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2-53 不敬罪?
しおりを挟む僕がブラディーボールを握りしめて王様が回復するように祈っていると王様の身体から見慣れた黒い靄がもくもくと出てきた。驚いて見とれていたらヴァン様に「集中しろ!」と怒られてしまった。
少しくらい驚いても許されると思う…。
気を引き締めて再び祈り始めると黒い靄はやはり僕の持っているブラディーボールに吸い込まれるように入ってしまった。
「これで終わった?」
「まだだ…」
僕がやっと終了したのかとホッと一息をついたらヴァン様が王様の寝ているベッドに近づいてきて何かの呪文を唱え始めた。
ヴァン様が広げた手から光の粉みたいなのが出てきて王様の身体を覆っている。
…ヴァン様って本当に何でも出来すぎない?
たぶんだけど、これって回復魔法とかをかけているっぽいんだよね。出来る先祖を持つと子孫がそのうちいじけるよ…。
ヴァン様は暫くその体制から動くことなくずっと光の粉を王様にかけていた。すると王様がうなされるような声を出した。
「ううぅ…」
頭を左右に振り少し苦しそうに見える。
「フルド!もう一度、今度は王様の頭の辺りにブラディーボールをかざして祈ってみろ!」
「え…はい!」
僕は慌ててしまっていたブラディーボールを取り出して王様の頭の辺りにかざした。
すると…またまた黒い靄が糸みたいに出てきて吸われている。
さっきので全部を吸い取った訳ではなかったのか!?
僕は驚きながらも糸のような靄が消えるのを待った。
1分くらいすると黒い靄の色が薄くなって完全に消えていった。
それと同時に王様の呻き声が聞こえなくなって顔色がみるみると良くなっていく。
「良くやった。お前はここから少し離れていろ」
ヴァン様に言われた通りにベッドから離れると、それを確認したヴァン様が唱えていた呪文の言葉を変化させた。
今度はなんだ?
目映い光が王様の身体を包んでいる!?え!しかも王様の身体が宙に浮いてるよ!
イリュージョン!?
でも…それは一瞬の出来事ですぐに光は消えて王様の身体もベッドにゆっくりと降りて行った。
見間違いじゃないよね?あれもヴァン様の能力なのかな。本当にいじけても許されると思ってきたよ。ヴァン様が凄すぎる。
「…ヴァンか」
うっすらと目を開けた王様がヴァン様を見て名前を呼んだ。ずいぶんと親しそうな雰囲気がするんだけど…気のせいなのか?
「何をやっているのだ。こんな術にかかりよって!」
え?ヴァン様が王様を叱ってる!?
ふ、不敬罪だよ!
「ヴ、ヴァン様!言葉遣い!」
「フン!そんなもの知るか!」
…謝らない!これってピンチ!?
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