俺だけ使えるバグで異世界無双

I.G

文字の大きさ
上 下
9 / 11

9話 ギャルの本心

しおりを挟む
誰か助けてください。
俺は今、殺されかけてます。

「た、助けて......」

清水愛という女に。

「もう一度言ってごらんなさい?
一体誰に転移石を与えたのかしら?」

「三沢......です」

「なあああんで!!!???
何があったらそういう発想になるの!?」

愛が怒ってる理由は、どうやら
俺が無断で三沢に転移石をあげてしまった
かららしい。
愛の作戦では、勝機のない小畑との
戦闘を避けて、三人とも捕まり、
後で愛が針山の転移石を使って逃げだす
ことになってたそうだ。

だから、こんなにも激怒している。

「け、けど......三沢の力なかったここまでたどり着けなかったっぞ?」

現に、ここに来るまでに巡回していた
見回り六人と出くわし、全てを三沢に
蹂躙してもらった。

「貴方は一人で壁抜けでここまで
来れたでしょ!?」

「来れねぇよ。巡回していた奴らを
脅して口を割らしたから愛の居場所も
掴めたんだし」

「だからって! じゃあ私の
転移石はどうなるのよ!?」

俺を庇って転移石を小畑に渡した
カッコいい愛はどこへやら。
まじでぶちギレてる。

「ねぇーそろそろ逃げないと
また敵が来ると思うけど?」

その様子を静観していた三沢が
そう言った。

それに若干苛立ちを覚えつつも、
愛は一つ深呼吸をして、

「はぁ......とりあえず、この手錠と
足かせを外して頂戴」



愛を助け出した俺たちは無事に
外に出ることができた。

だが、それでも愛の機嫌は治らなかった。
よりによって、自分を騙した三沢に
転移石を与えるなんてとずっとグチグチ
言っている。
だが、約束は約束。今さら三沢に
やっぱり転移石を返してくれなんて
言えやしない。

それに元はといえば、俺が愛をギルドに
連れていってしまったのが原因だ。
責任は俺にある。
ならば、愛の今後の人生のためにも、
転移石は取り返さなければならない。

「......分かったよ。
俺が小畑から転移石を取り返してくる」

「は? あんた正気?」

「ついに頭がおかしくなったの?」

二人して辛辣だった。

「だって、それしかないだろ。
丸く納めるのは」

「丸く納めるのであれば、
私たちを罠に嵌めたどっかの
バカメスが責任を取るべきだと
思うけど?」

「......確かに」

自分のことながら、ころころ意志が
変わってしまうのが情けない。
というか、今愛に逆らったらほんとに
殺される気がした。

「ちょ、ちょっと! あんた!」

「いいのか? 裏切ったままで。
ほんとうに一人ボッチに」

「ああ! もう! 分かったっつうの!
返せばいいんでしょ! 返せば!」

そう言って、三沢は胸から転移石を
引きちぎった。

「......悪かったわね......謝るから
嫌いになんないで」

「......ちょっと、何かあったの?
貴方ってそんな人だったかしら?
もっとこう自分のことしか考えてない
クズだったように記憶してるけど」

やめて! また三沢が泣いちゃう!

「別に......」

ほら、泣いちゃった。

一方で愛は転移石を胸に埋め込む。

ようやくいつもの余裕のある愛が
戻ってきた。

「まぁ......貴方のしたことは許されないし、正直、今直ぐにでも殺してあげたいけれど、そんな風に貴方をしたのは小畑なのは
分かっているわ。貴方も裏切られたのよね?」

めちゃくちゃ怖いことを言いながらも、
愛は優しく三沢の頭を撫でる。
DV彼氏みたい......

「成瀬。私もついて行くわ。
やられたままなのは、私嫌いなの」

それは同意見だった。

「よっしゃ! いっちょあのヤンキーを
見返してやろうぜ!」



「いやーさっきのあいつらの
やられっぷりときたら、ほんと
傑作でしたね」

「ほんとほんと!
あの騙されたバカ女の顔も
おもしろかったわ」

「ギャハハハハ!!
言ってやるなよ。もともとあの人
小畑さんの恋人だったらしいし。ね?」

「あんなブス女なんざどうでもいい」

中央ギルド内の様子を壁の中から
窺ってみると、さっそくそんな
話し声が聞こえてきた。

「転移石がないのなら用はねぇよ」

小畑の周りには数人の女性と、
顔の悪そうな男たちが群がっている。
異世界でも教室の中でも、同じような
光景だ。
あいつらは小畑が好きなのではない。
小畑の近くにいれば甘い蜜を
吸えるからいるのだ。

「にしても、小畑の元恋人が連れてきた
あの愛って女、まーじで上玉でしたね。
奴隷商人に売っぱらっちまったんですか?
勿体ねぇ」

「ヤりてぇなら奴隷として買えばいいだろ」

「好きなだけ遊べるぞ。ギャハハハハ!!」

許せねぇ......誰も俺のことを
話題にあげねぇじゃねぇか。

そんなどうでもいいことを考えながら、
作戦の開始を待った。

愛の考えた作戦はこうだった。
まず、三沢が囮になってギルドの中に入り、
小畑たちの注意を引く。
その隙をついて俺が地中から小畑に
接近し、奴の下半身を引きずり込んで
動きを封じる。
そして、変装して既にギルド内に潜入している愛が、針山と同じように小幡を倒す。

「小畑!!!!!!」

三沢の登場にギルドの注目が彼女に
集まった。

「お前......どうやってここに......」

今だ!

俺は地中に潜り、小畑に近づいた。

「そこのフード被ってるやつは愛よ!
小畑を襲うために潜伏してるの!」 

なっ!? このビッチ! また
裏切りやがった!

それに不意をつかれた愛は直ぐに
逃げようとしたが、あっという間に
小畑に捕まった。

「なんで転移石のないお前がそんなに
早く動けるんだ?」

小畑は問答無用で愛の上着を脱がす。

「ハハハ! どういうわけか知らねぇが、
もう一個ゲットだぜ」

小畑は愛の転移石を奪い取った。

「三沢!!! 貴方!!!」

愛は三沢を睨むも、三沢は
不敵な笑みを浮かべて小畑に駆け寄る。

「騙される方が悪いっつぅの。
ねぇ、小畑。うち、あんたの
力になれたでしょ? だから、
側にいさせて。
うち、小畑が好きなの」

「お前はしょうがないやつだな。
二度も俺に捨てられたくせして」

「それくらい好きだってこと。
何度捨てられても、うちは小畑の隣に
戻ってくるわ」

「まぁいい。お前のおかげで、
二個も転移石を手に入れられたんだ。
俺の隣にいることを許してやる」

「やった!」

どうする!? 愛は捕まった。
転移石もない。
俺にはこの壁抜け能力しかないし、
どうやってこの現状を打開する!?

「ほら、出てきなよ成瀬。
じゃないと愛が酷い目にあっちゃうよ?」

こ、このクソザコナメクジビッチめ。
俺のこともばらしやがった。

「あ? 成瀬? あー、あいつか。
あの陰キャが隠れてんのか?」

「そうそう。まじでキモいよあいつ。
この世界でも自分だけ転移石与えられなくて、一人で寂しく行動してたんだって。
マジうける。
ほら、はーやーくー!
愛がどうなってもいいんだ?」

俺は地中から姿を現した。

「で? どうすんだ? 陰キャ。
また俺にやられにきたのか?」

どうする? どうやって小畑を倒す。
この周りにいる取り巻きも、
俺一人じゃ無理だ。

絶対絶命の状況とはまさにこのこと。
俺には何もできやしない。
こいつには勝てない。
なら、今すべきは?
愛は俺のことを助けてくれた。
大事な転移石を与えてまで。
なら、俺は、なけなしのプライドも
捨てて、惨めになるしかないだろ。

愛を助けるために。

俺は膝をついた。
そして、ゆっくりと頭を地につける。

「ギャハハハハ!! だっせ!!
命乞いかよ!!!!」

「男のくせして情けなーい」

「おい、謝るなら裸になれよ。
裸になって、俺のプリンセスを
返してくださいってよ!」

周りの嘲笑が増していく。

そして、小畑も、

「あーあ、ガッカリだ。
お前ってまじで惨めな奴だな。
もういい、殺す」

終わった。
俺にできることは何もなかった。
結局、この世界に来ても、俺は
俺のまま。陰キャは陰キャだったのだ。

そう諦めたときだった。

「惨めなのはあんただよ!!!!!!!」

見上げると三沢が小畑の胸から
転移石を引きちぎっていた。

「なっ!? お前ええええ!!!!」

小畑は胸から吹き出す血など
気にもせずに、三沢に飛びかかる。

もう遅かった。三沢が全ての転移石を
胸に埋め込んだ。

凄まじいスピードで、小畑の腹に三沢の
パンチが炸裂する。

小畑は壁に吹き飛んだ。

それを見ていた周りの奴等が三沢に
襲いかかる。

「愛!! これ!」

三沢は転移石を一つ愛に投げた。
それを愛は受け取り、あっという間に
彼らを蹂躙した。

「お前、裏切ったふりしてたのか」

「敵を騙すにはまずは味方からってね。
転移石を奪うなら、油断してる小畑に
接近するのが一番だし。
どう? うちの演技上手かったでしょ?」

「ああ、まじでお前のこと
大嫌いになってたよ」

「まぁ、私は気づいていたけれど」

「嘘つけ、愛。お前もガチギレしてただろ」

だが、三沢のおかげで助かった。
ほんとに終わりだと諦めていた。

「待てよ三沢!!! お前、俺のことを
捨ててそんなぱっとしない陰キャたちと
つるむ気かよ!」

体から血を吹き出しながら小畑は叫ぶ。

「戻ってこい! 俺にその力をくれれば、
お前を一生隣にいさせてやる」

「黙れよこのヤリチン野郎が! 
あんただけには
言われたくないっつぅの!!!!
二度もうちを捨てやがって!
殺さないでおいてやるから、
さっさとここから失せやがれ!!!!!!」

それにヒイイイイイと
情けない声をあげながら、
小畑はギルドから逃げ出した。

「成瀬」

「ん?」

「あんたとの約束ってあの牢獄から
無事に逃げ出すまでだったけどさ、
もうちょっとだけ一緒にいてもいいかな?」

何かが吹っ切れた様子で、三沢は
こちらの顔を覗いていた。

「え、なんで? 一人ボッチになりたくないからか?」

「ち、ちげーし。ただ、小畑よりかは
あんたたちの方が少しはましかなって
思っただけ」

「正直にボッチになりたくないって言えよ。
つれションしないとトイレに行けないやつか?」

「うっさいぼけ!!!」






しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

あなたが望んだ、ただそれだけ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,328pt お気に入り:6,576

異世界に召喚されたら職業がストレンジャー(異邦”神”)だった件【改訂版】

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:422

異世界転移で残された僕の行き先

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:34

南洋王国冒険綺譚・ジャスミンの島の物語

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,194pt お気に入り:4

クラス転移したところで

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:242pt お気に入り:1

処理中です...