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困ったのはミラへの説明だった。
いきなり我が家に連れてこられ、これからここで住むことになったんだ。
まだ7歳とはいえ、賢いミラを騙すのは後々真実を知った時に信用をなくす事になるんじゃないか?
でも、これ以上ミラを傷つけたくない。
で、悩んだ結果、当然だが俺達が未来から過去に戻ったことと、未来でミラに何が起こったのかの二つは秘密に。
ミラがボイル侯爵家で虐待されていると情報が入った為助け出したこと。
義母にも、エルザにも二度と会う事はないこと。
それと、父親とは縁を切ったこと。
そして、我がティタニア公爵家の養女になったことを説明した。
養女の意味が分からなかったのか首を傾げるミラに、母上が「これからわたくしがミラのお母様よ」と、父上も続いて「私がミラのお父様になったんだ。私たちが全力でミラを守るからね」と言った瞬間、うわ~~~~んとミラがここに来て初めて泣いた。
暫く泣き止まないミラを俺たち家族で抱きしめた。
そのまま泣き疲れたミラを予定通り父上たちの寝室に運んで眠らせた。
俺はベッドに入りこれからの事を考える。
まず、ミラはもう安心だ。
ここにはミラを虐げる者はいない。
オズワルドとの婚約もなくなった。
これは俺的に大きい。
義母は鉱山で娼婦。
連れ子のエルザも王都から距離のある孤児院へ・・・もう戻ってくることはないだろう。
あとはマリアだが・・・
今の俺たちに何かする事は出来なかった・・・
何処にいるかも・・・まだ施設に入所していなかったからだ。
たとえ見つけていたとしても、何も起こしていない幼い少女を手にかけるには無理がある。
まあ、これからは俺がミラを守るがな。
過去で学んだ知識はそのまま頭に残っている。
だが、ミラを守るために身に付けた剣術も、体術も使えない・・・今は筋肉もないひ弱な身体だ。
ならまずは身体を作り一から鍛えるか。
この先何があるか分からないからな。
ミラ・・・今日からは俺たちの家で幸せになるんだ。
~リリアン・ティタニア公爵夫人視点~
あの日、冷たくなったミラを抱いて帰ってきた息子は見ていられなかった。
それに、白い身体に残る無数の傷跡と打撲痕。
わたくし達の可愛いミラ。
ミラの母親のライラとは同じ王族だった故に幼い頃に何度か会ったことがあった。
もうすっごく可愛い子。
そのライラの兄であるイーサン第二王子とわたくしが婚約を結んだのも国交を深める為の政略結婚だと思っていた。
わたくしは初めてイーサンを見た時に所謂一目惚れというものをした。
サラサラと流れる銀髪に、このアルフィア王国の王族だけに継がれる紫の神秘的な瞳。
二つ年上で整った優しそうな顔。
ふわりと柔らかい微笑み。
丁寧で優しい言葉遣い。
政略とはいえ、神に感謝したわ。
たとえ婚約を結んでいても、年に一度会えればいいぐらいの関係だった。
手紙は2ヶ月に一度来ればいい方。
だからね、思い切ってアルフィア王国に留学したわ。
イーサンの学生生活を知りたくてね。
あれほど素敵なイーサンなら女を侍らせていてもおかしくないもの。
わたくしが望んで変装して学院に入学したものの、地味過ぎて誰からも相手にされないと思っていた。
それなのに・・・
「あら?貴女リリアン王女ではなくて?」
あっさり初日にライラにバレた・・・
おかしい。完璧な変装だと思ったのに。
「詳しく話してくれるでしょう?」
そのままライラに学院の庭園にあるガゼボに連れて行かれた。
正直にライラの兄であるイーサンを学院での生活を見るために留学してきたなんて言えない。
・・・。
「兄様に会いたかったのでしょう?」
っ!!
それもバレている・・・
「あれ?ライラ?」
!!イーサン・・・
後ろにイーサンがいる・・・どうしよう。
「早速来たんだね。私のお気に入りの場所を教えていて良かったよ」
「ん?リリアンだよね?」
後ろ姿だけでなぜバレる?
恐る恐る振り向けば、イーサンが微笑んでいた。
「・・・イーサン。なんで後ろ姿だけでわたくしだと分かったの?」
「そんなの簡単だよ。私の初恋は君で、君が大好きだからだよ」
この時のわたくしは、生きてきてこんなに顔が赤くなったことはないだろう。
「ライラ、リリアンをココに連れて来てくれてありがとう」
目の前で微笑むライラはイーサンによく似ていた。
イーサンと学院で過ごしたのは一年だったけれど、信頼と愛情を深められた尊い時間だった。
それはライラにも言えた。
同じ歳だけれど本当の妹のように大切な義妹になった。
大人しくて控え目だけど、しっかりとした意思を持ったライラ。
可愛くて、素直で、そんなライラが大好きだった。
わたくし達はそれぞれ結婚もして幸せな日々を過ごしていたはずなのに、ライラが病に侵された。
息を引き取る間際に、ミラを頼むとお願いされた。
なのに!なのに!それなのに!
冷たくなったミラの、あの神秘的な紫の瞳はもう開くことはなかった。
身体に残された無数の傷跡。
復讐を誓ったわ。
ライラにそっくりな、わたくしの可愛い可愛い姪。
いつもニコニコと愛らしい笑顔のミラ。
ライラとわたくし達の大切な娘。
すべての権力を使って調べたわ。
侮蔑や暴力に一人でずっと耐えていたと知った時、奴らの生きる資格を奪う事にした。
こんな残酷なわたくしでも、まだ愛してると言ってくれたイーサン。
彼も同じように復讐を誓った。
わたくし達家族は本当にミラが・・・ライラの残してくれたミラを愛していたの。
元王族の起こした犯罪で、残された者がどれだけの批判を浴びるか、王家の存在自体が無くなるかもしれない、とかも考えたのよ?
それでもミラを追い詰めた人間が多すぎたの。
自分の子供が国王の姪、元王女のライラの娘を虐げていると知っても愚かな行為をする我が子を叱責もせず、何食わぬ顔で社交の場で笑っている、そんな厚顔無恥な貴族など必要ないでしょう?
だから復讐を諦めることは出来なかった・・・
すべてを終えて、心残りはなくなった。
ライラのお墓に家族で報告に行った。
そこで懐かしいライラの声が・・・
『じゃあ、次こそはミラを守ってあげて。お願いよ。』
ええ、ええ、ありがとうライラ。
わたくし達にやり直しのチャンスを与えてくれて。
今度こそ必ずミラを守るから・・・
幸せにするから・・・
☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰☰
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
どうか最後までお付き合い下さいませ(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)
いきなり我が家に連れてこられ、これからここで住むことになったんだ。
まだ7歳とはいえ、賢いミラを騙すのは後々真実を知った時に信用をなくす事になるんじゃないか?
でも、これ以上ミラを傷つけたくない。
で、悩んだ結果、当然だが俺達が未来から過去に戻ったことと、未来でミラに何が起こったのかの二つは秘密に。
ミラがボイル侯爵家で虐待されていると情報が入った為助け出したこと。
義母にも、エルザにも二度と会う事はないこと。
それと、父親とは縁を切ったこと。
そして、我がティタニア公爵家の養女になったことを説明した。
養女の意味が分からなかったのか首を傾げるミラに、母上が「これからわたくしがミラのお母様よ」と、父上も続いて「私がミラのお父様になったんだ。私たちが全力でミラを守るからね」と言った瞬間、うわ~~~~んとミラがここに来て初めて泣いた。
暫く泣き止まないミラを俺たち家族で抱きしめた。
そのまま泣き疲れたミラを予定通り父上たちの寝室に運んで眠らせた。
俺はベッドに入りこれからの事を考える。
まず、ミラはもう安心だ。
ここにはミラを虐げる者はいない。
オズワルドとの婚約もなくなった。
これは俺的に大きい。
義母は鉱山で娼婦。
連れ子のエルザも王都から距離のある孤児院へ・・・もう戻ってくることはないだろう。
あとはマリアだが・・・
今の俺たちに何かする事は出来なかった・・・
何処にいるかも・・・まだ施設に入所していなかったからだ。
たとえ見つけていたとしても、何も起こしていない幼い少女を手にかけるには無理がある。
まあ、これからは俺がミラを守るがな。
過去で学んだ知識はそのまま頭に残っている。
だが、ミラを守るために身に付けた剣術も、体術も使えない・・・今は筋肉もないひ弱な身体だ。
ならまずは身体を作り一から鍛えるか。
この先何があるか分からないからな。
ミラ・・・今日からは俺たちの家で幸せになるんだ。
~リリアン・ティタニア公爵夫人視点~
あの日、冷たくなったミラを抱いて帰ってきた息子は見ていられなかった。
それに、白い身体に残る無数の傷跡と打撲痕。
わたくし達の可愛いミラ。
ミラの母親のライラとは同じ王族だった故に幼い頃に何度か会ったことがあった。
もうすっごく可愛い子。
そのライラの兄であるイーサン第二王子とわたくしが婚約を結んだのも国交を深める為の政略結婚だと思っていた。
わたくしは初めてイーサンを見た時に所謂一目惚れというものをした。
サラサラと流れる銀髪に、このアルフィア王国の王族だけに継がれる紫の神秘的な瞳。
二つ年上で整った優しそうな顔。
ふわりと柔らかい微笑み。
丁寧で優しい言葉遣い。
政略とはいえ、神に感謝したわ。
たとえ婚約を結んでいても、年に一度会えればいいぐらいの関係だった。
手紙は2ヶ月に一度来ればいい方。
だからね、思い切ってアルフィア王国に留学したわ。
イーサンの学生生活を知りたくてね。
あれほど素敵なイーサンなら女を侍らせていてもおかしくないもの。
わたくしが望んで変装して学院に入学したものの、地味過ぎて誰からも相手にされないと思っていた。
それなのに・・・
「あら?貴女リリアン王女ではなくて?」
あっさり初日にライラにバレた・・・
おかしい。完璧な変装だと思ったのに。
「詳しく話してくれるでしょう?」
そのままライラに学院の庭園にあるガゼボに連れて行かれた。
正直にライラの兄であるイーサンを学院での生活を見るために留学してきたなんて言えない。
・・・。
「兄様に会いたかったのでしょう?」
っ!!
それもバレている・・・
「あれ?ライラ?」
!!イーサン・・・
後ろにイーサンがいる・・・どうしよう。
「早速来たんだね。私のお気に入りの場所を教えていて良かったよ」
「ん?リリアンだよね?」
後ろ姿だけでなぜバレる?
恐る恐る振り向けば、イーサンが微笑んでいた。
「・・・イーサン。なんで後ろ姿だけでわたくしだと分かったの?」
「そんなの簡単だよ。私の初恋は君で、君が大好きだからだよ」
この時のわたくしは、生きてきてこんなに顔が赤くなったことはないだろう。
「ライラ、リリアンをココに連れて来てくれてありがとう」
目の前で微笑むライラはイーサンによく似ていた。
イーサンと学院で過ごしたのは一年だったけれど、信頼と愛情を深められた尊い時間だった。
それはライラにも言えた。
同じ歳だけれど本当の妹のように大切な義妹になった。
大人しくて控え目だけど、しっかりとした意思を持ったライラ。
可愛くて、素直で、そんなライラが大好きだった。
わたくし達はそれぞれ結婚もして幸せな日々を過ごしていたはずなのに、ライラが病に侵された。
息を引き取る間際に、ミラを頼むとお願いされた。
なのに!なのに!それなのに!
冷たくなったミラの、あの神秘的な紫の瞳はもう開くことはなかった。
身体に残された無数の傷跡。
復讐を誓ったわ。
ライラにそっくりな、わたくしの可愛い可愛い姪。
いつもニコニコと愛らしい笑顔のミラ。
ライラとわたくし達の大切な娘。
すべての権力を使って調べたわ。
侮蔑や暴力に一人でずっと耐えていたと知った時、奴らの生きる資格を奪う事にした。
こんな残酷なわたくしでも、まだ愛してると言ってくれたイーサン。
彼も同じように復讐を誓った。
わたくし達家族は本当にミラが・・・ライラの残してくれたミラを愛していたの。
元王族の起こした犯罪で、残された者がどれだけの批判を浴びるか、王家の存在自体が無くなるかもしれない、とかも考えたのよ?
それでもミラを追い詰めた人間が多すぎたの。
自分の子供が国王の姪、元王女のライラの娘を虐げていると知っても愚かな行為をする我が子を叱責もせず、何食わぬ顔で社交の場で笑っている、そんな厚顔無恥な貴族など必要ないでしょう?
だから復讐を諦めることは出来なかった・・・
すべてを終えて、心残りはなくなった。
ライラのお墓に家族で報告に行った。
そこで懐かしいライラの声が・・・
『じゃあ、次こそはミラを守ってあげて。お願いよ。』
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わたくし達にやり直しのチャンスを与えてくれて。
今度こそ必ずミラを守るから・・・
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