言霊付与術師は、VRMMOでほのぼのライフを送りたい

工藤 流優空

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作ってみよう!物語のアイテム

シュウさんの記憶

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 ナイトメアソフトウェア。私が正社員として正式に雇用が決まった会社であり、シュウさんが所属している会社。

 今私たちがいるこの場所、この『Wonderland Fantasy Online』の世界を作り出した会社だ。難易度の高いゲームを作ることが多いし、正規ルート以外の抜け道も大量にあったりして、自由度が高いゲームを作ることが多い会社。

 あの男性もまた、ナイトメアソフトウェアの社員さんだったんだ。

「……こちらがすぐに顔を思い出せなかったのは、彼とは一度しか顔を合わせたことがなかったからだ」

 それを聞いて、私は首をかしげる。いくら同じ会社の社員さんとはいえ、一度しか顔を合わせたことがない人の顔を、覚えられるものだろうか。

「……もちろん、社内で何度もすれ違うことはあったかもしれない。でもそれはカウントには入らないだろう」

 シュウさんの言葉に、私は頷く。

「……なぜ一度しか会ったことがない人の顔を覚えているかの話だが。普段のこちらなら、絶対に覚えていない。ただ、今回は特別だ」

 シュウさんは顔をしかめた。

「何しろ、会議中に突然乱入してきたからな。勝手に記憶してしまうだろう」

 会議中に乱入。確かに、それなら覚えようとしなくても覚えちゃうかも。

「一体なぜ突入してきたんですか」

 アイダさんの言葉に、シュウさんは腕組みをしながら視線を泳がせる。

「あれは確か……。こちらがこのゲームでのスカウターとして仕事を任され、その仕事内容について説明を受けていた時だった。彼は突然会議室にやってくると、こういったんだ。……『ぼくのゲームを返してください』と」

 『ぼくのゲームを返してくれ』。……一体どういう意味だろう。

「その時の状況、詳しく覚えてますか」

 私の言葉に、シュウさんは頷く。

「……ああ、よく覚えている。彼は、すごく怒っていた。会話から察するに、どうやら彼は、会社をクビになったようだ。それで腹を立てていたんだと思う」
「会社をクビに……」

 会社をクビになるって、よっぽどのことだと思う。自分から退職を願い出たんじゃなくて、クビになったんだとしたら。転勤じゃなくてクビになるってことは、何か問題でも起こしたんだろうか。

「彼は、自分がクビになった理由を聞きたがっていた。同時にクビにするなら、ぼくのゲームを返せと」
「それに対して、彼は何か返答を得られたんですか」

 シュウさんは首を横に振った。

「……いや。ただ彼は、会議室から追い出されただけだった。なぜ彼がクビになったのか、それをこちらが知ることはなかった。一緒に呼ばれていた他のスカウターも同様だろう」

 ということは。この問題を解決するためには、あの男性がなぜ会社をクビになったのか、それを知る必要があるってことだね。

 さっき手に入れた彼のステータスデータ。これも参考になるかもしれない。だってこのゲームは、現実世界の本人と密接な関係があるんだから。
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