやるよ!」
「た、例え、拙者がやられようともこの子の事は守ってみせるでござる!」
「ギャハハ!野郎ども、やっちまえ!」
私はマツダの背中でため息をついて言う。
「うるせぇ猿どもだ…ゴブリンの方がまだ賢い。」
「このクソアマァ!」
私はマツダに言う。
「マツダさん、今からあなたに魔法をかけるわ。出来れば逃げてほしいけど、あいつらは叩き潰しても問題ないわよ。」
「で、でも…」
「大丈夫。私を信じなさい。」
マツダは私の声を聞いて頷く。
「わ、わかったでござる。」
私はマツダに痺れを付与する。
そして、さらに強化魔法で動体視力と運動能力を上げる。
「死ねぇ!」
男の拳が迫る。
「遅いでござる!」
マツダが圧倒的な速さを見せて次々に男たちを倒していく。
「最後の一人でござる!」
「ぐわああああ!」
最後の一人の男が倒れる。
「はぁ…はぁ…や、やったでござるか?」
マツダが後ろを振り返ると動けなくなった男どもが折り重なるように倒れていた。
「ヒェッ…こ、これを拙者が…?」
私はマツダに言う。
「マツダさん、あなた強いのね。あなたみたいな人に出会えてほんとに良かったわ!」
「い、いやいや、拙者は別に…アルフェルン殿の魔法のおかげでござるよ。拙者1人だと絶対にボコボコにされていたでござる。」
マツダは首を振って否定するが、それでも急に能力が上がったにも関わらず、それに対応したのは見事だと言うべきだ思う。
こちらの世界でも鍛錬を積んでようやく強化魔法を自分のものに出来る場合の方がほとんどなのだ。
生まれる世界が違えば、間違いなく彼は大英雄になったと私は思う。
「それはそうね。お世辞にもあなたにそこまでの俊敏さや力強さは無いと思うわ。それでも、あなたの適応力の高さは素晴らしいものよ。そして、誰一人殺す事なく、気絶させたわ。それも私を背負ったままね。それだけであなたは凄い人よ。私にここまで言わせたのなんて、あなたくらいなものよ。だから、誇りに思いなさいな。」
「うっ…そこまで言われると…受け入れるしかないでござる。」
「ふふっ…素直でよろしい。」
私はマツダに指示をして、男たちの山をさらに人目のつかない路地裏に放り投げておく。
「では、帰りましょうか。」
私は男たちの記憶を消去する。
…
「ふわぁ…」
少女は目を覚ますとベットの上に寝かされていた。
壁には裸の女の子のポスターとかタペストリーがたくさん飾られており、至る所に様々な人種の同じような人形がたくさんあった。
中にはゼロイチちゃんの人形もあり、いろんな種類の人形がたくさんあった。
「う~ん…魔力を使い過ぎたのかしら…」
私は痛む頭を抑えながら立ち上がる。
ここまでの事は覚えている。
おそらく、ここはマツダの家なのだろう。
私はマツダが帰ってくるのを待つ間に部屋の中のゴミを片付けつつ、タペストリーとか人形を眺める。
「しかし、凄いわね…細部まで拘りを感じる質感だわ。どこから見ても違和感の無い出来栄えね…作ったやつは相当変態なのには間違いないけど、技術力も素晴らしいわね。このタペストリーも線をきちんと捉えられていて凄いと思うわ。どこをどう描けば良いのかわかってる見たいね。強いて言うなら、ちょっとラインを強調し過ぎな気もするけど、それはそれで何を重視しているかがよくわかって面白いわ。こっちの裸の獣人の女の子なんかも頬が赤すぎること以外はかなり完成された感じね。身体の線をよく見てる感じがするわ。こっちはどちらかと言えば、色の塗り方を重視してるように見えるわね。とても面白いわ…」
私は前世の事を思い出す。
ネイアが私の事を好き過ぎて、こんな感じにたくさんの絵画を描きまくっていたのをよく覚えている。
初めて見た時は驚いて腰を抜かしたりしたものだが、次第に見慣れてきて、アドバイスを出したりしたなぁ…
ネイアが「ここはこう描いた方が抜けるんですっ!」とか真顔で言い始めた時には、いよいよヤバいもんを見たと言う気にもなったものだ。
まあ、それさえも慣れてしまえば、ただの日常にしかならないわけで…
そんな経験がここに来て役に立つとは一切思わなかったけど、私はネイアが居たおかげで、この部屋を受け入れられたのだと思うと複雑な気持ちになる。
そうしているうちに「ガチャ」と音が聞こえる。
私はマツダが帰ってきたと思って部屋から出る。
「マツダさん、おかえりなさい!」
「おわっ?!あ、アルフェルン殿?!」
マツダは出会った時とは髪型が変わっていた。
出会った時はボサボサの髪が手入れもされずに伸びっぱなしで前髪も耳にかけていなければ、目が見えるのかわからないほどだったけど、今は短く切って清潔感のある髪型になっていた。
「マツダさん、とてもかっこよくなりましたね!」
私がそう褒めるとマツダは「デュフフ」と笑いながら言う。
「これからはアルフェルン殿がいますからな。拙者も少しは身なりを整えた方が良いと思いましてな。」
マツダの服装は変わっていなかったが、手に持った袋の中にはたくさんの女性用と思われる服の上にちょこんと男性用っぽい服が乗せられていた。
「その服は…」
私が言うとマツダが少し慌てた様子で言う。
「こ、これは妹に頼んで買ってもらったのですな。アルフェルン殿の事を話したら、それはそれはもう大喜びで家を飛び出しましてな。」
「そうなんだ~!マツダさんの妹さんにもありがとうって言っておかないとね!」
「そ、その件でござるが…」
マツダが言おうとした瞬間女性の声が聞こえる。
「アニキ、速く荷物を入れろよ~!アタイらが入れないじゃないか!」
「今のは…」
「拙者の妹でござる。」
マツダは外を見て言う。
「アルフェルン殿がお出迎えしてくれたんだよ。だから、ちょっと待てよ。」
「アルフェルンちゃん、そこにいるの!?」
マツダの後ろから女性がマツダを押し退けて入ろうとする。
「アニキ、邪魔!」
「わぁ…アルフェルンちゃん、ほんとにMIKUちゃんみたいでかわいい~!」
…
「アルフェルンちゃんは可愛いなぁ~…」
片付けられた部屋の中で私はマツダの妹の友達の「ニッタ」の膝の上に乗せられていた。
ニッタはとても嬉しそうに言うとマツダの妹…「セナ」が言う。
「瑠衣もサボってないで手伝いなさいよ。」
「え~…瑠衣にはアルフェルンちゃんのお世話をするって言う役目があるんだよ~!ね~?アルフェルンちゃん!」
「え、あ、はい…そうですね?」
私は急に話を振られてびっくりする。
(正直、かなり緊張して、胃に穴が空きそう…だって、ネイアよりも勢いが良いんだもん…初対面でここまで来られると緊張もするでしょ!)
セナがニッタに言う。
「アタイが一人でやって炭を量産したって文句言うなよ?」
「わぁ…それは困る~!ごめんね~…アルフェルンちゃん、瀬奈っちが料理ヘッタクソだから、瑠衣ちゃんがお手伝いに行ってくるね~」
ニッタはそう言うとセナの元に行く。
扉を閉める間際にセナにお尻を蹴られていたのを見た。
少ししてマツダが戻ってくる。
「アルフェルン殿、ただいまでござる。」
「マツダさん、おかえりなさい!」
私がマツダに微笑んでいると開いた扉からニッタが頬を膨らませて言う。
「あ~!健介さんがロリコンしてる~!狡い~!」
「いやいや、拙者はただいまって言っただけでござるよ?!」
「はぁ?ついにあのバカ、アタイたちの目の前で女の子に手を出したの?」
セナがブチ切れMAXって感じの表情で扉からマツダを睨む。
「ご、誤解だ!拙者はただいまの挨拶をしただけであって…」
そんなやり取りを見て、私は思わずお腹を抱えて笑う。
「ブッ…アハハハ!アハハハハハ!なんですか、このやり取りは!ほんとに…愉快な会話をなされますね…はぁ~…お腹痛い…」
そんな私の様子を見て3人も笑う。
…
ご飯を食べた後、セナが言う。
「なぁ、アルフェルンはこれからどうするつもりなんだ?」
「どうする…とは?」
私が聞き返すとセナが言う。
「正直、ここでアニキと暮らしてもアニキは男だし、いつ盛るかわからねぇぞ?」
「ちょっと!拙者は確かにロリコンだけど、さすがに同意無しの行為はしないし、そもそも三次元ロリに手を出すのは犯罪だよ!」
「おいおい。アタイがアニキの事をわかってないとでも?アニキがこんな可愛い子を放置プレイ出来るなんて思わねぇが?」
マツダとセナが喧嘩し始める。
ニッタが「バァン!」と机を叩くまで、それは続いた。
「お2人とも、いい加減にしてください。アルフェルンちゃんが困ってるでしょう!それに瀬奈っちも健介さんも女の子がいる事を忘れてませんか?」
ニッタのホンワカとした雰囲気からは一転して、今のニッタからは鬼神のようなオーラさえ感じる。
さすがにニッタのこのオーラには誰も口出し出来ないだろう。
「さてと…」
ニッタは2人が黙ったのを見て私に言う。
「アルフェルンちゃんはどうしたいか決まってる~?」
ニッタはホンワカとした雰囲気を出して言う。
「私は…」
私は深呼吸する。
「私は3人と一緒に暮らしたいです。せっかく出会えたんですもの…いつか、別れの日が来るとしても出来るだけ、こうして一緒に居たいです。マツダさんの好きなアニメやセナさんの好きなファッションやニッタさんの好きな料理とか…全部…この世界は私の知らないもので溢れています。私はそんな世界を知りたいです。私の知的好奇心が疼いて溢れてしまいます。だから、私は3人で暮らしたいです。いろんなことを知って、経験して、記憶して、楽しんで…笑って…生きたいです。」
私がそう言うと3人は顔を見合わせる。
そして、ニッタが言う。
「じゃあ、シェアハウスとかやったりする~?瑠衣のパパに頼んだら、どっかあるかもしれないし~…」
セナが私を見ながら言う。
「それは良いが、そうなるとアルフェルンの事を瑠衣のお父さんになんて言うかだよね。異世界から来ました~なんて言えるはずないもん。」
「そ、そうだよね~…」
ニッタがしょんぼりとした様子で言う。
私はこの世界の事には全くの無知なので、とりあえず黙って聞いている。
「となれば、拙者たちでできる事をやるべき…ですな。」
マツダがそう言うとセナが言う。
「できる事ってなんだよ?まさかとは思うけど、ここで4人で暮らそうだなんて言わねぇよな?!」
「それは無いでござるな。単純に住む部屋が無いのと、狭いからでござる。悲しきかな。」
「そうだな。さすがのアニキもそれは理解してるみたいで良かったぜ。」
「それよりも今後の生活費について相談した方が良いでござるな。」
「計算はちょっと苦手です~…」
3人ともそこまで頭は良くない様子だった。
…すっごい失礼だけど。
「なら、私が計算しましょうか?」
私がそう言うと3人が顔を見合わせてから私を見て言う。
「お願いします~」
「お願いするぜ!」
「お願いするでござる!」
私は前世の魔術の研究でよく式を多用していたから、こういう事は大得意なのだ。
…
そして、3人の収入と支出を計算する。
「それじゃ、収入が3人で45万円くらい、支出が25万円ほど、内訳は食費5万円、光熱費6万円、ガス代3万円、家賃が11万円…そして、急な出費に備えた貯金が10万円、残りは自由って感じで良かったかしら?」
私がそう言うとニッタが言う。
「それと月の携帯代だね~。瑠衣ちゃんはだいたい2万くらいかな?」
セナが驚いた顔をしながら言う。
「瑠衣、お前高くねぇか?!アタイでも、1万2千ほどだぜ?」
「瀬奈ちゃんは1台持ちだからね~。瑠衣ちゃんは2台で、1台は仕事用の格安SIM使ってるから~」
「それなら、だいたいそれくらいか…」
マツダが言う。
「拙者はスマホに関しては2千円くらいでござるな。うちに居れば、光を引いてるので使わないでござるからな。それに拙者はパソコンの方が使うでござる。確か、光は5千円くらいだったと思うでござる。」
そして、私が紙に書きながら、ニッタにもらったスマホで計算する。
「だいたい、皆さん、支払い用のお金は4万円ほどを用意出来れば良い感じでしょうか?もちろん、急な出費でこのお金以上のお金が必要な場合には貯金から支払う事も出来ますが、これはあくまでも緊急時用のお金ですので、使い過ぎにはご注意ください…ですね。」
「アルフェルンちゃん、せっかく瑠衣ちゃんがスマホあげたのに紙も使っちゃうなんて…可愛い~…!」
ニッタはうっとりとした表情で私を見る。
「絶対、今言うべき事じゃねぇだろっ!」
セナがビシッとツッコミを入れる。
「それじゃ、後は拙者に任せるでござる。住む場所について要望があれば、今のうちに書き出しておくでござるよ。」
マツダが言うと2人が相談しながら言う。
「まずは風呂とトイレは別々がいいな。欲を言えば、風呂とトイレが2つあるといいが…」
セナが言うとニッタも言う。
「そうですね~…私は部屋が複数ある方が良いかな?と思います~。一応、健介さん以外は女の子ですし、最低でも二部屋あればいいと思いますよ~」
マツダは難しい顔をしながら言う。
「なかなかに難しい要望を言うでござるな…それだと2、3万ほど家賃が上がりそうでござる。拙者も光が引ける場所である方が有難いでござるしなぁ…」
私は3人に言う。
「マツダさん、ご自身のパソコンとスマホの利用用途とパソコンで出来ることとスマホで出来ることのリストアップをお願いします。そして、ニッタさんとセナさんはお二人のスマホの主な利用用途のリストアップをお願いします。それで必要なものをまとめましょう。」
そうして、私を含めた4人がグループになっているルァイン?って言うアプリにそれぞれのものが送られてくる。
「ふむふむ…大まかに分けますと、セナさんは通話をよくご利用されていて、ニッタさんは通販サイトがメインでゲームもかなりやりこんでいらっしゃると…マツダさんはスマホは通話しか利用してませんが、PC?…ああ、パソコンの事ですか。パソコンでは、ブラウジングやゲームをやりこんでいるんですね。」
次にマツダがパソコンとスマホでできる事のリストアップをした表を見る。
「ふむふむ…スマホだけでは出来ない事としてはゲームが主になりそうですね。娯楽も必要なのはわかりますが、ここを削る事が出来るなら、少し余裕は出来ます…いや、この場合は総合してみるとあまり変わらないかもしれませんね…光回線とパソコンを無くすとなれば、それを補う為にスマホの支払いが増える事は明白です。ですが、工事の費用などを考えると初期費用としては、そこそこ大きな金額の確保が可能ですね。マツダさん、スマホの料金について料金表みたいなものがあれば、そちらも見せていただけますか?ニッタさんとセナさんも出来ればお願いします。」
そして、3人のスマホの料金表が届き、私が計算する。
「パソコンが無い場合、セナさんとマツダさんが家族割を適応した場合に__のプランで3千円くらい高くなる可能性がありますね。この場合ですと光熱費で比較した方が良いでしょう。マツダさんにお願いしていた光熱費の料金表を見るに月あたりが__円、ニッタさんに教えていただいた検索の結果では、これは5千円ほど安くなりますね。」
こうして、着々と計算が進む。
ニッタがそんな私の様子を見て呟くように言う。
「アルフェルンちゃん、瑠衣ちゃんたちより歳下のはずなのにすっごく頭が良くてしっかりしてますね~…そんなところも可愛いなぁ~…」
「瑠衣はそればっかだな。まあ、アタイもアルフェルンはしっかりしてて凄いなと思うけどさ。」
「あはは!瀬奈ちゃんは素直じゃないなぁ~。可愛いは正義なんですよ~!」
「あ~…はいはい。瑠衣の十八番芸だな。」
「まあっ!十八番芸だなんて失礼しちゃうわ~!」
「へいへい。言ってろ言ってろ。」
こうして、私たちの新しい新居探しが始まるのであった…
これから忙しくなるので投稿頻度が7分の1になるかもしれねぇのが怖いであります!こずえです。
そして、お気に入り数50、ありがとうございます!
読者の皆様のおかげで今日も生きていけますぜ。
そんなわけで、テンション爆上がりなう!
な・の・で!
作っちゃいました。
異世界から異世界転移するIFの物語。
あれ?これって、一周まわって現実世界じゃね?って感じの発想でどーんとアイエフでございmuscle!力こそパワー!
いえー!ドンドンぱちぱち!(盛り上げヘタクソか!)
そんなわけで今回は番外編です。
では、私からはこれで…
脳みそぶっ壊れるまで楽しんでいってくれよな!
では、番外編本編へGO!
…番外編本編ってなんかややこしいな?
「ふわぁ…」
少女が大きな欠伸をして身体を伸ばす。
「ここに来て2日目だけど、特に異変はなし…か…」
少女の名はシェラ。
昨日、寝て起きたら、突然魔力が無い世界にいたのだ。
「う~ん…よくわかんないけど、機械文明っぽい感じはするよね。皆、円盤のついた鉄の箱に乗って移動したりしてるし…」
私はこの世界の住民がそれを「自動車」と呼んでいた事を思い出す。
「まあ、なんにせよ。ここには私の知らないものしかないね。」
この世界の住民は皆、黒髪で黒い瞳の黄色人種だ。
私たちの世界ではとても珍しい存在だけど、ここにはそんな珍しい存在がわんさといるので、もはや珍しいなんて思うこともなかった。
そんな事よりも…
「私の緑の髪と青い目は目立つわね…」
私は魔法を使おうと試みる。
「…魔力自体は私の魔力を使えるけど、この世界では何が起こるかわからないから、あまり使わない方が良いわね。」
そして、服装を見る。
周囲の住民の服装より華美な帽子、服はエールからもらった制服と呼ばれる服装なので大丈夫そう。
「う~ん…こすぷれ?なる文化に便乗させてもらおうかな。あ、でも、それだとキャラ?が必要だよね…」
私はどこかで見たツインテールの歌姫の事を思い出す。
「あの子、なんて名前の子なんだろ…01?って腕に書いてたね。とりあえず、ゼロイチちゃんって事にしよう。」
読者の皆はだいたい察しただろう。
そう、あの伝説のVOCALOIDの事である。
当然だが、異世界にそんなものは無いわけで…
シェラにとってはよくわからないものだ。
「うんうん。あの01の子と同じような見た目になったわね。」
私はその完成度が高過ぎてもはやそのものになってしまっている事には全く気がつかないまま周囲を散策する。
「ヒソヒソ…(ねぇねぇ…あの子って…)」
「ヒソソヒソ…(めっちゃMIKUちゃんじゃん!)」
周囲の住民のそんな声が聞こえる。
(あの01の子の事かな?有名人みたいだね。高名な貴族だったりするのかな?)
「カシャッ!」
そんな音が背後から聞こえた。
私はその人の方を見る。
「デュフフ…これはいいですな…」
女の子の絵が書かれた服を着た太った男性がニヤニヤしながら、謎の光る板を見ていた。
私はその男性の目の前に移動して言う。
「ねぇ、君!」
「うわぁぁ!?ごめんなさい!」
男の人はすぐさま土下座して謝る。
「えぇ?!ちょっと、顔上げてって!聞きたい事があっただけだから!ね?」
私たちのやり取りに周囲の住民たちの目線が集まる。
「ヒソヒソヒソ…(あのブタ、土下座してるけど、何があったん?)」
「ヒソヒソ…(なんか盗撮がバレて詰められてるみたいよ)」
「ヒソヒソソ…(じゃあ、通報しとくか)」
私は「通報」の言葉を聞いてロクな事にならないと感じて、男性を急いで立ち上がらせて、その場から離れる。
人気のない路地裏まで逃げたところで私は改めて男性に言う。
「ねぇ!」
「ヒィッ!?な、なんでござるか?」
男性はビクビクしながら言う。
「まだ、なんにもしてないのに、そんなに怯えられると傷つくんだけど…」
「ご、ごめんなさい!盗撮した画像は消しますから、どうか警察だけは…」
「盗撮?」
そう言えば、さっきもそんな事を話してる人が居たな…
「う~ん…本来の聞きたい事とは違うけど、この世界の言語を知るいい機会かも。」
私がそんな事を呟いて見ると男の人は「ビクッ!」と身体を震わせながら不安そうな顔をしていた。
「とりあえず、君の名前教えてよ。」
「へ、へいっ!拙者…いや、僕はま、松田…け、健介でございます!」
「そう…マツダ…ね…」
私は本当の名を名乗るか迷っていた。
(まあ、ここで嘘を言う必要は無いし、大丈夫かな?)
私は少し深呼吸をする。
「私はシェラ・アルフェルンって言うの。よろしくね。」
「…は…え?あ、よろしくっす。」
マツダは訳が分からないと言う表情で私を見ていた。
「とりあえず、いろいろ聞きたい事があるんだけど、その前にマツダさんが聞きたい事ってあるかな?」
私がそう言うとマツダは「デュフ」とか言いながら、目を逸らして言う。
「そ、その…アルフェルン殿は外国人なのですかな?」
私はマツダの「外国人」と言う言葉によって、この世界にも国がある事を理解する。
「う~ん…多分そう…なるのかな?」
「多分…ですか?」
マツダは変なものを見たと言う様な表情で言う。
シェテラエンデの時に見慣れるほどにされてきた顔なので、私にとってはどうでも良かったが…
「そうね…信じてもらえるかわからないけど、私は異世界転移ってやつをやったのだと思うの。」
マツダは驚いた様子で目を見開いていた。
「ま、信じられないよね。私が逆の立場なら信じれないし…」
そう言って、私がその場を去ろうとすると腕を掴まれる。
「痛いって!」
「ご、ごめんっ!」
マツダは手を離すと言う。
「拙者…じゃなくて、僕はアルフェルン殿の言う事を信じるであります!」
「え?信じてくれるの?」
私がそう言ってマツダの目を見るとマツダは真剣な眼差しで見ていた。
「…そう。嘘じゃないわよね?」
「当然であります!なにより、もしアルフェルン殿が異世界人でなかったとしても、こんな可愛い子を一人にするのは危険であります!誘拐でもされようものなら、大変な事になるのは間違いないでしょう!」
マツダは凄く熱の篭った言い方をする。
「そ、そう…」
シェラはそう言うとヘナヘナとその場に座り込む。
「あ、アルフェルン殿?!」
マツダが心配そうに言う。
「あはは…安心したら、腰が抜けちゃったみたい…良かったら、君の家で休ませてほしいのだけれど…」
私がそう言うとマツダは慌てた様子で言う。
「せ、拙者の家でござるか?!そ、その…拙者の家はかなりアレと言いますか…あの…」
「…ダメかしら?」
シェラの潤んだ瞳がマツダの心を揺さぶる。
「だ、大丈夫でござるが…その…部屋が…女の子に見せるには…」
私はなんとなくマツダの服装でマツダの趣味はわかったつもりだ。
だが、私から言わせてみるとマツダは普通のヒトだ。
…ネイアみたいなのも居たしね。
あの子もなかなかヤバい趣味の持ち主だったし、私も変なものばっか集めてたからね。
今さら、男の子が女の子を好きなだけで引いたりしないわ。
頭が痛いレベルの同性愛とか想像つかないっしょ?
私はマツダに言う。
「私は大丈夫よ。私にも人に言えないような変な趣味があったからね。」
嘘は言っていない。
アンデットの不死の秘密を研究する為にアンデット収集してたり、ヴァンパイアの出すコウモリと普通のコウモリ型のモンスターの違いを研究するためにヴァンパイアを収集したり、単純に面白い形のモンスターを趣味で捕獲して飼育してたりしたからね。
マツダはそんな私の様子に押されたのか諦めた様に目を細めて言う。
「じゃあ、拙者についてくるでござる。」
マツダがそう言って光る板操作しながら、家までの道を帰ろうと歩き出した瞬間だった。
「あ、あれ…立てない…」
足に力が入らない。
魔力欠乏症に似た様な症状があったことを思い出すが、おそらく違うだろうと思っている。
理由としては、魔力を使っていない事や魔力の自然放出をしてないからだ。
魔力の無い世界で魔力を放出するのは、私にとってもこの世界にとっても良くないからね。
私は手を伸ばしてマツダに言う。
「申し訳ないのだけれど、背中に乗せてもらえるかしら?このままだと私、動けないし…」
「あ、その…せ、拙者、かなり汗かきなので…あの…」
マツダはオロオロと自身が大量に汗をかいていることを気にする。
「そんなの気にしないわよ。人間なんて、アンデットに比べたら臭いなんかしないも同然だもの…」
私は相変わらず動かない足を見ながら言う。
「そ、そこまで言うなら…その…臭くても文句はなしでござるよ?」
マツダはそう言うと「デュフデュフ」と鼻息を荒くしながらも私を背負って歩き出す。
(ほんとはあんまりしない方がいいけど…)
私はマツダにほんの少しだけ強化魔法を使う。
「デュフ…デュフ…あれ?なんか、拙者、思ったより歩けているような…」
マツダがそうして歩いていると人気の無い道で前から金髪のチャラそうな男たちが来て言う。
「おうおう!お前、良いもん連れてんじゃん!俺たちに寄越せよ。」
「な、なんでござるか?!」
「ギャハハ!なんでござるか?だってよ!聞いたかお前!」
「ふん。お前みたいな気持ち悪いオタクなんかじゃなくて、俺様みたいなイカした男にこそ、その子はお似合いだろ?ほら、さっさと渡せよ。」
「そ、それは出来ないでござる!」
「あん?オタクごときが俺様に逆らおうってんの?おもしれぇ!ぶん殴って奪い取ってやるよ!」
「た、例え、拙者がやられようともこの子の事は守ってみせるでござる!」
「ギャハハ!野郎ども、やっちまえ!」
私はマツダの背中でため息をついて言う。
「うるせぇ猿どもだ…ゴブリンの方がまだ賢い。」
「このクソアマァ!」
私はマツダに言う。
「マツダさん、今からあなたに魔法をかけるわ。出来れば逃げてほしいけど、あいつらは叩き潰しても問題ないわよ。」
「で、でも…」
「大丈夫。私を信じなさい。」
マツダは私の声を聞いて頷く。
「わ、わかったでござる。」
私はマツダに痺れを付与する。
そして、さらに強化魔法で動体視力と運動能力を上げる。
「死ねぇ!」
男の拳が迫る。
「遅いでござる!」
マツダが圧倒的な速さを見せて次々に男たちを倒していく。
「最後の一人でござる!」
「ぐわああああ!」
最後の一人の男が倒れる。
「はぁ…はぁ…や、やったでござるか?」
マツダが後ろを振り返ると動けなくなった男どもが折り重なるように倒れていた。
「ヒェッ…こ、これを拙者が…?」
私はマツダに言う。
「マツダさん、あなた強いのね。あなたみたいな人に出会えてほんとに良かったわ!」
「い、いやいや、拙者は別に…アルフェルン殿の魔法のおかげでござるよ。拙者1人だと絶対にボコボコにされていたでござる。」
マツダは首を振って否定するが、それでも急に能力が上がったにも関わらず、それに対応したのは見事だと言うべきだ思う。
こちらの世界でも鍛錬を積んでようやく強化魔法を自分のものに出来る場合の方がほとんどなのだ。
生まれる世界が違えば、間違いなく彼は大英雄になったと私は思う。
「それはそうね。お世辞にもあなたにそこまでの俊敏さや力強さは無いと思うわ。それでも、あなたの適応力の高さは素晴らしいものよ。そして、誰一人殺す事なく、気絶させたわ。それも私を背負ったままね。それだけであなたは凄い人よ。私にここまで言わせたのなんて、あなたくらいなものよ。だから、誇りに思いなさいな。」
「うっ…そこまで言われると…受け入れるしかないでござる。」
「ふふっ…素直でよろしい。」
私はマツダに指示をして、男たちの山をさらに人目のつかない路地裏に放り投げておく。
「では、帰りましょうか。」
私は男たちの記憶を消去する。
…
「ふわぁ…」
少女は目を覚ますとベットの上に寝かされていた。
壁には裸の女の子のポスターとかタペストリーがたくさん飾られており、至る所に様々な人種の同じような人形がたくさんあった。
中にはゼロイチちゃんの人形もあり、いろんな種類の人形がたくさんあった。
「う~ん…魔力を使い過ぎたのかしら…」
私は痛む頭を抑えながら立ち上がる。
ここまでの事は覚えている。
おそらく、ここはマツダの家なのだろう。
私はマツダが帰ってくるのを待つ間に部屋の中のゴミを片付けつつ、タペストリーとか人形を眺める。
「しかし、凄いわね…細部まで拘りを感じる質感だわ。どこから見ても違和感の無い出来栄えね…作ったやつは相当変態なのには間違いないけど、技術力も素晴らしいわね。このタペストリーも線をきちんと捉えられていて凄いと思うわ。どこをどう描けば良いのかわかってる見たいね。強いて言うなら、ちょっとラインを強調し過ぎな気もするけど、それはそれで何を重視しているかがよくわかって面白いわ。こっちの裸の獣人の女の子なんかも頬が赤すぎること以外はかなり完成された感じね。身体の線をよく見てる感じがするわ。こっちはどちらかと言えば、色の塗り方を重視してるように見えるわね。とても面白いわ…」
私は前世の事を思い出す。
ネイアが私の事を好き過ぎて、こんな感じにたくさんの絵画を描きまくっていたのをよく覚えている。
初めて見た時は驚いて腰を抜かしたりしたものだが、次第に見慣れてきて、アドバイスを出したりしたなぁ…
ネイアが「ここはこう描いた方が抜けるんですっ!」とか真顔で言い始めた時には、いよいよヤバいもんを見たと言う気にもなったものだ。
まあ、それさえも慣れてしまえば、ただの日常にしかならないわけで…
そんな経験がここに来て役に立つとは一切思わなかったけど、私はネイアが居たおかげで、この部屋を受け入れられたのだと思うと複雑な気持ちになる。
そうしているうちに「ガチャ」と音が聞こえる。
私はマツダが帰ってきたと思って部屋から出る。
「マツダさん、おかえりなさい!」
「おわっ?!あ、アルフェルン殿?!」
マツダは出会った時とは髪型が変わっていた。
出会った時はボサボサの髪が手入れもされずに伸びっぱなしで前髪も耳にかけていなければ、目が見えるのかわからないほどだったけど、今は短く切って清潔感のある髪型になっていた。
「マツダさん、とてもかっこよくなりましたね!」
私がそう褒めるとマツダは「デュフフ」と笑いながら言う。
「これからはアルフェルン殿がいますからな。拙者も少しは身なりを整えた方が良いと思いましてな。」
マツダの服装は変わっていなかったが、手に持った袋の中にはたくさんの女性用と思われる服の上にちょこんと男性用っぽい服が乗せられていた。
「その服は…」
私が言うとマツダが少し慌てた様子で言う。
「こ、これは妹に頼んで買ってもらったのですな。アルフェルン殿の事を話したら、それはそれはもう大喜びで家を飛び出しましてな。」
「そうなんだ~!マツダさんの妹さんにもありがとうって言っておかないとね!」
「そ、その件でござるが…」
マツダが言おうとした瞬間女性の声が聞こえる。
「アニキ、速く荷物を入れろよ~!アタイらが入れないじゃないか!」
「今のは…」
「拙者の妹でござる。」
マツダは外を見て言う。
「アルフェルン殿がお出迎えしてくれたんだよ。だから、ちょっと待てよ。」
「アルフェルンちゃん、そこにいるの!?」
マツダの後ろから女性がマツダを押し退けて入ろうとする。
「アニキ、邪魔!」
「わぁ…アルフェルンちゃん、ほんとにMIKUちゃんみたいでかわいい~!」
…
「アルフェルンちゃんは可愛いなぁ~…」
片付けられた部屋の中で私はマツダの妹の友達の「ニッタ」の膝の上に乗せられていた。
ニッタはとても嬉しそうに言うとマツダの妹…「セナ」が言う。
「瑠衣もサボってないで手伝いなさいよ。」
「え~…瑠衣にはアルフェルンちゃんのお世話をするって言う役目があるんだよ~!ね~?アルフェルンちゃん!」
「え、あ、はい…そうですね?」
私は急に話を振られてびっくりする。
(正直、かなり緊張して、胃に穴が空きそう…だって、ネイアよりも勢いが良いんだもん…初対面でここまで来られると緊張もするでしょ!)
セナがニッタに言う。
「アタイが一人でやって炭を量産したって文句言うなよ?」
「わぁ…それは困る~!ごめんね~…アルフェルンちゃん、瀬奈っちが料理ヘッタクソだから、瑠衣ちゃんがお手伝いに行ってくるね~」
ニッタはそう言うとセナの元に行く。
扉を閉める間際にセナにお尻を蹴られていたのを見た。
少ししてマツダが戻ってくる。
「アルフェルン殿、ただいまでござる。」
「マツダさん、おかえりなさい!」
私がマツダに微笑んでいると開いた扉からニッタが頬を膨らませて言う。
「あ~!健介さんがロリコンしてる~!狡い~!」
「いやいや、拙者はただいまって言っただけでござるよ?!」
「はぁ?ついにあのバカ、アタイたちの目の前で女の子に手を出したの?」
セナがブチ切れMAXって感じの表情で扉からマツダを睨む。
「ご、誤解だ!拙者はただいまの挨拶をしただけであって…」
そんなやり取りを見て、私は思わずお腹を抱えて笑う。
「ブッ…アハハハ!アハハハハハ!なんですか、このやり取りは!ほんとに…愉快な会話をなされますね…はぁ~…お腹痛い…」
そんな私の様子を見て3人も笑う。
…
ご飯を食べた後、セナが言う。
「なぁ、アルフェルンはこれからどうするつもりなんだ?」
「どうする…とは?」
私が聞き返すとセナが言う。
「正直、ここでアニキと暮らしてもアニキは男だし、いつ盛るかわからねぇぞ?」
「ちょっと!拙者は確かにロリコンだけど、さすがに同意無しの行為はしないし、そもそも三次元ロリに手を出すのは犯罪だよ!」
「おいおい。アタイがアニキの事をわかってないとでも?アニキがこんな可愛い子を放置プレイ出来るなんて思わねぇが?」
マツダとセナが喧嘩し始める。
ニッタが「バァン!」と机を叩くまで、それは続いた。
「お2人とも、いい加減にしてください。アルフェルンちゃんが困ってるでしょう!それに瀬奈っちも健介さんも女の子がいる事を忘れてませんか?」
ニッタのホンワカとした雰囲気からは一転して、今のニッタからは鬼神のようなオーラさえ感じる。
さすがにニッタのこのオーラには誰も口出し出来ないだろう。
「さてと…」
ニッタは2人が黙ったのを見て私に言う。
「アルフェルンちゃんはどうしたいか決まってる~?」
ニッタはホンワカとした雰囲気を出して言う。
「私は…」
私は深呼吸する。
「私は3人と一緒に暮らしたいです。せっかく出会えたんですもの…いつか、別れの日が来るとしても出来るだけ、こうして一緒に居たいです。マツダさんの好きなアニメやセナさんの好きなファッションやニッタさんの好きな料理とか…全部…この世界は私の知らないもので溢れています。私はそんな世界を知りたいです。私の知的好奇心が疼いて溢れてしまいます。だから、私は3人で暮らしたいです。いろんなことを知って、経験して、記憶して、楽しんで…笑って…生きたいです。」
私がそう言うと3人は顔を見合わせる。
そして、ニッタが言う。
「じゃあ、シェアハウスとかやったりする~?瑠衣のパパに頼んだら、どっかあるかもしれないし~…」
セナが私を見ながら言う。
「それは良いが、そうなるとアルフェルンの事を瑠衣のお父さんになんて言うかだよね。異世界から来ました~なんて言えるはずないもん。」
「そ、そうだよね~…」
ニッタがしょんぼりとした様子で言う。
私はこの世界の事には全くの無知なので、とりあえず黙って聞いている。
「となれば、拙者たちでできる事をやるべき…ですな。」
マツダがそう言うとセナが言う。
「できる事ってなんだよ?まさかとは思うけど、ここで4人で暮らそうだなんて言わねぇよな?!」
「それは無いでござるな。単純に住む部屋が無いのと、狭いからでござる。悲しきかな。」
「そうだな。さすがのアニキもそれは理解してるみたいで良かったぜ。」
「それよりも今後の生活費について相談した方が良いでござるな。」
「計算はちょっと苦手です~…」
3人ともそこまで頭は良くない様子だった。
…すっごい失礼だけど。
「なら、私が計算しましょうか?」
私がそう言うと3人が顔を見合わせてから私を見て言う。
「お願いします~」
「お願いするぜ!」
「お願いするでござる!」
私は前世の魔術の研究でよく式を多用していたから、こういう事は大得意なのだ。
…
そして、3人の収入と支出を計算する。
「それじゃ、収入が3人で45万円くらい、支出が25万円ほど、内訳は食費5万円、光熱費6万円、ガス代3万円、家賃が11万円…そして、急な出費に備えた貯金が10万円、残りは自由って感じで良かったかしら?」
私がそう言うとニッタが言う。
「それと月の携帯代だね~。瑠衣ちゃんはだいたい2万くらいかな?」
セナが驚いた顔をしながら言う。
「瑠衣、お前高くねぇか?!アタイでも、1万2千ほどだぜ?」
「瀬奈ちゃんは1台持ちだからね~。瑠衣ちゃんは2台で、1台は仕事用の格安SIM使ってるから~」
「それなら、だいたいそれくらいか…」
マツダが言う。
「拙者はスマホに関しては2千円くらいでござるな。うちに居れば、光を引いてるので使わないでござるからな。それに拙者はパソコンの方が使うでござる。確か、光は5千円くらいだったと思うでござる。」
そして、私が紙に書きながら、ニッタにもらったスマホで計算する。
「だいたい、皆さん、支払い用のお金は4万円ほどを用意出来れば良い感じでしょうか?もちろん、急な出費でこのお金以上のお金が必要な場合には貯金から支払う事も出来ますが、これはあくまでも緊急時用のお金ですので、使い過ぎにはご注意ください…ですね。」
「アルフェルンちゃん、せっかく瑠衣ちゃんがスマホあげたのに紙も使っちゃうなんて…可愛い~…!」
ニッタはうっとりとした表情で私を見る。
「絶対、今言うべき事じゃねぇだろっ!」
セナがビシッとツッコミを入れる。
「それじゃ、後は拙者に任せるでござる。住む場所について要望があれば、今のうちに書き出しておくでござるよ。」
マツダが言うと2人が相談しながら言う。
「まずは風呂とトイレは別々がいいな。欲を言えば、風呂とトイレが2つあるといいが…」
セナが言うとニッタも言う。
「そうですね~…私は部屋が複数ある方が良いかな?と思います~。一応、健介さん以外は女の子ですし、最低でも二部屋あればいいと思いますよ~」
マツダは難しい顔をしながら言う。
「なかなかに難しい要望を言うでござるな…それだと2、3万ほど家賃が上がりそうでござる。拙者も光が引ける場所である方が有難いでござるしなぁ…」
私は3人に言う。
「マツダさん、ご自身のパソコンとスマホの利用用途とパソコンで出来ることとスマホで出来ることのリストアップをお願いします。そして、ニッタさんとセナさんはお二人のスマホの主な利用用途のリストアップをお願いします。それで必要なものをまとめましょう。」
そうして、私を含めた4人がグループになっているルァイン?って言うアプリにそれぞれのものが送られてくる。
「ふむふむ…大まかに分けますと、セナさんは通話をよくご利用されていて、ニッタさんは通販サイトがメインでゲームもかなりやりこんでいらっしゃると…マツダさんはスマホは通話しか利用してませんが、PC?…ああ、パソコンの事ですか。パソコンでは、ブラウジングやゲームをやりこんでいるんですね。」
次にマツダがパソコンとスマホでできる事のリストアップをした表を見る。
「ふむふむ…スマホだけでは出来ない事としてはゲームが主になりそうですね。娯楽も必要なのはわかりますが、ここを削る事が出来るなら、少し余裕は出来ます…いや、この場合は総合してみるとあまり変わらないかもしれませんね…光回線とパソコンを無くすとなれば、それを補う為にスマホの支払いが増える事は明白です。ですが、工事の費用などを考えると初期費用としては、そこそこ大きな金額の確保が可能ですね。マツダさん、スマホの料金について料金表みたいなものがあれば、そちらも見せていただけますか?ニッタさんとセナさんも出来ればお願いします。」
そして、3人のスマホの料金表が届き、私が計算する。
「パソコンが無い場合、セナさんとマツダさんが家族割を適応した場合に__のプランで3千円くらい高くなる可能性がありますね。この場合ですと光熱費で比較した方が良いでしょう。マツダさんにお願いしていた光熱費の料金表を見るに月あたりが__円、ニッタさんに教えていただいた検索の結果では、これは5千円ほど安くなりますね。」
こうして、着々と計算が進む。
ニッタがそんな私の様子を見て呟くように言う。
「アルフェルンちゃん、瑠衣ちゃんたちより歳下のはずなのにすっごく頭が良くてしっかりしてますね~…そんなところも可愛いなぁ~…」
「瑠衣はそればっかだな。まあ、アタイもアルフェルンはしっかりしてて凄いなと思うけどさ。」
「あはは!瀬奈ちゃんは素直じゃないなぁ~。可愛いは正義なんですよ~!」
「あ~…はいはい。瑠衣の十八番芸だな。」
「まあっ!十八番芸だなんて失礼しちゃうわ~!」
「へいへい。言ってろ言ってろ。」
こうして、私たちの新しい新居探しが始まるのであった…
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