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思っていたよりも、ミラは適応能力が高かった。

朝、食堂に行ったらダラしない顔の父上と、膝の上にミラを乗せて超ご機嫌な母上。
意味が分からず理由を聞けば納得した。
元々、娘が欲しかった二人。
前回も二人してミラを可愛がっていたもんな。

そんなミラが目を覚ました時、ずっとミラの寝顔を眺めていた両親と目が合うと・・・

「おはようございます。・・・お、お父様、お、お母様」とハニカミながら照れくさそうに言ったそうだ。
そりゃあ、やられるわ。
俺もその場にいなかった事が悔やまれる・・・

「リューク・・・兄様?」

「ミラ、今まで通りリュークでいいんだよ」

ミラに兄様なんて呼ばれたくない!
俺は男として見られたいんだ!

「じゃあリューク。おはよう」

ああ、朝からニッコリ笑顔のミラが可愛い!

もう二度とこの笑顔を失わせるワケにはいかない。
両親も同じ気持ちだろう。









それから数年・・・

俺たちはミラを大切に、大切に、それはもう大切に、愛し、慈しみ、ときに少しだけ厳しく平和な日々を共に過ごしてきた。

ミラは元王女の母上に完璧な淑女へと教育され、頭脳明晰だと言われる父上から英才教育を受け、どこに出しても恥ずかしくない令嬢に育った。

日に日にライラ叔母上に似てくるミラ。

前回、俺たちの知らなかった5歳からの今・・・

今、ミラの身体には傷一つ残っていない、と母上が言こっそり教えてくれた。

あれから我が家には母上の希望で大きな風呂が作られた。
夜会や、領地への視察が無い限り母上はミラと一緒に風呂に入り、横目で身体をチェックしているそうだ。

『真っ白ですべすべの綺麗な身体なのよ~。それに女性らしい曲線にもなってきたわ!』

母よ・・・想像してしまうから止めてくれ。

自慢では無いが、脇目も振らずひたすらミラに想いを寄せていた俺は経験が皆無だ。





そうして穏やかな日々は過ぎ去り・・・

明日、俺とミラは学院に入学する。

一歳年上の俺がミラと同学年になったのは、俺がで入学が遅れたからだ。と、学院長を納得させた。

前回見られなかったミラの制服姿。
いい!
紺のブレザーに白いブラウス。グレーがメインのチェックの膝下スカート。
まるでミラの為に作られたと言っても過言では無いほど似合っている。

絶賛する俺たちに、『もう!褒めすぎ!』と言いながら、もじもじするミラの可愛いことよ。

朝食を済ませ、家族で馬車に乗り込んだ。

俺も初めて通うことになる学院だ。
隣に座るミラは緊張しているのか表情が硬い。

「ミラ、そんなに緊張しなくても俺がずっと隣にいるから大丈夫だぞ」

「うん。デューク・・・ずっと傍にいてね」

当然だろ?

舌っ足らずだった幼い頃のミラのリューク呼びも良かったが、成長しその小さな口からデュークと呼ばれるようになった事にも慣れた。

今日は入学式だけで解散だ。
クラスが分かるのは明日。
その時に教科書などが配布され、学院の案内をされる。
本格的な授業が始まるのは明後日からとなっている。

ま、クラスは成績順になっているから、俺とミラが離れることは無い。

学院に到着し、馬車から降りてまずは周囲を見渡す。
はっきり言って公爵家の紋章が入っている馬車は目立つ。
はぁ、こんな注目された場ではミラを隠すことも出来ないか・・・

「デューク?」

「ああ悪い。さあお手をどうぞお姫様」

俺の手に乗せた手は、白くて細っそりとした長い指。さらにしっとりすべすべだ。
昔はぷにぷにしていた手が可愛かったのにな。

前回も幼い頃は美幼女だったし成長するのが楽しみだとよく両親も言っていた。
実際、冷たくなったミラも十分美しかったが・・・

つくづく思う。
環境と精神面の安定は成長に大切だと。
今のミラは母上に磨き抜かれて身に付けた気品は隠そうにも隠せないだろう。
それに芸術品と見紛うような美少女だ。 
そう、俺のミラは女神の如き美しさに育ったんだ。

ミラが馬車から降りるなり周囲の目はミラに釘付けになった。
それは当然だが・・・前回、お前たちがミラに何をしたのか知っている。


ここからが本番だ。
もう二度とミラに手出しはさせない。

俺だけではない、父上と母上の目にも鋭さが増した。
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