俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮

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第十一章 本戦

第101話 チュートリアル:月野VS佃

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《――強烈な一撃いいいいい!! 思わず月野が距離をとった!!》

 開始数分。

 月野の右胸部から肩にかけパキリッとバリアに深い亀裂が入る。

「ック……」
(ダメージは浅くはないか……!)

 月野 進太郎。佃 満。右胸部と大腿部に深い亀裂。横腹に打撃痕と右腕に深い亀裂。双方共にダメージ有り。

「休むなんて許さないよ! クイックナイフ!!」

「ッチ!」

 ダメージの具合を確認していた明らかなスキを見逃さない佃。少し出遅れた月野は、スキルエフェクトが唸るナイフをガントレットで受け止める。

《クゥ^~スキありと佃が攻める! 大きなダメージを受けたばかりの月野は苦しいか!?》

《超攻撃的なスキル構成の佃くんは攻めッ毛がありますね》

 カメラのレンズに映るのは持ち前のナイフ捌きで果敢に攻め立てる佃と、防戦一方の月野。誰から見ても月野の劣勢は明らかだった。

 当然、月野も内心焦る。

(開始に一発、そこからスキを突いて横腹に一発。……バリアのダメージが大きいのは佃の方だ。だが――)

「アハハ! ラインスラッシュ! ラインスラッシュ! ライン――」

(斬る行為をしたナイフの軌道にある光る線……! これが物凄くやりにくい……!!)

 太い眉毛がくっつきそうな程にしかめる顔。明らかに苛立ちを隠せないでいる月野に対し、佃 満は喜々として凶刃を突き立てる。

 ここでゲスト解説者、ヤマトサークルの西田メンバーが口を開く。

《月野くんが防戦一方なのは見ての通りでしょう。佃くんが攻撃に使用しているスキルは「ラインスラッシュ」と言い、斬った軌道が可視化した状態になり、ナイフを追う様に斬撃が発生するんです》

《光っては消えて、光っては消えての正体はソレだったんですね! クゥ^~!》

 佃に掴みかかろうと手を伸ばした月野だが、可視化したラインの斬撃が阻み、指先にダメージを負う。

《本撃であるナイフの威力ほどダメージは無いにしろ、身を守る事には秀でている……。今みたいに確実に来る斬撃を発生させるんです。ナイフの本撃に少量のダメージを負わせる軌道。手を出そうにもつつかれる》

「それーーーー!! アハハハ!!」

《攻撃と防御を同時にできるスキルなんですね!》

《ナイフを主力とする攻略者にもあまり見ないスキルですし、実際にダンジョンに潜ってスキルを使うかと言うと選択には入らない……そんなスキルです。軌道の斬撃なんてモンスターからすれば痒い程度ですから》

《え? でも現実的に月野は苦戦してますよね?》

《ハイ。あくまでもモンスターに限ってあまり有効でないだけで、少しでもダメージを押さえたいバリアの破り合いならば話は別です》

 姿勢を低くし攻める佃に対しタックルを仕掛ける月野。しかし冷静な佃はヒョイと避け、進太郎は細かく残るラインスラッシュの餌食に晒された形となった。

《無暗に突っ込めばダメージが入る……。語弊がありますが、佃くんは月野くん嫌がる事を徹底している。バリアのダメージは相手より少ないですが塵も積もれば何とやら。彼の精神的ダメージは大きいですよ》

《クゥ^~!! まさに手のひらの上状態! 月野はこのまま防戦一方なのかああああ!!》

 否。

「ッッ」

 防戦一方。ひたすらやられるだけのサンドバック。月野 進太郎はそれをひたすら耐えるのを我慢できない。

 進太郎の目が細まる。

 避けるとすぐ詰められる超接近戦。佃の猛攻に垣間見る少ないスキ。そこを突いて攻撃や掴みを出していたが、それが難しいと判断。

「ッ~!」

 スキルのエフェクトを纏うナイフが空を斬ると、佃は驚いた。

「え!?」

 月野が背中を見せて逃げるように距離をとったのだ。

《思わず逃げ腰になったか月野おおおお!! 驚愕した佃は一間置いて月野を追う!!》

 身長190センチの巨体である月野。鈍足かと思われがちだが、高い運動センスから繰り出すスピードは目を見張るものがある。現に佃は――

「ほーん。以外に足早いね月野くん!」

 との追いかけながらの感想。

 健闘を称える大歓声と逃げるな戦えとブーイング。その両方を余すところなくテレビに流れる。

「おろ?」

「――よいしょっと」

《おおっと! これはどういう事だあ!?》

《うーむ……大したもんだな》

 ある程度距離が開くと立ち止まり、追いかけてくる佃に体を向けた月野。バリアが歪に変形して月野に張り付く。おもむろにジャージを脱ぎだし腕を腰に結んで固定したからだ。

 柔道や筋トレで鍛えられた肉体。ぴっちりな黒のTシャツには筋肉の隆起が見える。脱ぐために収めていたガントレットを再度装着。

「腹筋バキバキだね! 暑かったの?」

「まあな。褒めてくれるのは普通に嬉しいけど、萌の体を知っていると自慢できないな」

 黄色い歓声が上がり太い眉毛をハノ字にして困った顔をする月野。

「ッハハ!」

 ナイフを構え詰め寄る佃。服を脱ごうが関係ないと果敢に攻める。

《佃が走った! 真っ直ぐ敵に向かいます!!》

 この時、進太郎は悔やんでいた。

(技を見せるのは控えたかったが、しかたない……)

 進太郎の計算では、早々に大きな一撃を与え、"同じ攻撃を受ければ後が無い"と思わせる。そしてそのまま押し通し、佃を倒す算段だった。

 だが上手うわてだったのは佃だった。攻め続けると一度決めればどんなダメージでも覆さない精神力に加え、進太郎の不利な軌道でのラインスラッシュを多用しいやらしく攻める計算力。

 そして燻ぶっていた佃の特性。進太郎と西田メンバーが垣間見る佃の強さ。それは攻めに攻め続け、休みなく攻め続けれる膨大な体力だ。

 このままではジリ貧。

 それを感じたからこそ、進太郎は肘を後ろに引き、拳を静かに人差し指から握りこみ親指で閉めた。

「起動――」

 黄色のラインが浮かび上がり、肘に近いガントレットの装甲が展開。展開部からエネルギーが噴射。

「ブースト――」

 駆けてくる佃に向かって拳を殴りつけ――

「――ガントレット!!」

 ドワオッ

 拳が、腕が、ガントレットが進太郎の腕から放たれた。

《ロケットパンチだああああ!!》

「いい゛ッ!?」

 真っ直ぐ自分の顔面に飛んでくるガントレット。

 どうするどうすると思考を巡らせた佃だが、ここはベターの選択肢。

「いっ!?」

 身体を反らしてブーストガントレットを避ける。

 だが続けてもう一打。右腕の次は左腕。

(いつの間に撃ったの!?)

 驚きながらも避ける事に成功する佃。

「!」

 次に目で捉えたのは青と白。ファスナーが付いているジャージだった。自分が持っているジャージより数サイズ大きいジャージ。佃 満の視界を覆うには十分な大きさだった。

 ここで佃の思考が加速する。

(ジャージを脱いだのは目くらましのためか! 二連続ロケットパンチには驚かされたけど、このジャージを切り裂いたら君が見えるのかなあ? それともそれがブラフで左右から回り込み? まあどっちでもいいやあ!!)

 ニヤつく佃。

(どっちにしろジワジワ攻めてやる!!)

 スキル、クイックナイフでズタズタにジャージを切り裂いた。

(さあ左右どっちから来る!!)

 迎え打つ眼球の動作は一秒にも満たない。思考に伝達したのはどこにもいない月野の存在。

 ならばどこへ――。

 自然と目は空を向いた。

「――ぉぉぉおおおおおおおお!!!!」

 脚に装着したガントレット――ソルレットは轟々とエネルギーを噴射して空からの一撃を加えんとす。

(ライダーキッ――)

「ゲシュペンストキックだああああああああ!!!!!」

 瞬時に腕でガードした佃だが、まともにソルレットにキックを受けてしまいバリアが亀裂を生み悲鳴をあげた。

「ッボヘ――っぐは!?」

 床をバウンドする満。

 次の行動はと思考する前に胸の衣類と腕に違和感を覚えた。

「――やべ」

 浮遊感。

「オラアアアアアアアアアアア!!!!」

 ドンッ!

 ドンッ!

 ドンッ!

 と三連続の背負い投げ。

 余りの威力に床は無残にむ砕け、無論、バリアはもつハズも無く。

 ――あーあ。

 彼は惜しむ言葉を残して消えていった。

《――決着うううううううう!! 第一試合を制したのは!! 月野 進太郎おおおおおおおおおおお!! クゥ^~~~~!!!!!》

 大歓声の中、彼は額の汗を拭い、想い人がいる席へ手を振るのだった。
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