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65. 良かった…
しおりを挟む僕は身体強化をして気合いをいれた。
「良し!」
ウルの家族がお医者様の話を聞くらしく全員部屋を出ていったから今なら部屋に誰もいない。チャンスは今だけ。
『何が良し!なんだ…』
「え?!」
声のした方を見ると窓にコウモリ…ヴァン様の姿があった。
『こそこそと動いてると思って付けてきたが…何をするつもりだ』
嘘!ヴァン様に気づかれていないと思っていたのに…。どうしよう。
『黙秘か…。どうせお前の事だからそいつを助けようとしているのであろう。しかも禁術で…』
ヴァン様は窓枠にぶら下がりながら溜め息をついた。
「…禁術?」
『我ら一族の禁術だ。前にも言ったがブルーブラッドの花は我ら一族にとっては敵みたいなものだ。だが、一族の中には変わり者がいて、花の研究をしていた者がいてな、その者が発見した禁術…一族の血液をブルーブラッドの効果で寝ている者に飲ませれば目が覚めると言うやつだ』
…ご先祖様は研究してたどり着いていたんだ!
「それが禁術ですか?」
そこまで聞いただけでは危険な事は無さそうに思うんだけど?
『お前…今、禁術っていっても危険は無さそうって考えていただろ!』
相変わらず僕の考えていることがわかるんですね。
「…はい」
あ…ヴァン様の身体が震えてる。え、もしかして…相当怒ってる?
『バカモン!考えてみろ、我ら一族の血液は色んな一族の血液が混ざっているんだぞ!それを数滴ならまだしもそいつの状態なら大量に飲ませる事になる。そいつの身体に異変が起こらないとは言いきれんぞ!』
「え!僕じゃなくてウルが危険になるんですか…」
そこまで考えていなかったけど、確かにヴァン様の言うことは理解できる。単純に色んな人に適合できる血液なのかと考えていたけど…今までは量にすれば少量だったから異変が相手に出なかっただけかもしれないよね。
でも…迷っている間もウルが苦しそうにもがいている姿が目の前にあるんだよ!今すぐ苦しみから解放してあげたい。
「…他に方法がありません。すぐに助けたいんです!」
『はあ~。お前…そいつの妹とのブラディーボールを持っているか?』
「はい」
『それをそいつに飲ませろ。そして飲ませた後にお前の血液を数滴口に含ませろ。そうすれば助かるだろう…』
え…ブラディーボールを飲ませる?
「ブラディーボールって飲ませても良い物なんですか?」
一応食べ物ではないと思うんだけど?固いし、何で出来ているのかも怪しいしね。
『いつもはせんが使い方の1つだ!早くせい!!』
ヴァン様が窓から離れて僕の顔の回りを飛び回っている。翼が顔にあたって地味に痛いんですけど…。
僕はヴァン様に促されて言われた通りにやってみた。ウルにブラディーボールを飲ませて僕の血液を口にいれた後、吐き出さないように口を閉じさせた。
「うっ…ううっ…」
ウルは目を開けずに首を左右に振りながら僕の手を払おうとしているみたい。だけどここで口から吐き出されたら助ける事はできない。僕は心を鬼にしてウルの口を押さえた。
しばらくすると、うなされていたウルの声が聞こえなくなり穏やかな顔に変化した。
『もう、大丈夫だろう』
鑑定…。
僕はこっそりとウルを鑑定してみた。
状態異常解除。体力回復。身体強化(強)
ん?最後の身体強化(強)が気になるけど…。
「良かったよねウル…」
僕はウルの頭を触りながら泣いていた。
どうやら親友を失う危機は乗り越えられたみたいだ。
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