[完結]ひきこもり執事のオンオフスイッチ!あ、今それ押さないでくださいね!

小葉石

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45 よろしくお願いします

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 蔓草巻きつく古城という感じの大地の神殿を後ろに見て、中を見学している旦那様とフランカ様には申し訳ないのだけど、私は一人で神殿裏にある森の中へ。


 神殿に仕えている方々に手伝ってもらって森の中まで、重い衣装箱を運んでもらった。
 丁寧にお礼を言って下がってもらう。


 深い森…自分が生まれるより前からここにあって生き物を守っていた所。

 あぁやっぱり、小さな者達や精霊の気配…



……こんにちは小さな兄弟、いらっしゃい……

……痛いの?悲しいの?どうしたの?……

 人?なつこい精霊達が話しかけてくれる。
 今の私では全部の声を聞き取れないけど…


………お願いがあります。滅びてしまった森の屍をどうか、受け取っていただきたいのです。次の命の糧にこの地に撒きますから……

 精霊としての声を張り上げる。

……傷ついた兄弟、受け取りましょう。貴方は?此処に宿り共に生きますか?……

……いいえ、大きな兄弟。許されるなら、私はまだこの身のままで居たいのです……

……小さいの、物好き、人間は大変………


 一つの森を滅ぼしてしまったのに、仲間は同情的で、受け入れてくれようともしている。ありがたい事、残った自分まで拒否されてしまっては身の置き所もなかった…   


……弱った子、苦しみない?辛くない?……

……苦しくないし、辛くないよ。大丈夫、大好きな方の側に居るから……

……やさしい?太陽…?暖かい、太陽………

 私に付いていたレーン様の気配を読み取ってくれた。

……そう、暁の方。優しいし、暖かいよ……


     とてもとても、暖かいよ…………




「あら、まぁ。」

「森の精に守られていたな。」


 深い森林の中に、シェインを迎えに入ってみれば、衣装箱の中身は空っぽで、こんもりと積まれた枯葉の山の中に丸まる様にシェインは眠る。


 サワリ、と森がさざめいた気がする?

「殿下、森の精霊達が何か話していますの?」

「分かるのか、フランカ。」

「いいえ、分かりません。けれど、殿下が入られた時に雰囲気が変わった様に感じましたの。」
 
 不思議ですわ?とフランカは小首を傾げている。


 よろしくお願いします、と森の精霊達がさざめいている。シェインリーフであった物を他の命の為に分け与える。自分が共にいれば命と共に自分の力となるが、他に吸収されれば自分の力を一部削ぐ事にもなる。
 弱った兄弟を案じて口々に声をかけに来る。


………案ずるな、これは私が貰い受ける。我が眷属には了承済みだ。消滅などさせるわけが無い……


…良かった、うれしい、よかった
     お願いします、おねがいします……

 森の精の喜びの声を果たしてシェインリーフは聞けたかどうか、それ程深くシェインは眠る。
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