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オズワルドの父親は陛下。
俺の父親は陛下の弟。
ミラの母親は陛下の妹。
俺とオズワルドとミラは従兄弟というやつだ。
俺とオズワルドは同じ歳でミラが1つ年下だ。
比較的、俺とミラは母親同士が親友だった事もあり会う機会も多く、ミラに特別な思いを向けていた俺に、いま思えばオズワルドは嫉妬していた気がする。
それでも、歳を重ねるごとに俺とオズワルドは親友とも呼べる友となっていた。
隣国の留学から帰国後はオズワルドの補佐につく予定だった。
同じ従兄弟なのに、ミラが素直な感情を向けるのは俺と第一王子であるカイトだけなのが面白くなかったのだろう。
第一王子のカイトは6つも離れているせいか俺とオズワルドをよく揶揄っていた。
反対にミラを実の妹のように可愛がっていた。
カイトはミラを抱き上げては『ミラ可愛い!』『ミラ私の妹にならないかい?』などと頬擦りしながらよく言っていた。
俺とミラとカイトは王家の色だと言われる紫の瞳だ。
オズワルドだけは王妃と同じ緑の瞳だ。
その事も嫉妬する原因でもあったのだろう。
髪の色はミラはライラ叔母上と同じ金髪だが、俺たちは銀髪だ。
ミラが学院に入学してからを調べた。
オズワルドは婚約者であるミラを気に掛けるどころか、目に入るだけで怒鳴る事もあったという。
当然、他の生徒たちもミラとオズワルドが婚約関係であることは知っていて、オズワルドに相手にされないミラは侮蔑してもいい存在に・・・
ミラが学院に通った二年間で誰一人としてミラに心を砕いてくれる者はいなかったそうだ。
いつも一人で食堂の隅で昼食を食べる姿。
天気のいい日は、人気の無い庭園で昼食を食べていたという目撃情報もあった。
約10年間。
10年もの長い間、ひとりぼっちだったのか・・・
母上は耐えられなくなったのだろう。父上にしがみついて泣いている。その父上も必死に耐えていた。
ミラが誰からも存在を認められずひっそりと過ごしていた頃、オズワルドの隣にはエルザがいたそうだ。
学院でも言葉を交わす友人も教師もいない。
ただ席に座って存在を消されたまま受ける授業。
それなのに広がる噂。
ミラが義妹を虐げている。
いつも暴力を振るっている。
噴水に突き飛ばした。
階段から突き落とした。
あげればキリがない。
全部エルザやエルザの取り巻きがミラにした事だ。
その裏にいたのがマリア伯爵令嬢だと調べがついた。
マリアは伯爵家に引き取られるまで、魔力はあるが親のいない子供たちが集められる施設で育った。
所謂、孤児という者だ。
そのマリアがエルザにアドバイスという名の進言をしだしてから、オズワルドはエルザを気に掛けるようになり、さらにエルザがミラにされたと泣きながら訴えれば、それを疑いもせず信じるようになり、最後にはミラよりもエルザとの婚約を望むように誘導していた事が分かった。
そのマリアの目的が最初は分からなかった。
それだけの手腕があればエルザにアドバイスなどせずに自分がオズワルドと結ばれ王子妃になる事も出来たかもしれないのに・・・と。
エルザだって、今でこそボイル侯爵令嬢と名乗ってはいるが、元娼婦の母親から生まれた誰の子かも分からない元は平民だ。
マリアとは似たような立場だが、プライドだけは高いエルザが孤児のマリアを傍に置くだろうか?
俺たちは施設からマリアの情報を手に入れた。
まあそれには脅しや大金が動いたと想像している。
今は昔ほど魔力はあっても魔法を使える人間は、僅かな人数だけになった。
その分科学というものが発展し、便利な物が出回り、平民の生活水準も上がったと言われている。
マリアは魔力を声に乗せて人を操る能力を持っていることが分かった。
マリアには大勢の人を操るだけの魔力は無く、人格を変えるほどの能力ではないそうだ。
ただ、思い込みの激しい者や、人に流されやすい性格の者には少し効果が上がる程度のものだと、施設関係者は言う。
それならエルザやオズワルドには効いただろう。
王子であるオズワルドが婚約者のミラを蔑んでいたこと。
高位貴族である侯爵家の令嬢エルザがミラに虐げられていると嘘を言えば・・・。
あとは勝手に生徒たちは動くだろう。
ミラは退屈な貴族の子息令嬢の鬱憤を晴らすターゲットになった。
許せない・・・。
ミラの尊厳を踏みにじって、暴力を振るっていた義母とエルザ。
守るべきの婚約者のミラを侮蔑し、浮気までしたオズワルドも。
何もしていないミラを陥れたマリアも。
絶対に許さない。
だから俺たちは復讐したんだ。
泣き叫んでも、許しを乞うても、止めなかった。
すべて片付けたあとミラの墓に報告した。
復讐したことに後悔はない。
俺たちのした事は、結局は人殺しだ。
罪に問われることも承知の上だ。
ただ唯一後悔するのなら・・・
ミラの傍で気付いてあげたかった。
助け出してあげたかった。
守ってあげたかった。
「ミラごめんな。やり直せるなら絶対にお前を守ってやれるのに・・・幸せにしてやるのに」
『じゃあ、次こそはミラを守ってあげて。お願いよ。』
え?
懐かしいライラ叔母上の声を聞いた気がした・・・
俺の父親は陛下の弟。
ミラの母親は陛下の妹。
俺とオズワルドとミラは従兄弟というやつだ。
俺とオズワルドは同じ歳でミラが1つ年下だ。
比較的、俺とミラは母親同士が親友だった事もあり会う機会も多く、ミラに特別な思いを向けていた俺に、いま思えばオズワルドは嫉妬していた気がする。
それでも、歳を重ねるごとに俺とオズワルドは親友とも呼べる友となっていた。
隣国の留学から帰国後はオズワルドの補佐につく予定だった。
同じ従兄弟なのに、ミラが素直な感情を向けるのは俺と第一王子であるカイトだけなのが面白くなかったのだろう。
第一王子のカイトは6つも離れているせいか俺とオズワルドをよく揶揄っていた。
反対にミラを実の妹のように可愛がっていた。
カイトはミラを抱き上げては『ミラ可愛い!』『ミラ私の妹にならないかい?』などと頬擦りしながらよく言っていた。
俺とミラとカイトは王家の色だと言われる紫の瞳だ。
オズワルドだけは王妃と同じ緑の瞳だ。
その事も嫉妬する原因でもあったのだろう。
髪の色はミラはライラ叔母上と同じ金髪だが、俺たちは銀髪だ。
ミラが学院に入学してからを調べた。
オズワルドは婚約者であるミラを気に掛けるどころか、目に入るだけで怒鳴る事もあったという。
当然、他の生徒たちもミラとオズワルドが婚約関係であることは知っていて、オズワルドに相手にされないミラは侮蔑してもいい存在に・・・
ミラが学院に通った二年間で誰一人としてミラに心を砕いてくれる者はいなかったそうだ。
いつも一人で食堂の隅で昼食を食べる姿。
天気のいい日は、人気の無い庭園で昼食を食べていたという目撃情報もあった。
約10年間。
10年もの長い間、ひとりぼっちだったのか・・・
母上は耐えられなくなったのだろう。父上にしがみついて泣いている。その父上も必死に耐えていた。
ミラが誰からも存在を認められずひっそりと過ごしていた頃、オズワルドの隣にはエルザがいたそうだ。
学院でも言葉を交わす友人も教師もいない。
ただ席に座って存在を消されたまま受ける授業。
それなのに広がる噂。
ミラが義妹を虐げている。
いつも暴力を振るっている。
噴水に突き飛ばした。
階段から突き落とした。
あげればキリがない。
全部エルザやエルザの取り巻きがミラにした事だ。
その裏にいたのがマリア伯爵令嬢だと調べがついた。
マリアは伯爵家に引き取られるまで、魔力はあるが親のいない子供たちが集められる施設で育った。
所謂、孤児という者だ。
そのマリアがエルザにアドバイスという名の進言をしだしてから、オズワルドはエルザを気に掛けるようになり、さらにエルザがミラにされたと泣きながら訴えれば、それを疑いもせず信じるようになり、最後にはミラよりもエルザとの婚約を望むように誘導していた事が分かった。
そのマリアの目的が最初は分からなかった。
それだけの手腕があればエルザにアドバイスなどせずに自分がオズワルドと結ばれ王子妃になる事も出来たかもしれないのに・・・と。
エルザだって、今でこそボイル侯爵令嬢と名乗ってはいるが、元娼婦の母親から生まれた誰の子かも分からない元は平民だ。
マリアとは似たような立場だが、プライドだけは高いエルザが孤児のマリアを傍に置くだろうか?
俺たちは施設からマリアの情報を手に入れた。
まあそれには脅しや大金が動いたと想像している。
今は昔ほど魔力はあっても魔法を使える人間は、僅かな人数だけになった。
その分科学というものが発展し、便利な物が出回り、平民の生活水準も上がったと言われている。
マリアは魔力を声に乗せて人を操る能力を持っていることが分かった。
マリアには大勢の人を操るだけの魔力は無く、人格を変えるほどの能力ではないそうだ。
ただ、思い込みの激しい者や、人に流されやすい性格の者には少し効果が上がる程度のものだと、施設関係者は言う。
それならエルザやオズワルドには効いただろう。
王子であるオズワルドが婚約者のミラを蔑んでいたこと。
高位貴族である侯爵家の令嬢エルザがミラに虐げられていると嘘を言えば・・・。
あとは勝手に生徒たちは動くだろう。
ミラは退屈な貴族の子息令嬢の鬱憤を晴らすターゲットになった。
許せない・・・。
ミラの尊厳を踏みにじって、暴力を振るっていた義母とエルザ。
守るべきの婚約者のミラを侮蔑し、浮気までしたオズワルドも。
何もしていないミラを陥れたマリアも。
絶対に許さない。
だから俺たちは復讐したんだ。
泣き叫んでも、許しを乞うても、止めなかった。
すべて片付けたあとミラの墓に報告した。
復讐したことに後悔はない。
俺たちのした事は、結局は人殺しだ。
罪に問われることも承知の上だ。
ただ唯一後悔するのなら・・・
ミラの傍で気付いてあげたかった。
助け出してあげたかった。
守ってあげたかった。
「ミラごめんな。やり直せるなら絶対にお前を守ってやれるのに・・・幸せにしてやるのに」
『じゃあ、次こそはミラを守ってあげて。お願いよ。』
え?
懐かしいライラ叔母上の声を聞いた気がした・・・
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