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第一部
第8話 事件発生! ☆
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「何とか滑り込みましたね。もう今日は大人しく、さっさとおやすみ下さいませ」
ルーチェは疲れきった様子で使用人棟に下がっていった。
はぁ、今日は確かに疲れたわ。
慣れないパーティーに出たり、イベントやカフェに行ったり。
なかなか、充実はしてたけど盛りだくさん過ぎ。
あー、何か喉渇いちゃった。
ルーチェも疲れただろうから、呼んで起こしちゃ可哀想ね。
よっこらしょ、と。
自分で調理場まで取りに行きましょ。
こんな遅い時間に一人で屋敷を歩き回るのはちょっとした冒険気分だわ。
えっと、キッチンはこっちだったわね。
あら、灯りがついてる。
「マルサネ、こんな時間にどうしたのだ?」
げ、狸オヤジ……。
珍しい。彼が日中何をしているか良くわからないんだけど、どうやらここの居住スペースではなくて、ゲンメ公邸の執務室の小部屋で殆ど過ごしているため、私達父娘は滅多に顔を合わすことがない。
ま、私にとってはその方がありがたいんだけど、一つ屋根の下にいるのに、淋しい親子よね。
「ちょっと喉が渇いて。お父様こそ、どうされたのですか?」
お父様、というフレーズにまたゲンメ公のグリグリ眼が一層見開かれる。
しまった、こらハゲ!で良かったんだった……。
「まだ、良くならないのか?……イヤ良くなったと言うか、いっそこのまま治らない方が普通の娘らしくてよいのか……」
ブツブツ呟く狸オヤジ。
「遅くにお帰りでしたのね。明日、緊急の会議があると学園のパーティーで聞きました。そのことでこんな時間までお出かけでしたの?」
蛇姫とヴィンセント様のやりとりを思い出して、狸オヤジに何気に尋ねる。
……ゴトンッ……!
「大丈夫?」
狸オヤジ、放心状態で手に持っていた麦酒のビンを取り落としてる。
シュワシュワとビンが横倒しになり、中身が殆ど床に零れてしまったようだが、狸オヤジはそれに構う様子はなく固まっていた。
まぁ、手元が滑ったのかしら?
危ないわぁ。割れなくて良かった。
「お前……どうしたのだ?会議って言葉がわかるのか?」
「はぁあ?」
「今まで、会議なんて全く興味もなければ理解もしなかったではないか……頭を打った時に熱でも出たのか?」
しまった。マルサネったら公女なのに脳ミソ猿だったわ。
「私もお医者様に聞いたところによると、『知恵熱』というものらしいですわ。突然、こうパッといろんなことがわかったりするものらしいですの。会議は蛇姫が今日お話をされていて大変そうだったので、何のことかと思いまして」
「……知恵熱、だと?まぁ、お前は今まで熱なんか一回も出したことなかったからなぁ。しかし、凄いな、知恵熱いうものは。あと百回ぐらい出したらどうだ?」
「自分から出せるならそういたしますわ」
出せるか、百回も!
「明日は、そうだな……今のお前なら大丈夫かもしれない。一緒に来てみるか?大公宮。イスキアは今回は蛇姫も来るだろう」
「蛇姫も?」
「詳細はわからんが、大公とカルゾ公が急病のため、緊急に召集がかかった。順当ならカルゾをあの若造が継ぎ、次の大公になるか……」
「ヴィンセント様が次の大公!」
まぁ、それは……ユッカナウの特集が楽しみだわ!
「金の公子が継げば、イスキアは必ず大公妃にカルドンヌを強硬に押してくるだろう。お前、今からでもいいから、カルゾ公邸に夜這いにいって子種の一つや二つ何とかしてくるのだ」
自分の娘になんていうことをいうんだ、このクソ親父っ!
「今日も街で思いましたけど、私が何かしようとするとモンスター襲撃並の警戒をされるのですが」
「何を今更。仕方なかろう、それだけのことをやって来たんだから」
何をやってきたかは聞かないことにしよう。外に出れなくなってしまう……。
「では、どうやってカルゾ邸に入れとおっしゃるのですか?衛兵に間違いなく止められますよ。賊のように忍び込めと?」
「そんなもの、いつものお前なら正面強硬突破だろうが」
「……」
正面強硬突破って、そんなことしたら両家間で問題にならないのかしら。そして、そんな嫁を一体誰が迎えると思うのよ?
「あぁ、そうだな、まともなことを言うようになったではないか。知恵熱のおかげか、確かに今までのお前からは考えられない言動だ。……明日、これなら会議でちゃんとじっと座っていられそうだな?」
はい?
幼い子どもじゃないんですから。座れますよ。
「大公宮では暴れたり、むやみに部屋に男を引っ張りこんだり、警備の騎士を襲ってはならんぞ」
なんだ、この注意事項。
他にも細々と、食べ物を床に落とすな、会議の席で大声で笑うな、寝転がるな等々の注意をしてからゲンメ公は自分の寝室に引き揚げていった。
これは学園を卒業して、もう成人しようという娘にする注意だろうか。お嬢様か、公女さまか何だか知らないけど、親としてどれだけ躾ができていないんだろう。
ミスターユッカに渇をいれてもらいたいわ。
いくら母親を亡くして不憫だからといって、そこまで自由に野放しにしたら、マルサネだってそりゃあ人になれずに野猿にもなるわよ。
親として許せん!
と怒れてしまったら、興奮して眠気が醒めてしまって…。
身体が十代だから体力余ってるのよね。オールナイトで遊んでもなんとかなった年頃だっけ。適当に身体を動かしたら眠くなるかしら。
……散歩でもしてこよう。
もう寝てしまった使用人達を起こさないようにそうっと窓を開けて、庭に出てみた。
夜空を見上げるとなんと、折しも今夜はスーパームーン。
月の光がめちゃくちゃ明るくて、空から月が降ってくるみたい。月が本当に近くに見えるわ。
煌々と月光に照らされながら歩き、庭園の花を愛でれるなんて、なんて贅沢!というシチュエーションを期待していた私は現実に引き戻された。
ゲンメ邸の裏庭は広大なんだけど残念ながら、ちょっとした農村の風景でしたわ
ケチな当主の方針で、防犯のための外溝部分すらも食べられる樹木や野菜類がぎっしりと植えられ、なんと結構な広さの田や麦畑まであるのよ。
まぁ、背後の山から湧き水を汲み出してる水車が風情があるといえば、そうかもしれない。
土と肥料の匂いがむせかえり、期待していた薔薇や花の香りは一切なし。風が強いと近所から鶏糞臭で苦情が来そうな感じ。
まぁ、堅実で良いといえば良いんだけど。猿の置物が鳥よけの目玉と一緒に置かれていて、夜に散歩なんかしちゃったから、目玉が畦道から月光に照されて、ピカピカしちゃって。ぎょっとする感じ?
まぁ、外敵に襲われた時に自給自足できるし、そこら辺のコソ泥はビビって入ってこないから利点もあるんだろうけどねぇ。
柑橘系の樹木が唯一、安らげるスポットかしら。
散歩というよりも畑の見回りを終えたところで、庭の隅でおそらく農具や肥料が置いてあるとおぼしき丸太の作業小屋を発見した。
うちの使用人、これじゃあ農業従事者みたいよね…、と思いながら農具は何を使ってるのかしら?というちょっとした好奇心で私、小屋を覗いたの。
「……っ!!」
小屋の土間になっているところに、後ろ手に縛られた人らしき姿を私は見つけてしまった。
こんな夜の散歩で、私一人。
どうしたらいいのぉぉ~?!
ルーチェは疲れきった様子で使用人棟に下がっていった。
はぁ、今日は確かに疲れたわ。
慣れないパーティーに出たり、イベントやカフェに行ったり。
なかなか、充実はしてたけど盛りだくさん過ぎ。
あー、何か喉渇いちゃった。
ルーチェも疲れただろうから、呼んで起こしちゃ可哀想ね。
よっこらしょ、と。
自分で調理場まで取りに行きましょ。
こんな遅い時間に一人で屋敷を歩き回るのはちょっとした冒険気分だわ。
えっと、キッチンはこっちだったわね。
あら、灯りがついてる。
「マルサネ、こんな時間にどうしたのだ?」
げ、狸オヤジ……。
珍しい。彼が日中何をしているか良くわからないんだけど、どうやらここの居住スペースではなくて、ゲンメ公邸の執務室の小部屋で殆ど過ごしているため、私達父娘は滅多に顔を合わすことがない。
ま、私にとってはその方がありがたいんだけど、一つ屋根の下にいるのに、淋しい親子よね。
「ちょっと喉が渇いて。お父様こそ、どうされたのですか?」
お父様、というフレーズにまたゲンメ公のグリグリ眼が一層見開かれる。
しまった、こらハゲ!で良かったんだった……。
「まだ、良くならないのか?……イヤ良くなったと言うか、いっそこのまま治らない方が普通の娘らしくてよいのか……」
ブツブツ呟く狸オヤジ。
「遅くにお帰りでしたのね。明日、緊急の会議があると学園のパーティーで聞きました。そのことでこんな時間までお出かけでしたの?」
蛇姫とヴィンセント様のやりとりを思い出して、狸オヤジに何気に尋ねる。
……ゴトンッ……!
「大丈夫?」
狸オヤジ、放心状態で手に持っていた麦酒のビンを取り落としてる。
シュワシュワとビンが横倒しになり、中身が殆ど床に零れてしまったようだが、狸オヤジはそれに構う様子はなく固まっていた。
まぁ、手元が滑ったのかしら?
危ないわぁ。割れなくて良かった。
「お前……どうしたのだ?会議って言葉がわかるのか?」
「はぁあ?」
「今まで、会議なんて全く興味もなければ理解もしなかったではないか……頭を打った時に熱でも出たのか?」
しまった。マルサネったら公女なのに脳ミソ猿だったわ。
「私もお医者様に聞いたところによると、『知恵熱』というものらしいですわ。突然、こうパッといろんなことがわかったりするものらしいですの。会議は蛇姫が今日お話をされていて大変そうだったので、何のことかと思いまして」
「……知恵熱、だと?まぁ、お前は今まで熱なんか一回も出したことなかったからなぁ。しかし、凄いな、知恵熱いうものは。あと百回ぐらい出したらどうだ?」
「自分から出せるならそういたしますわ」
出せるか、百回も!
「明日は、そうだな……今のお前なら大丈夫かもしれない。一緒に来てみるか?大公宮。イスキアは今回は蛇姫も来るだろう」
「蛇姫も?」
「詳細はわからんが、大公とカルゾ公が急病のため、緊急に召集がかかった。順当ならカルゾをあの若造が継ぎ、次の大公になるか……」
「ヴィンセント様が次の大公!」
まぁ、それは……ユッカナウの特集が楽しみだわ!
「金の公子が継げば、イスキアは必ず大公妃にカルドンヌを強硬に押してくるだろう。お前、今からでもいいから、カルゾ公邸に夜這いにいって子種の一つや二つ何とかしてくるのだ」
自分の娘になんていうことをいうんだ、このクソ親父っ!
「今日も街で思いましたけど、私が何かしようとするとモンスター襲撃並の警戒をされるのですが」
「何を今更。仕方なかろう、それだけのことをやって来たんだから」
何をやってきたかは聞かないことにしよう。外に出れなくなってしまう……。
「では、どうやってカルゾ邸に入れとおっしゃるのですか?衛兵に間違いなく止められますよ。賊のように忍び込めと?」
「そんなもの、いつものお前なら正面強硬突破だろうが」
「……」
正面強硬突破って、そんなことしたら両家間で問題にならないのかしら。そして、そんな嫁を一体誰が迎えると思うのよ?
「あぁ、そうだな、まともなことを言うようになったではないか。知恵熱のおかげか、確かに今までのお前からは考えられない言動だ。……明日、これなら会議でちゃんとじっと座っていられそうだな?」
はい?
幼い子どもじゃないんですから。座れますよ。
「大公宮では暴れたり、むやみに部屋に男を引っ張りこんだり、警備の騎士を襲ってはならんぞ」
なんだ、この注意事項。
他にも細々と、食べ物を床に落とすな、会議の席で大声で笑うな、寝転がるな等々の注意をしてからゲンメ公は自分の寝室に引き揚げていった。
これは学園を卒業して、もう成人しようという娘にする注意だろうか。お嬢様か、公女さまか何だか知らないけど、親としてどれだけ躾ができていないんだろう。
ミスターユッカに渇をいれてもらいたいわ。
いくら母親を亡くして不憫だからといって、そこまで自由に野放しにしたら、マルサネだってそりゃあ人になれずに野猿にもなるわよ。
親として許せん!
と怒れてしまったら、興奮して眠気が醒めてしまって…。
身体が十代だから体力余ってるのよね。オールナイトで遊んでもなんとかなった年頃だっけ。適当に身体を動かしたら眠くなるかしら。
……散歩でもしてこよう。
もう寝てしまった使用人達を起こさないようにそうっと窓を開けて、庭に出てみた。
夜空を見上げるとなんと、折しも今夜はスーパームーン。
月の光がめちゃくちゃ明るくて、空から月が降ってくるみたい。月が本当に近くに見えるわ。
煌々と月光に照らされながら歩き、庭園の花を愛でれるなんて、なんて贅沢!というシチュエーションを期待していた私は現実に引き戻された。
ゲンメ邸の裏庭は広大なんだけど残念ながら、ちょっとした農村の風景でしたわ
ケチな当主の方針で、防犯のための外溝部分すらも食べられる樹木や野菜類がぎっしりと植えられ、なんと結構な広さの田や麦畑まであるのよ。
まぁ、背後の山から湧き水を汲み出してる水車が風情があるといえば、そうかもしれない。
土と肥料の匂いがむせかえり、期待していた薔薇や花の香りは一切なし。風が強いと近所から鶏糞臭で苦情が来そうな感じ。
まぁ、堅実で良いといえば良いんだけど。猿の置物が鳥よけの目玉と一緒に置かれていて、夜に散歩なんかしちゃったから、目玉が畦道から月光に照されて、ピカピカしちゃって。ぎょっとする感じ?
まぁ、外敵に襲われた時に自給自足できるし、そこら辺のコソ泥はビビって入ってこないから利点もあるんだろうけどねぇ。
柑橘系の樹木が唯一、安らげるスポットかしら。
散歩というよりも畑の見回りを終えたところで、庭の隅でおそらく農具や肥料が置いてあるとおぼしき丸太の作業小屋を発見した。
うちの使用人、これじゃあ農業従事者みたいよね…、と思いながら農具は何を使ってるのかしら?というちょっとした好奇心で私、小屋を覗いたの。
「……っ!!」
小屋の土間になっているところに、後ろ手に縛られた人らしき姿を私は見つけてしまった。
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