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第8章  収束への道のり

308. 幕間

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 ふわりと体が浮いて、気づいたら闇に囚われていてた。
 自分が<人>ではなくなってしまったのだという事は分かった。でも、もうそんな事はどうでも良かった。
 「旦那様!? どちらですか? 旦那様!」という長年仕えてくれた者の声が遠くなって、私は監獄を抜け出した。
 そうだ。あそこを抜け出せるなら何にでもなろう。
 もういいのだ。私をこんな風にした者達を絶望の中に叩き落してやると決めたのだから。



 『声』は私の好きなようにしていいと言った。
 そしてこうすればいいとアドバイスもくれた。
 手始めに魔物と人とを隔てているという扉を開いた。『声』はそこを壊すために魔物達を寄越した。私は魔物たちに扉に付与されている陣を傷付けさせた。
 小さく開いた扉から私は中へと入った。全開する事は出来なかったが、それでも『声』は「よくやった」と言った。このまま陣が壊れれば、そのうち扉は完全に開いてしまうに違いない。
 よく分からないけれど、胸の中がスッとした。


 そして次に『声』は王都へと向かう道がある事を教えてくれた。
 そこに行く間に『声』がもっと動きやすくなるために協力をしてくれと言ってきた。
 私の元にはいつの間にか、私が使がいた。
 
 それは昔、私が見た事のある者であったり、どこかで会ったかもしれない者や、全く見覚えのない者もいたけれど、『声』が動きやすくなるならばいくらでも協力をしてやろうと、私はその者達を、言われた場所に送り込んだ。
 送り込んだ者達を見て、見覚えのある人間たちが『魔人』『アンデッド』と呼んだ。私は呼び名などはもはやどうでも良かった。ただ、焦っている姿が見られてまた胸の中がスッとした。

 するとお礼だと言って『声』は巨大な黒竜を出してくれた。見事な黒竜だった。
 黒竜をどこに向かわせようか、浮かんできたのはいつも私の邪魔ばかりをしていた者達の顔だった。
 私は「この男の元へ」と精霊を敬う当主の元にそれを送りつけてやった。
 そこには『声』の分身がいるらしく、『声』は「お前の考える事は素晴らしい」とまた褒めてくれた。

 私は今度こそ王都への道を抜けた。
すると再び扉が現れた。
 扉の守りの陣は固く、中々傷つけることが出来ない。私は残っていた使うことが出来るもの達と私と共に付いてきた小さな魔物達を陣の一点に思い切り叩き付けた。
 ようやく守りの一部が崩れはじめて、扉が小さく開いた。その途端、どこかでピシリと亀裂が入ったような音がして、『声』が嬉しそうに「よくやった」と言った。

 後ろで何かが騒ぎ出している
 
 最初の扉を完全に開け放した魔物たちが、音を立てて王都へ向かって来るのが判った。

 ざまぁみろ、私を蔑ろにしてあんな所に閉じ込めるから、こんな事になったのだ。みな自分の罪を悔いて罰をうけるがいい。魔物たちに蹂躙されて、人も、街も、全て壊れてしまえばいい。
 ああ、そうだ。私を陥れた人間たちの顔を見る為に、私もあの魔物たちと共に行こう。そして愚かな人間たちの無様な姿を心行くまで見るのだ。

 そう考えたら、楽しくて、おかしくて、私は声を立てて笑っていた。
 そうして私の、<人>だった意識は、深い深い闇の中に沈んでいった…………



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短いですが、この話と他の話をくっつけるのがどうしても嫌で、単独にしました。
その代わり本日は18時にもう一話更新します。


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