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第二十四話 裏技で売却金額ブーストします
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僕たちは城でフロアボスの素材をチェックしてみることにした。
城とは言っても祖父が喧噪を避ける為に建てた言わば別荘なので、そう広くはない。
なのでフロアボスの素材を圧縮袋から取り出すスペースは玄関ホールにしかなかった。
ロベールや爺や、従者たちが見守る中、僕は圧縮袋の中に手を入れる。そして中に入っている物を取り出すイメージを浮かべながら手を圧縮袋から出した。
すると巨大な巨大な象牙のようなものが玄関ホールに姿を現した。
グレートベヒモスの角である。
角の尖っている方が白銀に輝いており、根本に近づくほど琥珀のような深みのある色合いになっている。
フロアボスの素材が何を作るのに使われるのか僕は全然知らないが、納屋よりも大きい貴金属か宝石ような何かなのだ。そりゃあオークションにかけられて大金貨で何枚、何十枚という値がつくだろう。
爺やたちが素材に瑕疵がないかどうか念入りにチェックしていく。しばらく屈み込んで角を見ていた爺やが立ち上がって報告する。
「切り口がいささか乱雑ですが品質には問題ないでしょう」
爺やの報告に僕もロベールも胸を撫で下ろした。
「このように乱暴な斬り方だと割れてしまう場合もあるので、冒険者たちにはもっと素材の丁寧な扱い方を覚えて欲しいものですな」
いつもにこにこしている好々爺の爺やが珍しく苦言を呈した。
爺やがこういう言い方をするということは、冒険者たちの素材の扱いは相当酷いということである。
「素材の丁寧な扱い方、か」
「ええ。もう少し質の良い状態で素材を獲ることが出来れば冒険者たちも収入が増えると思うのですが」
それは聞き逃せない情報だ。
ゲーム内では冒険者が獲ってくる素材の質なんて細かい評価項目はなかったので、向上させるために何をすればいいのか分からない。
だが方策を考えておくべきだろう。いずれ手を打たねば。
「後はオークションにかけるだけだな。なるべく高い値が付くように祈ろう」
安心したようにロベールが呟く。
「祈る? 高い値が付くように積極的に動かなきゃ」
僕は眉を上げる。
「いやいや、我々はオークションに出品するだけだぞ。どんな値が付くかなど完全に運次第ではないか。参加者でない限り値を左右することなど……まさか」
ロベールはすぐに僕の考えている作戦に思い至ったようだ。
「そう、そのまさかだよ」
オークション会場に参加者として紛れ込めば値を吊り上げられるじゃないか、と僕はほくそ笑む。
「だ、だが誰が参加者の振りをするんだ? アンか? それとも私か?」
「流石に出品者が参加者の振りをしたらバレるよ」
僕は見た目が特徴的なので絶対にバレる。
ロベールには任せるのは不安だ、とは口に出さないでおくことにした。
「良かった。なら……」
「うん、だから爺やを変装させてオークション会場に紛れ込ませる。爺やならなんでもできるからね」
僕はぽん、と爺やの肩に手を置いた。
爺やはにこにこと頷く。
「そうかそうか爺やに。それは確かに上手くやってくれるだろうな……って、はあああああ!?」
そんな大袈裟に驚かなくても良かろうに、と僕は耳を塞いだのだった。
城とは言っても祖父が喧噪を避ける為に建てた言わば別荘なので、そう広くはない。
なのでフロアボスの素材を圧縮袋から取り出すスペースは玄関ホールにしかなかった。
ロベールや爺や、従者たちが見守る中、僕は圧縮袋の中に手を入れる。そして中に入っている物を取り出すイメージを浮かべながら手を圧縮袋から出した。
すると巨大な巨大な象牙のようなものが玄関ホールに姿を現した。
グレートベヒモスの角である。
角の尖っている方が白銀に輝いており、根本に近づくほど琥珀のような深みのある色合いになっている。
フロアボスの素材が何を作るのに使われるのか僕は全然知らないが、納屋よりも大きい貴金属か宝石ような何かなのだ。そりゃあオークションにかけられて大金貨で何枚、何十枚という値がつくだろう。
爺やたちが素材に瑕疵がないかどうか念入りにチェックしていく。しばらく屈み込んで角を見ていた爺やが立ち上がって報告する。
「切り口がいささか乱雑ですが品質には問題ないでしょう」
爺やの報告に僕もロベールも胸を撫で下ろした。
「このように乱暴な斬り方だと割れてしまう場合もあるので、冒険者たちにはもっと素材の丁寧な扱い方を覚えて欲しいものですな」
いつもにこにこしている好々爺の爺やが珍しく苦言を呈した。
爺やがこういう言い方をするということは、冒険者たちの素材の扱いは相当酷いということである。
「素材の丁寧な扱い方、か」
「ええ。もう少し質の良い状態で素材を獲ることが出来れば冒険者たちも収入が増えると思うのですが」
それは聞き逃せない情報だ。
ゲーム内では冒険者が獲ってくる素材の質なんて細かい評価項目はなかったので、向上させるために何をすればいいのか分からない。
だが方策を考えておくべきだろう。いずれ手を打たねば。
「後はオークションにかけるだけだな。なるべく高い値が付くように祈ろう」
安心したようにロベールが呟く。
「祈る? 高い値が付くように積極的に動かなきゃ」
僕は眉を上げる。
「いやいや、我々はオークションに出品するだけだぞ。どんな値が付くかなど完全に運次第ではないか。参加者でない限り値を左右することなど……まさか」
ロベールはすぐに僕の考えている作戦に思い至ったようだ。
「そう、そのまさかだよ」
オークション会場に参加者として紛れ込めば値を吊り上げられるじゃないか、と僕はほくそ笑む。
「だ、だが誰が参加者の振りをするんだ? アンか? それとも私か?」
「流石に出品者が参加者の振りをしたらバレるよ」
僕は見た目が特徴的なので絶対にバレる。
ロベールには任せるのは不安だ、とは口に出さないでおくことにした。
「良かった。なら……」
「うん、だから爺やを変装させてオークション会場に紛れ込ませる。爺やならなんでもできるからね」
僕はぽん、と爺やの肩に手を置いた。
爺やはにこにこと頷く。
「そうかそうか爺やに。それは確かに上手くやってくれるだろうな……って、はあああああ!?」
そんな大袈裟に驚かなくても良かろうに、と僕は耳を塞いだのだった。
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