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1章『転生×オメガ=あほ顔になる』

02※

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……
…うん。夢だよね。

夢なんだよね!?
なのに、どうして在昌さん(仮)の温もりを感じる事が出来るのか。どうして転けて擦りむいたところが痛むのか。

どうしてこんなにも身体が疼くのか。

夢って見ているだけで感覚や味覚は無いって誰かが言ってた。勿論、私も体験がした事がある。

「はぁ…ぁ…んぅ…」

悩ましい声を出している場合では無いよ、私。けど、しょうがない。在昌さん(仮)が触れるところがこそばゆくて、声が出てしまうのだ。

「もう少し、耐えて、ね…っ」

うわぁ…在昌さん(仮)が私を心配してくれている…。尊い…。では無くて。さりげなく匂いを嗅いでいる場合でも無くて。でも、抗えないのだ。誘われるようなこの、匂いに。

私を抱えて街中を颯爽と駆け抜ける在昌さん(仮)は王子様みたいだった。いや、私にとっては高嶺の王子様なんだけど。

在昌さん(仮)は見上げたら首が痛くなる程に高いマンションへと入っていく。指紋認証だろうか、入る前にハイテクな機械に指をかざしていた。

「神崎様、お帰りなさいませ」

エントランスに支配人が居るとか億ションというやつだろうか。凄ーい。

……
………
今、神崎様って言ったよね。オメ蜜の在昌さんも神崎っていう姓なんだよね。しかも億ションに棲んでいるんだ。桃ちゃんと一緒に。

…もう駄目だ。身体は熱いし、頭は重いし、現状が全く把握出来ないし。だから私は考える事を放棄した。

私を抱えたまま、在昌さん(仮)はエレベーターに乗り込み、荒い息を整えている。僅かに聞こえる鼓動がとても早かった。
それもそうだ、あんな距離をぽっちゃり気味な私を抱えながら猛ダッシュしたのだから。

暫くして、チン、と音を立てながらエレベーターは停止する。
よいしょ、と私を抱き直しながら在昌さん(仮)はエレベーターから降り、ぽつんとあるドアに再び手をかざせば錠が開く音がした。

靴を脱ぎ、ツカツカと廊下を進めば、凄く広い部屋に辿り着く。
うわぁ、凄い!何て考えている暇が無い程に、私の身体は悲鳴を上げていた。

「はぁ…ぅ……っ…」

どうにかして欲しかった。この疼く熱を。

「君は……」

在昌さん(仮)は静かに私をソファーに下ろしながら、私の顎をくい、と掴む。

私を見つめる彼は、どこをどう見てもオメ蜜の神崎在昌さんだった。何百回とカバーや挿絵を見た私が間違える訳が無い。
もう、何が何だかわからない。一体私に何が起きているというの。

「薬…抑制剤は、あるのかな」
「……?」

在昌さん(仮)の問いに私は首を傾げる。至って私は健康だ。先日の健康診断で何も引っかからなかった。そんな私が薬なんて持っている訳……って待てよ。抑制剤って…。

「…その、匂い…君、オメガだよね…?」

荒い息が私の頬に掛かる。そんな些細な刺激に私のお腹は更にきゅん、と反応してしまう。
抑制剤。オメガ。聞いた事のある単語だった。…いや、もう駄目だ。頭がごちゃごちゃになって何も考えられない。

「あぅ…っ…も、やだ…助けて……」

か弱い声、だった。
縋るような、媚びるような、声色。

「…知らない男に触られるのは嫌だと思うけど…ごめんね」

在昌さん(仮)…いや、もう在昌さんだよね。在昌さんは私に謝りながらゆっくりと私を押し、ビクビクと反応する私の身体に触れる。

「あ…!」

パジャマの上からお腹を触れられただけなのに、恥ずかしい声を上げてしまった私は咄嗟に手で口を塞いだ。
そんな私に在昌さんは小さく笑いながら、口を塞いだ手を退かす。

「声出した方が、気持ち良いから…」
「ゃう…!」

在昌さんの指が私の小さな胸に触れる。大きく見積もってBカップの胸は痛い程に歓喜していた。

パジャマ越しから、やわやわと揉まれる感覚に私は何度も声を上げた。

「ひぅ…ぁあ…っ!」

恥ずかしさと、快感とで頭が真っ白になっていく。

「可愛い…胸だけでイっちゃうのかな」
「ぁう…い…く?」

イく。勿論知っている。性行為で達する事だ。けれど、経験の無い私にとって未知な感覚だった。

「…経験、無いの?…堪らない匂いなのに。…今まで良く無事で居られたね」
「…?」
「取りあえず、イっておこうか。多少はマシになると思うから」

在昌さんの言う事は難しい。いや、分かっては居るのだけれど、私とは結びつかない。だって、どれも小説の中の設定なのだから。

「ひぁあ!」

ブチッと私のパジャマのボタンを飛ばしながら、前を開けさせ露わになった私の胸の突起にしゃぶり付く在昌さんは獣のようだった。
じゅるじゅると唾液を絡ませながら突起を舌で転がす愛撫は、腰が抜けそうな程気持ち良くて、私はいとも簡単に絶頂へと導かれた。

…早漏すぎやしないだろうか、私。

「はぁ…はぁ……」

行為がこんなにも気持ちが良いだなんて知らなかった。二次元では気持ち良いって連呼していたけれど、所詮は二次元よ…と言っていた自分が恥ずかしい。

「…落ち着いた、かな」

目を瞑りながら余韻に浸っていた私に男性の声が掛かる。
余りにも非現実的な出来事に思考を止めていた私は我に返った。

恐る恐る目を開ければ、在昌さんが笑みを浮かべながら私を見つめている。顔面凶器だ!国宝だ!!
これが表紙なら小躍りしながら舐めるように見ていただろう。
だが、目の前に居る在昌さんは紛れもなく本物で。夢だと思いたかったが、紛れもない現実だった。

今までの無礼を走馬灯のように思い出した私は、勢いよく立ち上がり在昌さんに向かって頭を下げた。



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