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第二十三話 はい討伐成功です
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ほどなくして城の外がざわざわと騒がしくなる。
「な、なんだ? 何が起こった?」
ロベールが立ち上がって窓から外の様子を窺う。
「フロアボスを倒してきたんじゃない?」
「もう!?」
僕はもうそろそろかなと思っていたけれど、ロベールはもっと時間がかかると思っていたようだ。冒険者たちが戻ってきたことに驚いていた。
「よし、フロアボスの素材を受け取りに行こう!」
僕は金貨を詰めた袋を爺やに持って来てもらうように頼んで、外に出る準備をする。
ロベールも早く外に出るように促して、僕らは冒険者たちが待っている広場に向かったのだった。
広場に集まった冒険者の中には座り込んでヒーラーから治療を受けている者もいる。
だが見たところ死んでしまった者や大怪我をした者はこの場にはいないように見えた。
跡形もなく潰されてしまった場合は遺体を運んでくることすらできないかもしれないが、沈んだ顔をしている者は見当たらないので恐らく犠牲者はいなかったのだろう。一安心だ。
冒険者たちはすぐに僕らの存在に気が付いた。
「領主様! 領主様の言った通りにしたらすべて上手く行きました!」
「領主様万歳! 犠牲者ゼロでフロアボスが倒せるなんて!」
口々にフロアボスを討伐できた喜びの声と僕を称える言葉を口にする冒険者たち。
きちんと備えることさえ忘れなければ最初のフロアボスくらい犠牲者ゼロで討伐することなんて簡単なのに。
そうだ、RTAのついでに犠牲者ゼロ縛りも追加しようか。
犠牲者ゼロで十年間でどれだけ村を繁栄させられるかに挑戦するのだ。
そういえばそれって正確にはRTAではないな、と気が付く。
ゲームでRTAをやり込んでいる時にはどんどんスキップして速さを競うことが出来たけれど、現実にはスキップ機能はない。
だから十年間でどれだけ村を繁栄させられたかで攻略の速さを測るしかないのだがそれは正確にはRTAではない。
よくよく考えればゲーム内ではできないことだけれど、この世界であればナルセンティアと戦うだけの戦力が準備できた段階でこちらから攻め込んでいって無理矢理戦争を起こしてクリアに持ち込む選択肢もあった。
だがそれもなるべく戦争を回避するとロベールと約束した以上使えない手だ。
おや、僕はいつの間にRTAよりもロベールとの約束の方が大事になったのだろう?
RTAのためだけにロベールと婚約したはずなのに。
ともかく、「十年間で犠牲者ゼロでどれだけ村を繁栄させられるか限界までチャレンジする」に僕は新しく目標を設定し直したのだった。
「フロアボスの素材を持っている者はどこだ?」
「あ、こちらです……!」
人だかりの中に埋もれていたメイジの少年がぴょんぴょんと飛び跳ねて返事する。冒険者たちが気が付いて道を開ける。
「あの、こちらです! 壊れてないです、しっかり撮れていると思います!」
メイジの少年がヴィデ・オブスキュラと圧縮袋を僕に差し出してくる。
「ああ、従者に渡してくれ」
「あ、すみません貴族様は重たい物を持ったりしませんよね……!」
爺やは金貨袋を持っているので、ロベールの従者に魔導具を受け取らせた。
「ご苦労だった。では、折角だから君から報酬を渡していこう。爺や」
爺やが進み出て、袋から取り出した金貨を少年に手渡す。
「ありがとうございます……!」
よほど嬉しいのか、少年は頬を紅潮させて金貨を受け取った。
従者たちが冒険者らを整列させ、爺やが一枚ずつ金貨を手渡していく。途中「おい、お前は参加してねえだろっ!」と周りの冒険者に列から追い出されてる者もいた。冒険者たちのおかげで金貨の不正受給も防げそうだ。
こうして初めてのフロアボス討伐は無事に幕を下ろした。
「な、なんだ? 何が起こった?」
ロベールが立ち上がって窓から外の様子を窺う。
「フロアボスを倒してきたんじゃない?」
「もう!?」
僕はもうそろそろかなと思っていたけれど、ロベールはもっと時間がかかると思っていたようだ。冒険者たちが戻ってきたことに驚いていた。
「よし、フロアボスの素材を受け取りに行こう!」
僕は金貨を詰めた袋を爺やに持って来てもらうように頼んで、外に出る準備をする。
ロベールも早く外に出るように促して、僕らは冒険者たちが待っている広場に向かったのだった。
広場に集まった冒険者の中には座り込んでヒーラーから治療を受けている者もいる。
だが見たところ死んでしまった者や大怪我をした者はこの場にはいないように見えた。
跡形もなく潰されてしまった場合は遺体を運んでくることすらできないかもしれないが、沈んだ顔をしている者は見当たらないので恐らく犠牲者はいなかったのだろう。一安心だ。
冒険者たちはすぐに僕らの存在に気が付いた。
「領主様! 領主様の言った通りにしたらすべて上手く行きました!」
「領主様万歳! 犠牲者ゼロでフロアボスが倒せるなんて!」
口々にフロアボスを討伐できた喜びの声と僕を称える言葉を口にする冒険者たち。
きちんと備えることさえ忘れなければ最初のフロアボスくらい犠牲者ゼロで討伐することなんて簡単なのに。
そうだ、RTAのついでに犠牲者ゼロ縛りも追加しようか。
犠牲者ゼロで十年間でどれだけ村を繁栄させられるかに挑戦するのだ。
そういえばそれって正確にはRTAではないな、と気が付く。
ゲームでRTAをやり込んでいる時にはどんどんスキップして速さを競うことが出来たけれど、現実にはスキップ機能はない。
だから十年間でどれだけ村を繁栄させられたかで攻略の速さを測るしかないのだがそれは正確にはRTAではない。
よくよく考えればゲーム内ではできないことだけれど、この世界であればナルセンティアと戦うだけの戦力が準備できた段階でこちらから攻め込んでいって無理矢理戦争を起こしてクリアに持ち込む選択肢もあった。
だがそれもなるべく戦争を回避するとロベールと約束した以上使えない手だ。
おや、僕はいつの間にRTAよりもロベールとの約束の方が大事になったのだろう?
RTAのためだけにロベールと婚約したはずなのに。
ともかく、「十年間で犠牲者ゼロでどれだけ村を繁栄させられるか限界までチャレンジする」に僕は新しく目標を設定し直したのだった。
「フロアボスの素材を持っている者はどこだ?」
「あ、こちらです……!」
人だかりの中に埋もれていたメイジの少年がぴょんぴょんと飛び跳ねて返事する。冒険者たちが気が付いて道を開ける。
「あの、こちらです! 壊れてないです、しっかり撮れていると思います!」
メイジの少年がヴィデ・オブスキュラと圧縮袋を僕に差し出してくる。
「ああ、従者に渡してくれ」
「あ、すみません貴族様は重たい物を持ったりしませんよね……!」
爺やは金貨袋を持っているので、ロベールの従者に魔導具を受け取らせた。
「ご苦労だった。では、折角だから君から報酬を渡していこう。爺や」
爺やが進み出て、袋から取り出した金貨を少年に手渡す。
「ありがとうございます……!」
よほど嬉しいのか、少年は頬を紅潮させて金貨を受け取った。
従者たちが冒険者らを整列させ、爺やが一枚ずつ金貨を手渡していく。途中「おい、お前は参加してねえだろっ!」と周りの冒険者に列から追い出されてる者もいた。冒険者たちのおかげで金貨の不正受給も防げそうだ。
こうして初めてのフロアボス討伐は無事に幕を下ろした。
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