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22 もしかして

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「……!!…ミッチェル!!」

 ……やっぱりこっちに気が付いた…

 思った通りね、と思った瞬間パタパタパタッと水が降ってきた……?

 ……雨?いいえ、今日は快晴だったわ…

 雨は私の頬と、胸の前で組んでいる手を濡らして行く…

 泣いてる…?え?私が?

 ポロポロボロボロと溢れて行く涙に、近づいて来る男性の方が困り顔に。

「ミッチェル…?会いたかった…」

 ……ミッチェル?今、泣いているのがミッチェル?…

「どれだけ、君を待たせてしまったか…」
 
 会いたかった、懐かしい…大好き……
 そんな気持ちが心から溢れて来る。

「君は絶対に待ってしまっていると思ったんだ…僕なんかを待たずに、幸せになって良かったんだよ?」

 そっと頬に当てられるその手も懐かしい…懐かしくて、懐かしくて、待たされたことへの怒りなんかなかった…

「君を絶対に幸せにするって誓ったのに……僕は情けない婚約者になってしまったね…」

「帰れなかったのでしょう?」
 
 優しい声が男性を包んだ。

「帰りたくても、帰れなかったのでしょう?」

 目から溢れる涙は止まらなくて、後からあとから流れ出る…
 よく見たら男性の服装はボロボロだった。事故にあった?盗賊にでも襲われた?

「そう…帰ろうとしたんだ。君の元に…せめて、僕を忘れて幸せになって欲しかったから…でも、道が分からなくなってしまって…」

 ……道?ここに来る道?帰る道?…

「君の元に帰れなくなってしまった…」

 ……今、あなたはここにいるのにね?…

「許してくれ、ミッチェル…君の側にずっと居続ける誓いを守れなかった僕を許して…」

「怒ってなんかいないわ…あなた…こうして会いに来てくれたじゃない?」

 ミッチェルの手が男性の頬へ触れる。暖かさが感じられる、生きてる時と同じように…

「今度こそ、私と一緒にいてくれるんでしょう?あなた?」

 ……ミッチェル…愛してる人の事は、離れていたって愛しいものよね…

「もちろん……!…僕で、良いのかい?」

「何を言うのよ?ここまで来てくれたのでしょう?あなたがいいわ!」

 フワリとミッチェルは男性に寄り添ってしっかりと抱きしめた。

 ……良かったわね。会う事ができて。こんな時に聞くのもどうかと思うのだけど、あなた達、ラッキービーナと言う名前を知らないかしら?…

「ありがとうございます。ラッキービーナ…ミッチェルに合わせてくれて…」

"行きましょう…あなた、行くべき所へ…"

"ありがとう…最後の渡し人…ありがとう!"

 ……待って!渡し人って!?ラッキービーナは?誰なの?…

"ラッキー…ビーナ……あな…た……"

「待って!!」

 最後の私の言葉は届かず二人は
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