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第9章 幸せになります
339. 夢の中
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タウンハウスに戻ってきた時は、もう夕方になっていた。報告をしたり、お茶を飲んだり、妖精の話をしたりと何だか盛りだくさんになってしまったけれど、嬉しかったな。今は四の月で十の月の後半には婚約式をするから、これから忙しくなりそうだ。具体的にはどんな事があるのか分からないけれど、母様もはりきっているし、お披露目会よりは凄そうだなって思う。
それに兄弟である事もどうにかするって言っていたしね。
どうにか……まぁ、父様に任せておけば大丈夫だよね。
とりあえず、あとは妖精の件だな。
僕が思いついた事を叶えてもらえるかは分からないけど、もしもそれが可能なら素敵すごいなって思う。
勿論それは出来ないって言われてしまう事もあると思うから、そうしたら『首』の事をお願いしよう。頂いたあの木が、出来るだけ長く、籠揺り籠であってくれますようにって。そのためにはちゃんと語り継いで行く事が大切だよね。あと、祈り続けて行く事も。
今回起きた事をきちんと記録に残して行くだけでなく、何か出来たらなって思うんだ。
「エドワード様、ご夕食の準備が出来ました」
「ありがとう」
声をかけてくれたマリーに頷いて、一階に下りると丁度兄様と一緒になった。
「先にシェフに言っておけば良かったです。ケーキを食べてきたので、実はあまりお腹が空いていません」
失敗しちゃったっていう顔で小さくそう言うと兄様は「そうだろうと思って伝えてあるよ」って。さすが兄様!
テーブルに着くといつもより軽めの夕食が運ばれてきた。
「エディ、お祖父様の所で言っていた妖精の事だけど、いつ夢に現れるか分かるの?」
「えっと、ハリーには調印式の後にお祖父様と相談したいっていうような事を伝えてもらっているんだけど、具体的な日付は分かりません」
「そう。妖精の夢だから大丈夫だと思っているんだけど、夢というと何となく心配でね」
「兄様……」
それは多分僕が『黒いこわいの』の夢を見て叫んだり、吐いてしまったからかもしれない。でも今は魔人の関係で最大限に高めた結界があって、妖精たちも中々近づけないようになっているし、しかも妖精王との話合いだしね。もっとも直接妖精王と話すのではなくて、『大きい人』が中に入ってくれるみたいだけれど。
「はじめから話をする相手が分かっているので大丈夫です。ここの結界を緩めれば直接訪ねてきてくれるのかもしれないけれど、それは難しいかなと思うから、妖精たちにお任せします」
「ああ、そうだね。夢の中で話をするというのが、なんだか何度聞いても不思議な感じだけどね」
「ふふふ、そうですね」
それから僕たちはダリウス叔父様の話や今度はいつ森へ行こうかって話をした。
食後のデザートはプリンが出た。
冷たくて、上に果物とクリームが乗っている。最近流行り出しているプリン・ア・ラ・モードっていうんだって。母様はすでに召し上がっていらっしゃるとか。さすが母様。
「五の月になって交易が始まったらどんな魔道具が入って来るのでしょう。楽しみです」
「ふふふ、そうだね。結局動画を撮る魔道具も途中になってしまっているしね。交易が始まればシェルバーネの魔道具師とも会えるかもしれないね。そうしたら相談をしてみるという事も出来るのかもしれないな」
兄様が楽しそうにそう言った。
「わぁ! そうなったらいいですね」
「出来れば婚約式までに出来上がると嬉しいけど、さすがに五カ月では難しいだろうね。でもエディの卒業には間に合わせたいな」
「ええ! 卒業ですか?」
「そう。私の時に大泣きをしていたエディはとても可愛らしかったからね。あれは本当に残しておきたかった」
「ににに兄様、やめてください」
ううう、思い出すのも恥ずかしい事なのに、動画になんて残されて何度も見られるなんて絶対に困る。
「卒業式とその後の結婚式は絶対に動画を撮る……ええっと……『ビデオカメラ』だ! そうビデオカメラを完成させないとね」
ニッコリと笑った兄様に僕は素直に「はい」と返事をする事が出来なかった。だって、恥ずかしいよね。その日だけだから頑張れるのに、後から何度も繰り返し見る事になったら絶対に恥ずかしくて困るよ。
でも、もしも、兄様の卒業式が動画になっていたら、きっと僕も何度も見直しちゃうんだろうな。そんな事を考えながら僕は胸の中で笑った。
-*-*-*-
深く沈んでいた意識がゆらりと何かに揺り動かされたような感じがした。
名前を呼ばれたような気がして、そっと目を開けると光を感じた。僕は頭の中で「ああ、夢だ」と思う。不思議な感覚。
『エドワード様ですね?』
はっきりとした声が聞こえた、そして白っぽい、銀色っぽい、光を纏った人がいつの間にか目の前にいた。
「はい」
返事をすると光の人はにっこりと笑った。
『王の森を守っていただきましてありがとうございました。リロイ達から伝わっているかと思いますが、王より、貴方へ感謝の証をお送りしたく、このような形を取らせていただきました。貴方のお陰で大切な森を失われずにすみました』
「はい、あの、こちらこそ、『首』の封印を手伝っていただいて感謝しています。ありがとうございました。以前いただいた枝が揺り籠になり、しっかりと眠らせる事が出来ました」
僕がそう言うと、その人は再び笑みを浮かべた。
「授けられたものをきちんと育て、使えるようにしたのは貴方です。愛し子と共に小さな者たちの声を聞き、恵みを与えてくださった。私も王もその様子を見ていました」
「は、はい。ありがとうございます。僕は妖精の加護はありませんが、ティオ達に契約をしてもらって、話が出来るようになって、本当に感謝しています。ティオ達に助けてもらった事も沢山あります。出会う事が出来てとても嬉しいです」
僕の言葉に光の人は「ありがとう」と言った。
------
それに兄弟である事もどうにかするって言っていたしね。
どうにか……まぁ、父様に任せておけば大丈夫だよね。
とりあえず、あとは妖精の件だな。
僕が思いついた事を叶えてもらえるかは分からないけど、もしもそれが可能なら素敵すごいなって思う。
勿論それは出来ないって言われてしまう事もあると思うから、そうしたら『首』の事をお願いしよう。頂いたあの木が、出来るだけ長く、籠揺り籠であってくれますようにって。そのためにはちゃんと語り継いで行く事が大切だよね。あと、祈り続けて行く事も。
今回起きた事をきちんと記録に残して行くだけでなく、何か出来たらなって思うんだ。
「エドワード様、ご夕食の準備が出来ました」
「ありがとう」
声をかけてくれたマリーに頷いて、一階に下りると丁度兄様と一緒になった。
「先にシェフに言っておけば良かったです。ケーキを食べてきたので、実はあまりお腹が空いていません」
失敗しちゃったっていう顔で小さくそう言うと兄様は「そうだろうと思って伝えてあるよ」って。さすが兄様!
テーブルに着くといつもより軽めの夕食が運ばれてきた。
「エディ、お祖父様の所で言っていた妖精の事だけど、いつ夢に現れるか分かるの?」
「えっと、ハリーには調印式の後にお祖父様と相談したいっていうような事を伝えてもらっているんだけど、具体的な日付は分かりません」
「そう。妖精の夢だから大丈夫だと思っているんだけど、夢というと何となく心配でね」
「兄様……」
それは多分僕が『黒いこわいの』の夢を見て叫んだり、吐いてしまったからかもしれない。でも今は魔人の関係で最大限に高めた結界があって、妖精たちも中々近づけないようになっているし、しかも妖精王との話合いだしね。もっとも直接妖精王と話すのではなくて、『大きい人』が中に入ってくれるみたいだけれど。
「はじめから話をする相手が分かっているので大丈夫です。ここの結界を緩めれば直接訪ねてきてくれるのかもしれないけれど、それは難しいかなと思うから、妖精たちにお任せします」
「ああ、そうだね。夢の中で話をするというのが、なんだか何度聞いても不思議な感じだけどね」
「ふふふ、そうですね」
それから僕たちはダリウス叔父様の話や今度はいつ森へ行こうかって話をした。
食後のデザートはプリンが出た。
冷たくて、上に果物とクリームが乗っている。最近流行り出しているプリン・ア・ラ・モードっていうんだって。母様はすでに召し上がっていらっしゃるとか。さすが母様。
「五の月になって交易が始まったらどんな魔道具が入って来るのでしょう。楽しみです」
「ふふふ、そうだね。結局動画を撮る魔道具も途中になってしまっているしね。交易が始まればシェルバーネの魔道具師とも会えるかもしれないね。そうしたら相談をしてみるという事も出来るのかもしれないな」
兄様が楽しそうにそう言った。
「わぁ! そうなったらいいですね」
「出来れば婚約式までに出来上がると嬉しいけど、さすがに五カ月では難しいだろうね。でもエディの卒業には間に合わせたいな」
「ええ! 卒業ですか?」
「そう。私の時に大泣きをしていたエディはとても可愛らしかったからね。あれは本当に残しておきたかった」
「ににに兄様、やめてください」
ううう、思い出すのも恥ずかしい事なのに、動画になんて残されて何度も見られるなんて絶対に困る。
「卒業式とその後の結婚式は絶対に動画を撮る……ええっと……『ビデオカメラ』だ! そうビデオカメラを完成させないとね」
ニッコリと笑った兄様に僕は素直に「はい」と返事をする事が出来なかった。だって、恥ずかしいよね。その日だけだから頑張れるのに、後から何度も繰り返し見る事になったら絶対に恥ずかしくて困るよ。
でも、もしも、兄様の卒業式が動画になっていたら、きっと僕も何度も見直しちゃうんだろうな。そんな事を考えながら僕は胸の中で笑った。
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深く沈んでいた意識がゆらりと何かに揺り動かされたような感じがした。
名前を呼ばれたような気がして、そっと目を開けると光を感じた。僕は頭の中で「ああ、夢だ」と思う。不思議な感覚。
『エドワード様ですね?』
はっきりとした声が聞こえた、そして白っぽい、銀色っぽい、光を纏った人がいつの間にか目の前にいた。
「はい」
返事をすると光の人はにっこりと笑った。
『王の森を守っていただきましてありがとうございました。リロイ達から伝わっているかと思いますが、王より、貴方へ感謝の証をお送りしたく、このような形を取らせていただきました。貴方のお陰で大切な森を失われずにすみました』
「はい、あの、こちらこそ、『首』の封印を手伝っていただいて感謝しています。ありがとうございました。以前いただいた枝が揺り籠になり、しっかりと眠らせる事が出来ました」
僕がそう言うと、その人は再び笑みを浮かべた。
「授けられたものをきちんと育て、使えるようにしたのは貴方です。愛し子と共に小さな者たちの声を聞き、恵みを与えてくださった。私も王もその様子を見ていました」
「は、はい。ありがとうございます。僕は妖精の加護はありませんが、ティオ達に契約をしてもらって、話が出来るようになって、本当に感謝しています。ティオ達に助けてもらった事も沢山あります。出会う事が出来てとても嬉しいです」
僕の言葉に光の人は「ありがとう」と言った。
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