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大地の神殿に参る時に旦那様にお願いがあった。
フランカ様のお誘いから、是非行きなさいと旦那様が勧めてくださって、重い腰を上げる事にした。大地の神殿で、森の中にある…だとしたら思う通りの精霊達が居るはず。深い森ならよほど良い……心に更に気合を入れる。
うん……やはり、そうしよう!
旦那様はご自分の本質をお証になった後でも日課である趣味部屋に日参しておられる様子。
でも、そこに有るのは私の森の残骸ですよね?
落ち着いて考えたら、旦那様それは屍では?
カサカサに乾いている葉達は人間で言う所のミイラと同じ。本人から見ると嬉しいのか、本来あるべき所に弔ってもらいたいのかちょっと分からなくなってくる。
けれど、今回はきっと良い機会だ。綺麗にしまっておくよりは次なる命に繋げた方が良い。
深呼吸して、コンコンと旦那様の部屋をノックした。思えば自分の用事で伺ったのは初めてだ。
直ぐにドアを開いて招いてくださる旦那様。私の好きなレーン様…今もその瞳を見上げることが出来るのは本当に幸せ。
「夜分にどうした?」
フワリと笑う表情も変わらず暖かい。
「お休みの所申し訳ありません。お願いがあって参りました。」
毎日お顔は見ているけれど、やはり嬉しくてこちらも笑顔になる。
「夜半は私の力及ばぬことがあるが、其方の頼みや我が儘なら大歓迎だ。さて、何かな?」
直ぐに手を引いてソファーへ誘導されてしまうが、執事としてはこれはダメ。
ゆっくりと腰を下ろした旦那様に、頭を下げて礼を取る。
「畏まらなくていい。ゆっくりしなさい。ここは其方の家でもあるのだから。」
さ、と手を引いてやはり隣に座らされてしまう。
直ぐに、以前からのサワサワが始まって、優しく優しく撫でてくれる。
ん?と覗き込まれれば、意を決して自分の口から言おうとしていた事を話し出した。
「レーン様、大地の神殿に参る時に、趣味のお部屋にある私の残骸を神殿周りの森へ撒いて頂けませんか?」
ドキドキする。断られたら、悲しい顔をされたらどうしよう。困らせたりしたくないんだ。あんなに綺麗に宝物みたいに取っておいて下さったし。
隣に座った私を引き寄せてポフッと胸の中に包んでしまった旦那様。
「わざわざ其方が頼みに来たのだ。断るべきではないんだろう?それが自然の摂理。しかし、其方の精気が少し残っている。今よりも力が戻るのが遅くなるぞ?」
「分かっています。けれど、いずれは戻りますから気長に待ちますし。」
フッと短いため息をはいてギュウと抱き締めてくる。
「分かった、そうしよう。其方の力が戻るまで、しっかりと共にいるつもりではある。だから大丈夫だと思ってもしっかりと休むこと。分かったね?」
コクコク肯く。
「それと、私も欲しいものがある………………」
そっと耳元で呟いた事に、驚いたけど私はゆっくり頷いた…
フランカ様のお誘いから、是非行きなさいと旦那様が勧めてくださって、重い腰を上げる事にした。大地の神殿で、森の中にある…だとしたら思う通りの精霊達が居るはず。深い森ならよほど良い……心に更に気合を入れる。
うん……やはり、そうしよう!
旦那様はご自分の本質をお証になった後でも日課である趣味部屋に日参しておられる様子。
でも、そこに有るのは私の森の残骸ですよね?
落ち着いて考えたら、旦那様それは屍では?
カサカサに乾いている葉達は人間で言う所のミイラと同じ。本人から見ると嬉しいのか、本来あるべき所に弔ってもらいたいのかちょっと分からなくなってくる。
けれど、今回はきっと良い機会だ。綺麗にしまっておくよりは次なる命に繋げた方が良い。
深呼吸して、コンコンと旦那様の部屋をノックした。思えば自分の用事で伺ったのは初めてだ。
直ぐにドアを開いて招いてくださる旦那様。私の好きなレーン様…今もその瞳を見上げることが出来るのは本当に幸せ。
「夜分にどうした?」
フワリと笑う表情も変わらず暖かい。
「お休みの所申し訳ありません。お願いがあって参りました。」
毎日お顔は見ているけれど、やはり嬉しくてこちらも笑顔になる。
「夜半は私の力及ばぬことがあるが、其方の頼みや我が儘なら大歓迎だ。さて、何かな?」
直ぐに手を引いてソファーへ誘導されてしまうが、執事としてはこれはダメ。
ゆっくりと腰を下ろした旦那様に、頭を下げて礼を取る。
「畏まらなくていい。ゆっくりしなさい。ここは其方の家でもあるのだから。」
さ、と手を引いてやはり隣に座らされてしまう。
直ぐに、以前からのサワサワが始まって、優しく優しく撫でてくれる。
ん?と覗き込まれれば、意を決して自分の口から言おうとしていた事を話し出した。
「レーン様、大地の神殿に参る時に、趣味のお部屋にある私の残骸を神殿周りの森へ撒いて頂けませんか?」
ドキドキする。断られたら、悲しい顔をされたらどうしよう。困らせたりしたくないんだ。あんなに綺麗に宝物みたいに取っておいて下さったし。
隣に座った私を引き寄せてポフッと胸の中に包んでしまった旦那様。
「わざわざ其方が頼みに来たのだ。断るべきではないんだろう?それが自然の摂理。しかし、其方の精気が少し残っている。今よりも力が戻るのが遅くなるぞ?」
「分かっています。けれど、いずれは戻りますから気長に待ちますし。」
フッと短いため息をはいてギュウと抱き締めてくる。
「分かった、そうしよう。其方の力が戻るまで、しっかりと共にいるつもりではある。だから大丈夫だと思ってもしっかりと休むこと。分かったね?」
コクコク肯く。
「それと、私も欲しいものがある………………」
そっと耳元で呟いた事に、驚いたけど私はゆっくり頷いた…
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