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第8章 収束への道のり
309. 僕の決意
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僕はお祖父様の知らせを待っていた。
ミッチェル君は魔力回復ポーションを3つも置いて僕の側に待機をしていて、魔力切れを起こさせないってやる気満々で、珍しくマリーが笑いを堪えているような顔をしていた。
王様の森で起こるスタンピードの討伐に兄様が参加をすると言うのは本当に本当に心配でだけれど、今この時点で僕に出来る事は、ううん、僕がしなければならない事は南の森の守塚を無事に封印させる事だ。
今のまま魔物がどんどん喚びだされていれば、マーティン君たちが倒れてしまう。
日に二回もお祈りをするのは初めてだけど、頑張ろう。うん。きっと大丈夫。絶対に大丈夫。
「あ、書簡が来たね」
ミッチェル君がそれに気づいて、僕は急いでそれを開いた。ハワード先生からだった。
「王宮神殿の地下から繋がっている通路の奥に、第三の『首』のもう一つの封印部屋が発見されたって。空間の道の扉を開いた影響でやっぱりここも封印の一部が壊れている可能性があるみたい。王宮神殿とか墓廟に魔素やアンデッドが湧き出しているのはこれが関係しているのかもしれないね」
僕がそう言うとみんなが少し難しい顔をした。
「ねぇ、それってさ、やっぱり封印する所がもう一つ増えるって事だよね?」
「うん。そうなるかもしれないね」
「……一日に三つも封印をしたら、エディが心配だよ」
「心配です。エディ兄様が倒れてしまいます」
トーマス君とハリーがそう言うと皆が頷いた。
「ありがとう。多分その辺りはお祖父様と父様が判断すると思うんだ。きっと無茶はさせないと思うしね。そう言えば全く情報が入らないけど、モーリスのダンジョンの方のスタンピードはどうなっているのか誰か知っている?」
話題を変えるように僕がそう言うとスティーブ君が口を開いた。
「各地からかなり冒険者たちが集まったみたいだよ。魔物たちが増えてくるのは止まらずに浅い層の魔物たちは下から押し出されるように外へと飛び出し始めたらしい。でも大きな被害にならず、ほとんどがその周辺で討伐されているみたいだね」
「下層はなぜか上に行くものと下へさがるものの二手に分かれているらしいって情報も入ったよ」
「下へさがる? 魔物が?」
「ああ、ありえない話だけど魔物達が下へ降りていくのが目撃されているようだ」
「ダンジョンの魔物ってその階にしか居られないんじゃ……ああ、でもスタンピードで上に行けるから、下にも行けるのかな。っていうか、ダンジョンの中に入っている人もいるの?」
僕は驚いて聞き返してしまった?
「ああ、スタンピードが始まって戻れなくなってしまった者とか、そのまま討伐に切り替えている者とか。ギルドの職員も始まってすぐ、被害が少ないうちに何人か状況把握で潜ったらしい。冒険者たちの中には稼ぎ時だって潜っていこうとしている者も出てきているって」
スティーブ君とユージーン君、そしてエリック君が色々と教えてくれた。凄いなぁ冒険者って。僕は絶対に冒険者にはなれないな。
「……なぁ、もしかしたらさ、その下に下がっている奴ってさ、こっちに来たりするのかな」
クラウス君のものすごく困ったような、嫌そうな顔に僕たちは思わず固まってしまった。
ああ、そうだよね。そう考える事も出来るよね。っていうか、そういう可能性は確かにあるよね。だって扉は開いたままなんだもの。
「クラウス! なんて事言うのさ!」
ミッチェル君が怒鳴った。
「え、いや、だってさ、扉はあっちもこっちも開いちゃってるんだよな」
「そうだけど! そうだけどさ!」
「ミッチェル、クラウスが考えた事はみんながどこかで思っていた事だよ。妖精たちが繋がってはいけない所に繋がったって言って助けを求めてきているんだ。王城だけでなく、最悪、王都の街中に魔物が溢れ出す可能性だってある」
「そうだけど、でも、いやだよ、そんなの」
「そうならないように王城でも色々準備をしたり、結界をかけたりしているんだろう。とりあえず、使用人たちの安全は確保しないとね」
「うちはすでに避難をさせたよ。タウンハウスは結界と強化魔法を使っているけれどどうなるかは分からない」
そう言われて僕は今更ながらその事に気付いてテオを見た。
「手配は終わっております」
「……うん。ありがとう」
静かな声に小さな声でそう返した。でもそうできる人は僅かだ。もしも街中に魔物たちが溢れたら……
そして、その討伐を命じられた兄様たちはどうなってしまうんだろう。
『えでぃー、ちがうみちができてるって』
ティオの声が聞こえて僕は顔を上げた。
「うん? どうしたの? ティオ」
『あのね~、さいしょのみちじゃないの』
「……どういうことかな。教えて?」
僕は王都の地図を広げた。そして王城内の所を魔法で大きくして、ついでにお祖父様がやっていたみたいにそこに土魔法で作り出したでお城と神殿と墓廟、そして沢山の木の模型を置いてみた。
『リロイもしてもいい?』
「いいよ」
リロイはお城の位置や木の位置を微妙に直し始めた。中々凝り性なのかもしれない。それを見たセームルも、そして姿は見えないけれど他の子たちも、思い思いに土魔法で作った模型を動かしている。
僕たちの目の前には立体的な城の裏手の地図が出来上がっていた。
『あのね~。ここからでてきちゃうの。それでね、ほんとはこうしかいけないの』
僕はリロイが歩いたところに矢印をつけた。
『ここの木を動物たちが沢山倒しちゃったんだ。だから行かれるようになっちゃったの』
リロイとセームルと僕には見えない子たちが、置いていた木の模型をポイポイと投げ捨てた。
そうしてそこは確かに違う道となって、王城の庭園に沿うような道と合流してしまう。
「え?」
『どっちもいかれるの~。わかれるの。でもまたいっしょになるの』
分かれた道は大きく離れて異なる道と重なり元の道からは完全に離れてしまう。だが、行先は二手にならなかった庭園の道は緩やかな蛇行を繰り返して、王宮神殿の方へ向かうのだ。
『こっちはまっすぐ~。こっちはぐる~ってしてもどってくるの」
ティオが言う通りに一つの道はそのまま真っ直ぐに行く道だ。脇道に反れなければまっすぐに王宮神殿の方へと向かって伸びていて、そのままその横を通り、やがて街に繋がるこの門を破ってしまうかもしれない。
そして分かれてしまったこの道を進むと、ゆっくりと庭園を眺めながらお城の方に向かい、緩やかに蛇行しながらまた元の本流に戻るというか本流に繋がる。そして本流に戻った時の進行方向は……。
描いていた矢印が震えた。
大きな道と偶然出来て他の道と繋がってしまった脇道、そのまま流されるように進めば、この支流はやがて本流に戻りそのまま本流を逆行する形になる。もしも、まだ本流の流れがそのままだったなら、その流れに乗って進行方向は門の方になるかもしれない。けれど本流に戻った時に、もしも兄様たちが前から来る魔物たちと戦っていてその流れがなかったら。そしてぐるりと一周まわった先に獲物がいると分かったら、その魔物たちは喜んで後ろから襲い掛かるのではないだろうか。
矢印を書いたその道を僕は何度も見た。本流と支流。主道と脇道。
「……兄様が、危ない」
僕は目の前が真っ暗になったような気がした。
前から押し寄せる魔物たち、
そして支流を通って、城に近づき追われるようにしてそのまま本流に合流して、そして……。
「知らせないといけない。スタンピードが始まる前に」
「エディ兄様!」
「落ち着いて、エディ。書簡を出そう。それにもうすぐカルロス様から開始の知らせが来るよ」
トーマス君が僕の手を握り締めた。
「でも、ちゃんと説明をししないと! それに今からじゃスタンピードの討伐隊をニつに分けるのは難しいかもしれないし、無理に二手に分かれたら攻撃力が下がるよ! 兄様が、アル兄様が……」
「エディ! 落ち着いて」
まだ父様からの連絡は来ない。
南はこれから封印をするからレイモンドもお祖父様も動けない。
ハワード先生とスタンリー卿は新たな部屋の結界に必死だ。
王城もこれから迎え撃つスタンピードに備えていて、急な変更はきっとできない。それならば。
「落ち着こう。エディ。とにかく王城にこの事を知らせるんだ」
「なんて言って? お祖父様はここには居ないよ。誰が妖精の声を聞いたの? そうでなければどうしてこの事が判ったの?」
「それは……」
レナード君が思わず黙り込んだ。
「私がカルロス様にお願いをして」
テオの言葉を無視して僕は妖精に向かって話しかけた。
「……ティオ、リロイ、セームル、僕に力を貸して?」
『エディ?』
「君たちからもらったこの樹の苗をお祖父様が願う通りに成長させて封印を手伝ってほしいんだ」
「エディ!」
「エディ兄様!」
「エドワード様!」
色々なところから驚いたような声が聞こえる。
『この樹を?』
「うん。この樹の苗には僕がお祈りをしている。お祖父様の思う通りに育って、『首』を掴んで揺り籠になって眠らせてほしいって。そのお手伝いをしてほしい。その代わり、僕が、君たちの王様の森を魔物たちから守るよ」
『………………おおきいひとも手伝うから、森を頼むって』
「わかった。ありがとう。必ず約束を守るよ」
僕がそう言うと妖精たちはキラキラと輝いて眠りの樹の中にフッと消えた。
「エドワード様! 何を、何を言っておられるのですか!」
「ごめんね、マリー。でも、僕は」
だって、僕は兄様を殺さない為にずっとずっと頑張ってきたんだ。
この世界では僕は悪役令息ではなくて兄様を殺す事はなかった。だけど、僕が殺してしまうのでなくても、その理由がどんな事であっても、僕は兄様を死なせない。絶対に。失いたくないんだ!
マリーから視線を外して、僕は兄様に『スタンピードの事でどうしてもお話したい事があります。直接王城のには入れないので、王宮神殿に近い入口にいます』と声の書簡を出した。
そしてお祖父様と父様にも声の書簡を出した。
『お祖父様、封じ込めの手伝いをリロイ達がしてくれる事になりました。王の森のスタンピードに支流がある事が判りました。兄様が危険です。そちらへ向かいます』
『父様、スタンピードは一つだけではありません。支流が出来る可能性があります! 兄様が危ないです。そちらへ向かいます』
――――― あの力を使います。
-------------
ミッチェル君は魔力回復ポーションを3つも置いて僕の側に待機をしていて、魔力切れを起こさせないってやる気満々で、珍しくマリーが笑いを堪えているような顔をしていた。
王様の森で起こるスタンピードの討伐に兄様が参加をすると言うのは本当に本当に心配でだけれど、今この時点で僕に出来る事は、ううん、僕がしなければならない事は南の森の守塚を無事に封印させる事だ。
今のまま魔物がどんどん喚びだされていれば、マーティン君たちが倒れてしまう。
日に二回もお祈りをするのは初めてだけど、頑張ろう。うん。きっと大丈夫。絶対に大丈夫。
「あ、書簡が来たね」
ミッチェル君がそれに気づいて、僕は急いでそれを開いた。ハワード先生からだった。
「王宮神殿の地下から繋がっている通路の奥に、第三の『首』のもう一つの封印部屋が発見されたって。空間の道の扉を開いた影響でやっぱりここも封印の一部が壊れている可能性があるみたい。王宮神殿とか墓廟に魔素やアンデッドが湧き出しているのはこれが関係しているのかもしれないね」
僕がそう言うとみんなが少し難しい顔をした。
「ねぇ、それってさ、やっぱり封印する所がもう一つ増えるって事だよね?」
「うん。そうなるかもしれないね」
「……一日に三つも封印をしたら、エディが心配だよ」
「心配です。エディ兄様が倒れてしまいます」
トーマス君とハリーがそう言うと皆が頷いた。
「ありがとう。多分その辺りはお祖父様と父様が判断すると思うんだ。きっと無茶はさせないと思うしね。そう言えば全く情報が入らないけど、モーリスのダンジョンの方のスタンピードはどうなっているのか誰か知っている?」
話題を変えるように僕がそう言うとスティーブ君が口を開いた。
「各地からかなり冒険者たちが集まったみたいだよ。魔物たちが増えてくるのは止まらずに浅い層の魔物たちは下から押し出されるように外へと飛び出し始めたらしい。でも大きな被害にならず、ほとんどがその周辺で討伐されているみたいだね」
「下層はなぜか上に行くものと下へさがるものの二手に分かれているらしいって情報も入ったよ」
「下へさがる? 魔物が?」
「ああ、ありえない話だけど魔物達が下へ降りていくのが目撃されているようだ」
「ダンジョンの魔物ってその階にしか居られないんじゃ……ああ、でもスタンピードで上に行けるから、下にも行けるのかな。っていうか、ダンジョンの中に入っている人もいるの?」
僕は驚いて聞き返してしまった?
「ああ、スタンピードが始まって戻れなくなってしまった者とか、そのまま討伐に切り替えている者とか。ギルドの職員も始まってすぐ、被害が少ないうちに何人か状況把握で潜ったらしい。冒険者たちの中には稼ぎ時だって潜っていこうとしている者も出てきているって」
スティーブ君とユージーン君、そしてエリック君が色々と教えてくれた。凄いなぁ冒険者って。僕は絶対に冒険者にはなれないな。
「……なぁ、もしかしたらさ、その下に下がっている奴ってさ、こっちに来たりするのかな」
クラウス君のものすごく困ったような、嫌そうな顔に僕たちは思わず固まってしまった。
ああ、そうだよね。そう考える事も出来るよね。っていうか、そういう可能性は確かにあるよね。だって扉は開いたままなんだもの。
「クラウス! なんて事言うのさ!」
ミッチェル君が怒鳴った。
「え、いや、だってさ、扉はあっちもこっちも開いちゃってるんだよな」
「そうだけど! そうだけどさ!」
「ミッチェル、クラウスが考えた事はみんながどこかで思っていた事だよ。妖精たちが繋がってはいけない所に繋がったって言って助けを求めてきているんだ。王城だけでなく、最悪、王都の街中に魔物が溢れ出す可能性だってある」
「そうだけど、でも、いやだよ、そんなの」
「そうならないように王城でも色々準備をしたり、結界をかけたりしているんだろう。とりあえず、使用人たちの安全は確保しないとね」
「うちはすでに避難をさせたよ。タウンハウスは結界と強化魔法を使っているけれどどうなるかは分からない」
そう言われて僕は今更ながらその事に気付いてテオを見た。
「手配は終わっております」
「……うん。ありがとう」
静かな声に小さな声でそう返した。でもそうできる人は僅かだ。もしも街中に魔物たちが溢れたら……
そして、その討伐を命じられた兄様たちはどうなってしまうんだろう。
『えでぃー、ちがうみちができてるって』
ティオの声が聞こえて僕は顔を上げた。
「うん? どうしたの? ティオ」
『あのね~、さいしょのみちじゃないの』
「……どういうことかな。教えて?」
僕は王都の地図を広げた。そして王城内の所を魔法で大きくして、ついでにお祖父様がやっていたみたいにそこに土魔法で作り出したでお城と神殿と墓廟、そして沢山の木の模型を置いてみた。
『リロイもしてもいい?』
「いいよ」
リロイはお城の位置や木の位置を微妙に直し始めた。中々凝り性なのかもしれない。それを見たセームルも、そして姿は見えないけれど他の子たちも、思い思いに土魔法で作った模型を動かしている。
僕たちの目の前には立体的な城の裏手の地図が出来上がっていた。
『あのね~。ここからでてきちゃうの。それでね、ほんとはこうしかいけないの』
僕はリロイが歩いたところに矢印をつけた。
『ここの木を動物たちが沢山倒しちゃったんだ。だから行かれるようになっちゃったの』
リロイとセームルと僕には見えない子たちが、置いていた木の模型をポイポイと投げ捨てた。
そうしてそこは確かに違う道となって、王城の庭園に沿うような道と合流してしまう。
「え?」
『どっちもいかれるの~。わかれるの。でもまたいっしょになるの』
分かれた道は大きく離れて異なる道と重なり元の道からは完全に離れてしまう。だが、行先は二手にならなかった庭園の道は緩やかな蛇行を繰り返して、王宮神殿の方へ向かうのだ。
『こっちはまっすぐ~。こっちはぐる~ってしてもどってくるの」
ティオが言う通りに一つの道はそのまま真っ直ぐに行く道だ。脇道に反れなければまっすぐに王宮神殿の方へと向かって伸びていて、そのままその横を通り、やがて街に繋がるこの門を破ってしまうかもしれない。
そして分かれてしまったこの道を進むと、ゆっくりと庭園を眺めながらお城の方に向かい、緩やかに蛇行しながらまた元の本流に戻るというか本流に繋がる。そして本流に戻った時の進行方向は……。
描いていた矢印が震えた。
大きな道と偶然出来て他の道と繋がってしまった脇道、そのまま流されるように進めば、この支流はやがて本流に戻りそのまま本流を逆行する形になる。もしも、まだ本流の流れがそのままだったなら、その流れに乗って進行方向は門の方になるかもしれない。けれど本流に戻った時に、もしも兄様たちが前から来る魔物たちと戦っていてその流れがなかったら。そしてぐるりと一周まわった先に獲物がいると分かったら、その魔物たちは喜んで後ろから襲い掛かるのではないだろうか。
矢印を書いたその道を僕は何度も見た。本流と支流。主道と脇道。
「……兄様が、危ない」
僕は目の前が真っ暗になったような気がした。
前から押し寄せる魔物たち、
そして支流を通って、城に近づき追われるようにしてそのまま本流に合流して、そして……。
「知らせないといけない。スタンピードが始まる前に」
「エディ兄様!」
「落ち着いて、エディ。書簡を出そう。それにもうすぐカルロス様から開始の知らせが来るよ」
トーマス君が僕の手を握り締めた。
「でも、ちゃんと説明をししないと! それに今からじゃスタンピードの討伐隊をニつに分けるのは難しいかもしれないし、無理に二手に分かれたら攻撃力が下がるよ! 兄様が、アル兄様が……」
「エディ! 落ち着いて」
まだ父様からの連絡は来ない。
南はこれから封印をするからレイモンドもお祖父様も動けない。
ハワード先生とスタンリー卿は新たな部屋の結界に必死だ。
王城もこれから迎え撃つスタンピードに備えていて、急な変更はきっとできない。それならば。
「落ち着こう。エディ。とにかく王城にこの事を知らせるんだ」
「なんて言って? お祖父様はここには居ないよ。誰が妖精の声を聞いたの? そうでなければどうしてこの事が判ったの?」
「それは……」
レナード君が思わず黙り込んだ。
「私がカルロス様にお願いをして」
テオの言葉を無視して僕は妖精に向かって話しかけた。
「……ティオ、リロイ、セームル、僕に力を貸して?」
『エディ?』
「君たちからもらったこの樹の苗をお祖父様が願う通りに成長させて封印を手伝ってほしいんだ」
「エディ!」
「エディ兄様!」
「エドワード様!」
色々なところから驚いたような声が聞こえる。
『この樹を?』
「うん。この樹の苗には僕がお祈りをしている。お祖父様の思う通りに育って、『首』を掴んで揺り籠になって眠らせてほしいって。そのお手伝いをしてほしい。その代わり、僕が、君たちの王様の森を魔物たちから守るよ」
『………………おおきいひとも手伝うから、森を頼むって』
「わかった。ありがとう。必ず約束を守るよ」
僕がそう言うと妖精たちはキラキラと輝いて眠りの樹の中にフッと消えた。
「エドワード様! 何を、何を言っておられるのですか!」
「ごめんね、マリー。でも、僕は」
だって、僕は兄様を殺さない為にずっとずっと頑張ってきたんだ。
この世界では僕は悪役令息ではなくて兄様を殺す事はなかった。だけど、僕が殺してしまうのでなくても、その理由がどんな事であっても、僕は兄様を死なせない。絶対に。失いたくないんだ!
マリーから視線を外して、僕は兄様に『スタンピードの事でどうしてもお話したい事があります。直接王城のには入れないので、王宮神殿に近い入口にいます』と声の書簡を出した。
そしてお祖父様と父様にも声の書簡を出した。
『お祖父様、封じ込めの手伝いをリロイ達がしてくれる事になりました。王の森のスタンピードに支流がある事が判りました。兄様が危険です。そちらへ向かいます』
『父様、スタンピードは一つだけではありません。支流が出来る可能性があります! 兄様が危ないです。そちらへ向かいます』
――――― あの力を使います。
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