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え!
ミラの墓にいたはずが・・・
俺は夢を見ていたのか?
いや、夢じゃない。
『じゃあ、次こそはミラを守ってあげて。お願いよ。』
あれは間違いなくライラ叔母上の声だった。
飛び起きた俺は異変に気づいた。
この部屋に見覚えはあるが、幼い頃の部屋だ。
それに手が小さい。
まさか、過去に戻ったのか?
今ならミラを助けることができるのか?
俺は急いで父上と母上の寝室に向かった。
ノックも忘れて扉を開いた。
「父上!母上!」
父上と母上は身支度をしていた。
「デューク、お前も戻ったか?」
「・・・はい!」
「なら早く支度しろ。ミラを迎えに行く」
「すぐに支度してきます」
ああ、神様ありがとうございます。
ライラ叔母上ありがとうございます。
今度こそ、必ず、必ずミラを守ります。
俺たちは早朝だが、ウチの騎士達も連れてボイル侯爵家に向かった。
馬車の中で父上が俺の今の歳を教えてくれた。
8歳だ。じゃあミラは7歳。
もう既にミラはあの小屋に・・・それに暴力も受けているはずだ。
早く!早く!ミラの元に!
ボイル侯爵家に先触れもなく突撃し、出迎えて驚く使用人を無視して邸に飛び込んだ。
ミラの部屋は分かっている。
無事ていてくれ!
あぁぁぁぁミラ・・・ミラ!ミラ!
小さなミラが、小さく丸まって薄い毛布にくるまって眠っている。
手を握った・・・温かい。生きている。
それだけで涙が溢れた。
「う、う~ん、リュー?」
相変わらず舌っ足らずだな。デュークだよ。
小さな手で目を擦るミラ。
「ミラ!」
力一杯ミラを抱きしめた。
俺の上から母上と父上も抱きしめて・・・泣いている。
「・・・どうしたの?あれ?おじ様とおば様?」
まだ夢現なのか、きょとんとしている。
・・・可愛い。
ここから連れ出す。
もうここには置いておけない。
「父上!」
「分かっている。あとは任せろ」
これだけ騒いでも起きてくる気配もない侯爵と義母とエルザも、こんな幼いミラの状況を見て見ぬふりをしていた使用人たちも騎士たちが捕らえた。
ここからは早かった。
まずはミラを医者に診せた。
医者は身体中の痣を虐待と診断し、診断書も書いてくれた。
そのままウチに連れて帰り、何日も風呂にも入れてもらえてなかったミラを母上の侍女に丁寧に入れてもらった。
小さなミラの身体中にある痣を見て涙ぐむ侍女が普通なんだ。
あの家の使用人たちがおかしいんだ。
「お風呂って気持ちいいんだね」
ぽつりと零したミラの言葉にその場の皆んなが泣き出してしまった。
ライラ叔母上に連れられて何度も我が家に遊びに来ていたミラを知っている侍女たちだもんな。分かるよ。
その間に俺の隣りの空き部屋をミラ仕様に母上が業者を呼んで模様替えを最短で頼んだ。
整うのは2日後。
それまでは父上と母上の寝室で一緒に寝るそうだ。
朝食は母上と俺、ミラが席に着いた。
用意された食事に目を輝かせるミラ。
「温かいね。美味しいね」
一口食べるごとにミラが笑顔で言うから・・・
お前は何回俺たちを泣かせるんだ。
腹一杯になったミラは、こっくり、こっくりと船を漕ぎ出した。
体の小さくなった俺ではミラを運ぶことも出来ない。
仕方なく母上に任せた。
「ミラ・・・」
眠るミラの髪を撫でながら母上はまた泣いていた。
その頃、陛下にもミラの状況を父上が報告。
捕らえた使用人からの証言で虐待は日常的に行われていたと明らかになった。
処罰が決まるのも早かった。
使用人たち全員犯罪者が送られる鉱山で過酷な強制労働。無期限だ。
ミラに体罰を与えていた家庭教師も同じ処罰だ。
義母はその鉱山で犯罪歴のある者たち相手に慰みものに。ただの娼婦になるよりもキツいだろうな。
まっ、元の職業と似たようななものだ。すぐに慣れるだろう。
エルザは王都から離れた孤児院に送られた。
まだ何もしていないエルザにとっては、突然、贅沢な生活から質素な生活になるんだ。そこで性格を矯正されろ!
そして、ボイル侯爵。
実娘への虐待を見て見ぬふりをしていた事は育児放棄とみなし同罪。
後妻とはいえ妻が犯罪を犯したことで子爵位まで爵位を落とされ、領地の3分の2を没収。
ボイル子爵はそれを告げられても顔色一つ変えなかったそうだ。気味の悪い男だ。
そして、ミラの引き取り先で陛下と父上の兄弟喧嘩が勃発。
両者ともライラ叔母上の忘れ形見であるミラを引き取りたいとどちら譲らず、父上が過去に戻る前の出来事を話したそうだ。
普通なら虚偽だと疑われてもおかしくは無い話しだが、王家には不思議な力を持つ者が過去にも何人もいたそうで、あっさりと父上の話しを受け入れてくれたそうだ。
ただ、オズワルドのミラにした国外追放や、それまでの仕打ちに頭を垂れ、オズワルドとミラの婚約も諦めてもらうことに・・・。
これで未来が変わる。
あとは・・・マリアだ。
ミラの墓にいたはずが・・・
俺は夢を見ていたのか?
いや、夢じゃない。
『じゃあ、次こそはミラを守ってあげて。お願いよ。』
あれは間違いなくライラ叔母上の声だった。
飛び起きた俺は異変に気づいた。
この部屋に見覚えはあるが、幼い頃の部屋だ。
それに手が小さい。
まさか、過去に戻ったのか?
今ならミラを助けることができるのか?
俺は急いで父上と母上の寝室に向かった。
ノックも忘れて扉を開いた。
「父上!母上!」
父上と母上は身支度をしていた。
「デューク、お前も戻ったか?」
「・・・はい!」
「なら早く支度しろ。ミラを迎えに行く」
「すぐに支度してきます」
ああ、神様ありがとうございます。
ライラ叔母上ありがとうございます。
今度こそ、必ず、必ずミラを守ります。
俺たちは早朝だが、ウチの騎士達も連れてボイル侯爵家に向かった。
馬車の中で父上が俺の今の歳を教えてくれた。
8歳だ。じゃあミラは7歳。
もう既にミラはあの小屋に・・・それに暴力も受けているはずだ。
早く!早く!ミラの元に!
ボイル侯爵家に先触れもなく突撃し、出迎えて驚く使用人を無視して邸に飛び込んだ。
ミラの部屋は分かっている。
無事ていてくれ!
あぁぁぁぁミラ・・・ミラ!ミラ!
小さなミラが、小さく丸まって薄い毛布にくるまって眠っている。
手を握った・・・温かい。生きている。
それだけで涙が溢れた。
「う、う~ん、リュー?」
相変わらず舌っ足らずだな。デュークだよ。
小さな手で目を擦るミラ。
「ミラ!」
力一杯ミラを抱きしめた。
俺の上から母上と父上も抱きしめて・・・泣いている。
「・・・どうしたの?あれ?おじ様とおば様?」
まだ夢現なのか、きょとんとしている。
・・・可愛い。
ここから連れ出す。
もうここには置いておけない。
「父上!」
「分かっている。あとは任せろ」
これだけ騒いでも起きてくる気配もない侯爵と義母とエルザも、こんな幼いミラの状況を見て見ぬふりをしていた使用人たちも騎士たちが捕らえた。
ここからは早かった。
まずはミラを医者に診せた。
医者は身体中の痣を虐待と診断し、診断書も書いてくれた。
そのままウチに連れて帰り、何日も風呂にも入れてもらえてなかったミラを母上の侍女に丁寧に入れてもらった。
小さなミラの身体中にある痣を見て涙ぐむ侍女が普通なんだ。
あの家の使用人たちがおかしいんだ。
「お風呂って気持ちいいんだね」
ぽつりと零したミラの言葉にその場の皆んなが泣き出してしまった。
ライラ叔母上に連れられて何度も我が家に遊びに来ていたミラを知っている侍女たちだもんな。分かるよ。
その間に俺の隣りの空き部屋をミラ仕様に母上が業者を呼んで模様替えを最短で頼んだ。
整うのは2日後。
それまでは父上と母上の寝室で一緒に寝るそうだ。
朝食は母上と俺、ミラが席に着いた。
用意された食事に目を輝かせるミラ。
「温かいね。美味しいね」
一口食べるごとにミラが笑顔で言うから・・・
お前は何回俺たちを泣かせるんだ。
腹一杯になったミラは、こっくり、こっくりと船を漕ぎ出した。
体の小さくなった俺ではミラを運ぶことも出来ない。
仕方なく母上に任せた。
「ミラ・・・」
眠るミラの髪を撫でながら母上はまた泣いていた。
その頃、陛下にもミラの状況を父上が報告。
捕らえた使用人からの証言で虐待は日常的に行われていたと明らかになった。
処罰が決まるのも早かった。
使用人たち全員犯罪者が送られる鉱山で過酷な強制労働。無期限だ。
ミラに体罰を与えていた家庭教師も同じ処罰だ。
義母はその鉱山で犯罪歴のある者たち相手に慰みものに。ただの娼婦になるよりもキツいだろうな。
まっ、元の職業と似たようななものだ。すぐに慣れるだろう。
エルザは王都から離れた孤児院に送られた。
まだ何もしていないエルザにとっては、突然、贅沢な生活から質素な生活になるんだ。そこで性格を矯正されろ!
そして、ボイル侯爵。
実娘への虐待を見て見ぬふりをしていた事は育児放棄とみなし同罪。
後妻とはいえ妻が犯罪を犯したことで子爵位まで爵位を落とされ、領地の3分の2を没収。
ボイル子爵はそれを告げられても顔色一つ変えなかったそうだ。気味の悪い男だ。
そして、ミラの引き取り先で陛下と父上の兄弟喧嘩が勃発。
両者ともライラ叔母上の忘れ形見であるミラを引き取りたいとどちら譲らず、父上が過去に戻る前の出来事を話したそうだ。
普通なら虚偽だと疑われてもおかしくは無い話しだが、王家には不思議な力を持つ者が過去にも何人もいたそうで、あっさりと父上の話しを受け入れてくれたそうだ。
ただ、オズワルドのミラにした国外追放や、それまでの仕打ちに頭を垂れ、オズワルドとミラの婚約も諦めてもらうことに・・・。
これで未来が変わる。
あとは・・・マリアだ。
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