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2-54 交渉成功?
しおりを挟む「全く手間を掛けさせたお礼はたっぷりとしてもらうからな」
これを言ったのは王様…ではなくヴァン様。不敬罪という言葉を知ってるよね?と思いつつも何も言わないで二人の様子を見ています。
今、口を挟むのは違う気がするんだよね。
「…わかっている。迷惑をかけたぶんはしっかりお礼はする」
やっぱり王様は怒る様子が無い。
「言質は取ったからな。フルド…こちらへ」
ヴァン様と王様の視線が僕に向く。
僕はここで二人のやり取りを見ているだけで良いのですが…。
「あの者は…ヴァンの一族の者か?」
「ああ、そうだ。お礼はアイツの願いを聞いてもらいたい」
なるほど…僕から王様にお願いしろとヴァン様は言いたいんだね。
き、緊張するんですけど…。
「は、初めてお目にかかります。ヴラド伯爵家のフルドと申します」
僕は王様の寝ているベッドの側まで緊張しながら近づいて頭を下げた。
「ふむ…。寝たままで悪いが暫く起き上がれそうに無いのでな…このままで失礼するぞ。今回はそなたにも世話になったみたいだな。礼を言う」
王様からお礼を言われた…。感動なんですけど~!!!
「コイツはお礼を言われるような事はしていないぞ」
ヴァン様!一言多い!!
今回は僕もわりと役に立ってたでしょ!と言いたいけど王様の前で喧嘩は良くないよね。だからヴァン様を睨むだけで我慢するよ。
ヴァン様は気がついてないみたいだけどね。
「そんなことは無いだろう。ヴァンが連れてきたと言うことはそれなりに役に立つ人物のはずだ。身内にも口が悪いのは変わらないのだな」
僕は王様の言葉に大きく頷いて同意する。それを見ていた王様が笑顔を見せた。
「それで私に願い事とは何かな?」
ゴクッと唾をのみこんで深呼吸をした。
ここからが勝負だよね!僕の言葉に獣人さん達の未来がかかっている。
「…僕の…いいえ、私の願いは友人の国を返還することです。怪しい力を使って国を追われた友人達が安心して国に帰ることができるようにすることです」
僕の話を王様は最後まで何も言わずに聞いてくれていた。
「その友人の国とは獣人国のことかな…?」
さすが王様!僕のさっきの話でもう理解してくれたんだ。
「はい」
「怪しい力か…。やはりあの聖女…いや、女の力なのせいか」
王様は聖女の力に薄々気がついていたみたいだ。険しい顔をして何かを考えている。
「獣人国には申し訳ない事をした…。私のバカ息子が聖女に唆されてやったことだ。親である私がきっちりと責任をはたそう。ヴァン…手伝ってくれるか?」
王様がヴァン様に視線を送る。
「…仕方ない。早く終わらせるためだ」
ヴァン様は王様が何をする気なのか理解しているらしく会話は終わってしまった。
え…と、これって交渉成功ってことで良いのかな?
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