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3章『転生×オメガ=溺愛される』
08
しおりを挟む「い、いえ…そんな事は全く思っておりません、よ…?」
「ふぅん…」
私の答えに不満げな在昌さんだったが、私が手に持っているカラーを見て少しだけ表情を緩めた。
「綺麗なデザインですね」
「うん。一目見て気に入ったんだ」
カラーを手に取り、まじまじと見る。黒色のシンプルなものだ。回りがシルバーで囲われており、首に傷が付かないようにか、縁が柔らかい。どんな材料で出来ているか検討も付かないが、値段が聞くのが恐ろしいくらいに高級に見えるのは私が庶民だからだろうか。
正面にはチェーンが煌めいており、先端には可愛らしい桃色の宝石が付いている。
「その石、これにも付け替える事が出来るんだよ」
そう言って箱の下から取り出した物は――鈴だった。
「猫みたいで可愛いよね」
「そ、そうですね。私はこの宝石の方が好きですよ?」
ははは、と笑いながら在昌さんから鈴を奪い、箱にしまう。…何ですかその不服そうな表情は。
「付けて良いかな」
「はい、お願いします」
自分で付ける事も出来るが、甘える事にした。在昌さんに付けて貰う事に意味がある気がして。
在昌さんに背を向け、髪を掻き上げてうなじを見せる。何だかドキドキしてきた。
「ん…」
冷たい指が私のうなじを撫でる。ピクリと身体を震わせれば唇を落とす在昌さんに胸の高鳴りが増す。
カラーを首に通し、カチャリと金属音がすれば、ひんやりとした感覚が首に広がる。裏地が柔らかい生地で覆われていた為、感触は痛くない。これなら擦れても傷にはならなさそうだ。
「真緒、こっち見て」
言われた通りに身体を在昌さんの方へ向ければ、瞳を輝かせた在昌さんが私を凝視していて。カラー一つ着けただけなのに、彼の所有物になったような気がした。
「可愛い。似合ってる」
「ん、」
ちゅ、ちゅ、と私に口付けをしながら嬉しそうにカラーを撫でる在昌さん。何だか嬉しさが伝わって憤死しそうだ。
「カラーは俺が勝手に選んだから…指輪は二人で選ぼうか」
「!そ、そうですね…」
指輪。結婚指輪の事だ。
在昌さん曰く、カラーだけの夫婦も居るらしいが、在昌さんはお揃いで買いたいらしい。案外ロマンチストだ。まぁ、私も在昌さんとお揃いの物は嬉しいけれど。
*****
「………………」
行動が早すぎる在昌さんは、早速ジュエリーショップに行くと私に告げ、身支度をした私達は在昌さんの運転でジュエリーショップに来ていた。
在昌さんに出逢わなければ絶対に入らない店だ。大丈夫?ドレスコードないよね?と、一人ドキドキしていたら在昌さんに笑われた。
スーツをピシッと着た綺麗な女性が案内してくれたが、ゆっくり見たいと断った在昌さんと店内を回っているんだけれど…いや、値札どこ?
「あ、あの…お値段は……」
「無いねぇ。気にしないで良いよ。気に入ったのを選んで」
いやいや、流石に無理じゃない?見てよこれ、凄く大きな宝石が乗ってるよ?これ選んだらどうするの?選ばないけど。
場違い過ぎる。呼吸して大丈夫?ちょっと息を止めていよう。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。気に入らなかったら他の店に行けば良いしね」
「は、はぁ…」
というか何で慣れてるの?まさか来た事あるのかな?…他の女性と。じゃなければこんなに余裕で立っていないよね。
じぃ、とガラスケースでは無く在昌さんを見ていたら、私の視線に気付いた在昌さんが顔を向け、暫く私を観察した後、にぃと笑みを浮かべた。
「…大丈夫。初めてくるところだから。かぁわいいなぁ、妬いたの?」
「んぐ」
その通りだが、だから何故私の心を読むのか…。
嫉妬した私にご機嫌な在昌さんは鼻歌なんか歌っちゃって。恥ずかしさで居たたまれなくなった私はガラスケースに目を向けた。
「ぁ……」
宝石だらけの指輪の中、一つだけとてもシンプルなデザインの物があった。中央にはカラーと同じ色のピンク色の宝石が埋め込まれていて、とても可愛い。
足を止めて見ていた私に気付いたのか、その指輪を指差し、これが良いの?と在昌さんが言った。
「はい…私、シンプルなデザインが好きなんです」
「うん、だよね。選ぶ服とか見てそうかなって思ってた。俺もコレが良いと思ってたよ」
カラーとお揃いだしね、と言ってうなじを撫でる在昌さん。私の好みを知っていてこのカラーを選んだんだ。嬉しいなぁ。
「お出し致しましょうか?」
店員さんの申し出に頷く在昌さんと私。何故かそのまま店の奥に通された。何故。
豪華な部屋に案内され、お待ちくださいと言って出た店員さんと同時に若い女性がお茶を出してくれる。
礼を言ってお茶に口を付ければ香ばしい香りが鼻腔を擽った。
少しして、店員さんが厳重な箱を持ってきて対面に腰を掛ける。
「お客様、指のサイズを測らせて頂きますね」
「お願いします」
私、在昌さんの順に指のサイズを測る店員さん。紙に何か書き込んでいる。指輪を買うってこんなに大変なのだろうか。
「ありがとうございます…では、此方が先程のものとなっております。」
白い手袋を嵌めた店員さんが箱の中から先程の指輪を取り出す。やっぱり近くで見ても可愛い。互いに指輪を受け取り、指に嵌めれば丁度のサイズだった。
「うん、細すぎないし、太すぎないから丁度良いね。デザインも奇抜じゃないし」
「そうですね、凄く可愛いです」
指輪を嵌めた手をかざし、色々な角度から見る。
「似合ってる、可愛いよ」
「在昌さんも似合ってます」
シンプルなデザインの為、男性の在昌さんの指に違和感なく嵌まっている。ピンク色の宝石だが、男性が嵌めても女性らしさがあまり無い。
「これにします」
「畏まりました、では…」
「真緒、他にもアクセサリー置いてあるから見ておいで」
「え、でも…」
「いいからいいから」
指輪を店員さんに渡した私は何故か在昌さんに追い出されるような形でお店へと戻された。
「…あまり興味無いんだけどなぁ…」
――この在昌さんの行為が私に値段を見せない為だと言う事を私は知らない。そう、知らないで良いのだ。きっと私が指輪の値段を見ていたら目玉が吹き飛ぶような値段なのだから。
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