悪役令息になんかなりません!僕は兄様と幸せになります!

tamura-k

文字の大きさ
101 / 303
第8章  収束への道のり

269. 二つの『首』の事

しおりを挟む
 妖精や呪術の話はすぐに父様にもハワード先生にも、そしてお祖父様の知っている呪術師に詳しい人の所にも知らされた筈だった。だからそれに関する事はいずれ分かるだろう。
 だとすると後、気になるものはやっぱり『首』だ。



 翌日、学園から戻ると僕は机の上にいつものノートを広げた。
 以前にも思っていたんだ。第一の『首』<呪い>の封印を解くきっかけになって、それを受けたのは誰だったのかって。
 そして結局調べようがなくてそのままになっているけれど、色々と起きていた事は本当に<呪い>の禍と、厄災がもたらす『首』の封印が解け始める予兆だけだったのかって言うのも気になるんだよね。
 もっともそれは他の二つの『首』の封印がきちんとされたままだっていうのが確認できれば、予兆と<呪い>の『首』だけであんなにも色々な事が起きたんだって分かるんだけどね。

「やっぱりハーヴィンなのかなぁ。ハーヴィンの領主が亡くなったのは僕が6歳になった後くらいだよね。それから跡目の争いをずっとしていたんだ。そして翌年の五の月の、兄様が12歳になってすぐくらいに魔熊が東の森に現れたから……やっぱりハーヴィンが荒れ始めている時と予兆みたいなのが現れている時はほとんど一致しているんだよね」

 だとすれば西の国の先々王が<狂気>を受けたように、ハーヴィンの元領主が<呪い>を受けたのだろうか。そして領主自身は死んでしまって<呪い>はハーヴィンの関係者に広がっていったんだろうか。

 解けたきっかけは分からないけれど、それでも『首』の封印自体が屋敷の地下にあったわけだし。それとも領主が死んでしまって『首』の封印を押さえる者、というか後継者がいなくなってしまったから封印が緩んだのだろうか?
 そうすると<呪い>を受けたのは領主ではない?

「アンデッドになったって言われているのは領主の弟なんだよね。もしかして呪いを受けてアンテッドになってしまったのかな。でもどうして? もしかして領主以外はあの地下室への祈りの間に入る事が出来なかったのかな」

 アンテッドになったという事は、死ぬことも出来ないという呪いとも考えられる。そういう事なのだろうか?
 そして領主の弟は領主の妻も、跡目を争っていた入り婿も、殺して、その弟の息子も、領主の娘も探し求めたのだろうか。呪い続ける為に。

「でもこれは僕の想像でしかない……」

 大体起きた事が全て<呪い>によるものと厄災の予兆と決まったわけではないのだ。

 ではもしも、他の『首』の封印が解けかけていたとしたら。
 他の『首』に呼応するような事があるとしたら。
 あるいは、今回のこの事件が二つの『首』のどちらかに関わりがあるとしたら、<死>の『首』と<絶望>の『首』、その禍を振りかけられたのは誰なんだろう。

 二の『首』<死>の封印場所は旧レイモンド領とモーリス領の可能性がある。
 三の『首』<絶望>は王都内だ。

 でも消息不明者は、そこだけに限らず、王国の中の様々な領に出ている。

「というか、どうして人を集めているかもわからないんだよね」

 それに本当に無作為に集めているんだろうか。それも疑問だ。
 大体影に落ちると言うのもよく分からない。影に落ちた人はどこかにひとまとめにされているんだろうか?
 ただ、行方不明者を増やして不安を煽っているのだろうか。行方不明者を放っておくと不信感を煽るのが目的なんだろうか。

「でも、妖精を使ってまで集めているんだもの。何か人を集める目的がある筈だよ」

 では、それは一体なんだろう。
 呪術を使う者が行っているのであれば、やはり集められた人間も何かの呪術の為なんだろうか。
 そこに『首』が司る<死>や<絶望>はどう関わって来るのだろうか。
 もしかしたらその呪術師が『首』の禍を振りかけられて者なんだろうか。
 という事はもうどちらかの『首』の封印が緩み始めているのだろうか。
 いくら考えても疑問しか浮かんでこなくて、僕は一旦ペンを置いてノートから離れた。漏れ落ちる溜息。
  
「……死のイメージってどちらかっていうと、アンデッドとか一つ目に起きていた事の方が結びつきやすいんだけどな」
 
 死、死という言葉で思いつく事って何だろう。結びつく事。考えられる事。死。

「あ、いけない、<絶望>かもしれないんだった」

 ついつい二番目と考えてしまった。そうだった。可能性があるのは<死>、もしくは<絶望>だ。

「絶望って何だろう……」

 そう呟いた途端、コンコンコンとドアをノックする音が聞こえて僕はハッと意識を現実へと戻した。

「エディ、入るよ」
「! はい!」

 え? もう兄様が帰ってくるような時間なの?

「夕食もとらないでこもっていると聞いたよ。何かあったの?」
「すみません。ちょっと考えていたら時間を忘れてしまったようです」

 僕がそう言うと兄様は困ったような顔をして小さく笑った。

「この屋敷は出来る限りの結界を張っているし、エディの部屋は特に魔人の騒ぎ以降、呪術や念の様なものに対してもお祖父様が対応をして下さっているから大丈夫だと思うけれど、長い時間一人で居るのは避けなければいけないよ」
「はい。すみません」
「うん。それで、エディは何を考えていたの?」

 兄様は先ほどとは違う柔らかな笑みを浮かべながら、僕の机の上のノートを指さした。



--------------
エディファースト(笑)

しおりを挟む
感想 945

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。