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○なかなか本題に入らないやつ。
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まだ七時。明日早いからって、さすがにまだ寝るには早い。布団にもぐって漫画を読んでいると、知玄が帰ってきた。
「ただいま戻りました、お兄さん」
「おう、お帰り」
知玄は俺に聞いて欲しいことがあるというから、じゃあ先に飯食って風呂入って来なと俺は言った。
三十分後、知玄はさっぱりした姿で戻ってきた。俺が言う前に内鍵を掛けるなんて、聞いて欲しいことってヤツは、お袋に聞かれたらまずいような話なのか? 知玄は俺の横に座り、丸くて大きな目で俺をじっと見てから口を開いた。
「お兄さん」
「なに?」
「えっと、今日大学で……」
だがそこで、電話が掛かってきた。しかも立て続けに二回。真咲と、誓二さん。どっちも大した用じゃねぇ。あーあと思って電話を切り、知玄に向き合ったとき、また電話が鳴った。着メロでなぎさだとわかる。高一の秋に別れて以来、ほとんど音信不通で、向こうからメル変のお知らせが何度か送られてきたくらいだ。今頃電話してくるなんて、何の用事だろう。彼氏と別れたとか、親父さんやお袋さんに何かあったとか?
『もしもし、アキ? 久しぶりぃ』
電話しながら誰もいない所に向かって手を振ってそうな声だ。なぎさにはそういう所がある。
場所を一階の休憩所に移す。なぎさの話はとりとめがなかった。昔の共通のダチが今は何してるとかなんとか、そんな話に相づちを打っていたら三十分くらい経った。
不意になぎさが沈黙した。やっと喋るネタが尽きたか。明日俺は早いからもう寝ると言うタイミングが来たな。
「あのさ」
『あのね』
きれいにカブった。
「先どうぞ」
『うん、あのねアキ。うちね、今度結婚するんだ』
えぇー!? 一瞬頭ん中が真っ白になった。こういう時、何て言うんだったかわからない。言葉に詰まっているうちに、不穏な間は延びていく。そうだ、あれだ。
「お、おぅ。おめでとう」
これだ。
まあなぁ。最近ちらほら、同級生が結婚したって話が耳に入るようになったし。ついになぎさもか。俺は別に平気だけど、親父やお袋がショックを受けるだろう。二人とも、なぎさのことを実の娘のように可愛がってたから。
家と工場の間で、細長い長方形に区切られた星空を見上げ、煙草を吸っていたら、玄関の引き戸がカラカラと開いた。
「お兄さん、こんな所にいた」
「よくここが分かったな」
「匂いで分かりますよ」
なにそれこわい。もう八時半過ぎてますよと知玄は言って、俺がウンコ座りしているすぐ横にしゃがんだ。
「そういえば、さっきの話の続きって?」
「あぁ、別に大したことじゃないです」
そういったきり、知玄は一言も喋らない。俺は根本近くまで灰になった煙草を揉み消し、新しいのを出して火を点けた。
「あのさ」
「はい」
知玄は首を傾げて俺の顔を覗き込んでくる。
「なぎさが結婚するんだって。さっき、電話してきた」
「へぇ」
十二月だって。急だがデキ婚ではないとさ。旦那の誕生日を記念日にするんだと。寒いし年末だがそのぶん費用は安いんだって。ご祝儀っていくら持ってけばいいんだ。服は成人式の時のスーツじゃダメかな。……って俺、何、知玄相手に、こんなことべらべらしゃべってるんだ?
「ただいま戻りました、お兄さん」
「おう、お帰り」
知玄は俺に聞いて欲しいことがあるというから、じゃあ先に飯食って風呂入って来なと俺は言った。
三十分後、知玄はさっぱりした姿で戻ってきた。俺が言う前に内鍵を掛けるなんて、聞いて欲しいことってヤツは、お袋に聞かれたらまずいような話なのか? 知玄は俺の横に座り、丸くて大きな目で俺をじっと見てから口を開いた。
「お兄さん」
「なに?」
「えっと、今日大学で……」
だがそこで、電話が掛かってきた。しかも立て続けに二回。真咲と、誓二さん。どっちも大した用じゃねぇ。あーあと思って電話を切り、知玄に向き合ったとき、また電話が鳴った。着メロでなぎさだとわかる。高一の秋に別れて以来、ほとんど音信不通で、向こうからメル変のお知らせが何度か送られてきたくらいだ。今頃電話してくるなんて、何の用事だろう。彼氏と別れたとか、親父さんやお袋さんに何かあったとか?
『もしもし、アキ? 久しぶりぃ』
電話しながら誰もいない所に向かって手を振ってそうな声だ。なぎさにはそういう所がある。
場所を一階の休憩所に移す。なぎさの話はとりとめがなかった。昔の共通のダチが今は何してるとかなんとか、そんな話に相づちを打っていたら三十分くらい経った。
不意になぎさが沈黙した。やっと喋るネタが尽きたか。明日俺は早いからもう寝ると言うタイミングが来たな。
「あのさ」
『あのね』
きれいにカブった。
「先どうぞ」
『うん、あのねアキ。うちね、今度結婚するんだ』
えぇー!? 一瞬頭ん中が真っ白になった。こういう時、何て言うんだったかわからない。言葉に詰まっているうちに、不穏な間は延びていく。そうだ、あれだ。
「お、おぅ。おめでとう」
これだ。
まあなぁ。最近ちらほら、同級生が結婚したって話が耳に入るようになったし。ついになぎさもか。俺は別に平気だけど、親父やお袋がショックを受けるだろう。二人とも、なぎさのことを実の娘のように可愛がってたから。
家と工場の間で、細長い長方形に区切られた星空を見上げ、煙草を吸っていたら、玄関の引き戸がカラカラと開いた。
「お兄さん、こんな所にいた」
「よくここが分かったな」
「匂いで分かりますよ」
なにそれこわい。もう八時半過ぎてますよと知玄は言って、俺がウンコ座りしているすぐ横にしゃがんだ。
「そういえば、さっきの話の続きって?」
「あぁ、別に大したことじゃないです」
そういったきり、知玄は一言も喋らない。俺は根本近くまで灰になった煙草を揉み消し、新しいのを出して火を点けた。
「あのさ」
「はい」
知玄は首を傾げて俺の顔を覗き込んでくる。
「なぎさが結婚するんだって。さっき、電話してきた」
「へぇ」
十二月だって。急だがデキ婚ではないとさ。旦那の誕生日を記念日にするんだと。寒いし年末だがそのぶん費用は安いんだって。ご祝儀っていくら持ってけばいいんだ。服は成人式の時のスーツじゃダメかな。……って俺、何、知玄相手に、こんなことべらべらしゃべってるんだ?
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