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~オズワルド殿下視点~
はぁはぁはぁ・・・
何度同じ夢を見ただろう・・・
いつも同じ夢だ。
8歳から見始めた恐ろしい夢。
成長した私がミラを、初恋の相手を虐げる夢・・・
(夢の中のミラは美しい顔はそのままに、無口で貼り付けた微笑みは動かない。
あの舌っ足らずなお喋りで、愛らしい笑顔を振りまいていたミラの面影すらない。)
『お前は私の婚約者だろ!
そんなにデュークがいいのか!』
(夢の中のミラは私の婚約者?
じゃあ、何で私はミラを虐げているんだ?
ミラは唯一大切にしたい女の子だろ?)
(いつも私の隣にいるのは見知らぬ女性。
私はミラという婚約者がいながら、他の女性にうつつを抜かすような男に成長したのか?)
『お前のような可愛げのない女は私に相応しくない!私の前にその愛想の欠けらも無い顔を出すな!』
(隣にいる女性の腰を抱いてそんな言葉を吐いてミラを怒鳴っている私・・・)
『ミラ!お前のような底意地の悪い女は私の婚約者として相応しくない!』
『・・・』
『お前とは婚約破棄する!理由は分かるだろう?私の愛する○○○に対する虐めや嫌がらせの数々を許す訳にはいかない!よって国外追放とする。二度と私の前に姿を見せるな!』
『・・・承知致しました』
(なんだよ!なんだよコレ!
ミラも何で何も言い返さないんだ!
虐めも嫌がらせもしていないだろう?
学院で生徒達から嘲笑われ虐げられ侮辱されていたのはミラの方だろ!)
言い訳の一つもせず会場から出て行くミラが成長した私が見た最後だった。
王子というだけで、国外追放を言い渡した私は父上と兄上にキツい叱責を受け謹慎させられていた。
勿論○○○との婚約は認められる訳もなく・・・。
(当然だ)
夢の中の私は最低の男に成り下がっていた。
それからミラは運んでいた男たちに襲われそうになり汚される前に自害したと聞かされた。
死んだ?私が国外追放などと言い渡したからか?
嘘だ!嘘だ!ミラが死んでしまったなんて・・・
父上と兄上の怒りは凄まじく、私は王族としての地位を失った・・・
市井に放り出された私の前にデュークが現れた。
何も言わなくても理解した。
私はデュークに殺されるんだな。
父上はこうなると分かっていたのだろう。
連れて行かれた先には少し老けた叔父上と叔母上もいた。
二人の顔は甥を見るような目じゃなかった。
ああ、私は二人にも恨まれているんだな。
そこで聞かされたボイル侯爵家でのミラへの虐待。
ミラの遺体に残された古いものから新しいものまで無数の傷跡があったとか・・・
(私が次の婚約者にしようとしていた○○○がミラの義妹で、ボイル侯爵が後妻に迎えた女性の連れ子だと?確かにライラ叔母上が亡くなって喪が開けてすぐボイル侯爵は後妻を迎えたが・・・)
全てを聞かされて親友だと思っていたデュークから与えられる暴力は、ミラが6歳から受けていた虐待と同じだった。
鞭で打たれる度に背中も腹も引き裂かれ、男の私でも痛みに声を抑える事が出来なかったものを、ミラは泣くことも、喚くこともなく無言無表情で受けていたと聞かされた。
それ以上は夢で見ることはなかったが、きっと私は命を落としたのだろう。
ミラがデュークを好きなことは知っていた。
デュークがミラを好きなことも知っていた。
私が我儘を言ってミラを婚約者にしなければ、想い合う2人は幸せになっていたはずだ。
8歳から見始めた夢を何故だかただの夢だと思えず誰にも話せなく、デュークに会うことも大好きだったミラに会うことも怖くて出来なかった。
だから、ミラを私の婚約者に望むことはやめた。
そして、10歳になった時に父上と兄上から信じられない話しを聞かされた。
その内容は王家の者にだけ現れる不思議な力の話しと・・・私が夢で見たものだった。
ずっとそんな気がしていた。
『では急いでミラを助け出さないと!』
『もう2年前に助け出され、今はティタニア公爵家に引き取れられ養女になっている』
2年前・・・私が夢を見るようになった頃だ。
ああ、その時にデューク達はすぐに動いたんだな。
私は夢の中とはいえ、自分の犯した罪が恐ろしくて誰にも言えなかった・・・
なんて私は卑怯で臆病者なのだろう。
今の現実は、ボイル侯爵は子爵へ。
義母は鉱山へ。
義妹は孤児院へ。
デューク達はミラを守るために未来を変えたんだ。
なら、私は二人を陰から見守ろう。
そう心に誓って学院に入学した。
そこでエルザとマリアに出会った。
もうこの二人の思い通りにはさせないから・・・
私が二人を引き受けるから・・・
だからデュークお願いだ。
ミラの笑顔を守ってくれ。
はぁはぁはぁ・・・
何度同じ夢を見ただろう・・・
いつも同じ夢だ。
8歳から見始めた恐ろしい夢。
成長した私がミラを、初恋の相手を虐げる夢・・・
(夢の中のミラは美しい顔はそのままに、無口で貼り付けた微笑みは動かない。
あの舌っ足らずなお喋りで、愛らしい笑顔を振りまいていたミラの面影すらない。)
『お前は私の婚約者だろ!
そんなにデュークがいいのか!』
(夢の中のミラは私の婚約者?
じゃあ、何で私はミラを虐げているんだ?
ミラは唯一大切にしたい女の子だろ?)
(いつも私の隣にいるのは見知らぬ女性。
私はミラという婚約者がいながら、他の女性にうつつを抜かすような男に成長したのか?)
『お前のような可愛げのない女は私に相応しくない!私の前にその愛想の欠けらも無い顔を出すな!』
(隣にいる女性の腰を抱いてそんな言葉を吐いてミラを怒鳴っている私・・・)
『ミラ!お前のような底意地の悪い女は私の婚約者として相応しくない!』
『・・・』
『お前とは婚約破棄する!理由は分かるだろう?私の愛する○○○に対する虐めや嫌がらせの数々を許す訳にはいかない!よって国外追放とする。二度と私の前に姿を見せるな!』
『・・・承知致しました』
(なんだよ!なんだよコレ!
ミラも何で何も言い返さないんだ!
虐めも嫌がらせもしていないだろう?
学院で生徒達から嘲笑われ虐げられ侮辱されていたのはミラの方だろ!)
言い訳の一つもせず会場から出て行くミラが成長した私が見た最後だった。
王子というだけで、国外追放を言い渡した私は父上と兄上にキツい叱責を受け謹慎させられていた。
勿論○○○との婚約は認められる訳もなく・・・。
(当然だ)
夢の中の私は最低の男に成り下がっていた。
それからミラは運んでいた男たちに襲われそうになり汚される前に自害したと聞かされた。
死んだ?私が国外追放などと言い渡したからか?
嘘だ!嘘だ!ミラが死んでしまったなんて・・・
父上と兄上の怒りは凄まじく、私は王族としての地位を失った・・・
市井に放り出された私の前にデュークが現れた。
何も言わなくても理解した。
私はデュークに殺されるんだな。
父上はこうなると分かっていたのだろう。
連れて行かれた先には少し老けた叔父上と叔母上もいた。
二人の顔は甥を見るような目じゃなかった。
ああ、私は二人にも恨まれているんだな。
そこで聞かされたボイル侯爵家でのミラへの虐待。
ミラの遺体に残された古いものから新しいものまで無数の傷跡があったとか・・・
(私が次の婚約者にしようとしていた○○○がミラの義妹で、ボイル侯爵が後妻に迎えた女性の連れ子だと?確かにライラ叔母上が亡くなって喪が開けてすぐボイル侯爵は後妻を迎えたが・・・)
全てを聞かされて親友だと思っていたデュークから与えられる暴力は、ミラが6歳から受けていた虐待と同じだった。
鞭で打たれる度に背中も腹も引き裂かれ、男の私でも痛みに声を抑える事が出来なかったものを、ミラは泣くことも、喚くこともなく無言無表情で受けていたと聞かされた。
それ以上は夢で見ることはなかったが、きっと私は命を落としたのだろう。
ミラがデュークを好きなことは知っていた。
デュークがミラを好きなことも知っていた。
私が我儘を言ってミラを婚約者にしなければ、想い合う2人は幸せになっていたはずだ。
8歳から見始めた夢を何故だかただの夢だと思えず誰にも話せなく、デュークに会うことも大好きだったミラに会うことも怖くて出来なかった。
だから、ミラを私の婚約者に望むことはやめた。
そして、10歳になった時に父上と兄上から信じられない話しを聞かされた。
その内容は王家の者にだけ現れる不思議な力の話しと・・・私が夢で見たものだった。
ずっとそんな気がしていた。
『では急いでミラを助け出さないと!』
『もう2年前に助け出され、今はティタニア公爵家に引き取れられ養女になっている』
2年前・・・私が夢を見るようになった頃だ。
ああ、その時にデューク達はすぐに動いたんだな。
私は夢の中とはいえ、自分の犯した罪が恐ろしくて誰にも言えなかった・・・
なんて私は卑怯で臆病者なのだろう。
今の現実は、ボイル侯爵は子爵へ。
義母は鉱山へ。
義妹は孤児院へ。
デューク達はミラを守るために未来を変えたんだ。
なら、私は二人を陰から見守ろう。
そう心に誓って学院に入学した。
そこでエルザとマリアに出会った。
もうこの二人の思い通りにはさせないから・・・
私が二人を引き受けるから・・・
だからデュークお願いだ。
ミラの笑顔を守ってくれ。
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