211 / 304
作ってみよう!物語のアイテム
脱出完了?
しおりを挟む
「アイダさん、先に手順を踏んでください。私は2番目にやります」
私の言葉に、アイダさんは頷いた。そして小さく言葉を繰り返す。
「左に3歩、右に6歩、前に1歩。左に3歩、右に6歩、前に1歩……」
そして、ゆっくりと足を動かし始める。その足取りは、少し震えていた。下手に声をかけたら余計に緊張させてしまいそうだから、アイダさんの様子を私は黙って見つめた。
「左に3歩、右に6歩、前に1歩……。できたっ」
アイダさんがそう言った瞬間。アイダさんの姿が消えた。まるで、最初からアイダさんがそこにいなかったみたいに。
「……無事に、脱出できたみたいだな」
シュウさんが息を吐き出しながら言う。
「そうみたいですね」
私も同意する。それじゃ、今度は私の番。シュウさんから送ってもらったチャットの文言を自分の視界の端にとらえながら、一歩ずつ、手順を踏む。
まずは、左に3歩。次に、右に6歩。さらに、前に1歩。それらの手順を一息でやってしまう。手順は間違ってない。これで、脱出できるはず!
気が付くと、カンナさんのお店まで戻ってきていた。傍らには、安心した様子のアイダさんの顔。
「よかった、無事に帰ってこられたんですね」
アイダさんの言葉に私はぶんぶんと首を縦に振る。よかった。本当に無事に戻ってこられてよかった。あの場所に戻されてたらと思うとぞっとする。
「あとは、シュウさんを待つだけですね」
私が言ったのとほぼ同時に私の隣にシュウさんが現れた。
「あ、シュウさん! よかった、シュウさんも戻ってこられたんですね!」
私が声をかけると、シュウさんは大きなため息をついた。
「……どうなるかとは思ったが、出口が封鎖されていなくてよかった」
「え」
「……いや、あの抜け道自体は会社に属する全員に送られた連絡事項のメールに記載があったんだが。……ただ、本来の用途を失ったので、当分封鎖するとあったんだ」
いやいやいや! 封鎖されている可能性があったの!?
「……そんなことを言えば、不安にさせるだけかと思って黙っていた、すまない」
いや、それなら最後まで黙っておいて頂けると助かります、ハイ。思わず出かかった言葉を飲み込む。よし、話題を変えよう。
「それじゃ、無事に脱出できたことですし。シュウさん、あの男性についての情報を教えてください」
シュウさんと男性の関係。それが分かれば、一歩前進になるかもしれない。もちろん、私が作った道具で得た男性のステータスも後でじっくり見てみるつもりだけど、まずは、シュウさんから話を聞きたい。
「……わかった。単刀直入に言おう。あの男は、こちらと同じ、ナイトメアソフトウェアに所属していた社員だ」
私の言葉に、アイダさんは頷いた。そして小さく言葉を繰り返す。
「左に3歩、右に6歩、前に1歩。左に3歩、右に6歩、前に1歩……」
そして、ゆっくりと足を動かし始める。その足取りは、少し震えていた。下手に声をかけたら余計に緊張させてしまいそうだから、アイダさんの様子を私は黙って見つめた。
「左に3歩、右に6歩、前に1歩……。できたっ」
アイダさんがそう言った瞬間。アイダさんの姿が消えた。まるで、最初からアイダさんがそこにいなかったみたいに。
「……無事に、脱出できたみたいだな」
シュウさんが息を吐き出しながら言う。
「そうみたいですね」
私も同意する。それじゃ、今度は私の番。シュウさんから送ってもらったチャットの文言を自分の視界の端にとらえながら、一歩ずつ、手順を踏む。
まずは、左に3歩。次に、右に6歩。さらに、前に1歩。それらの手順を一息でやってしまう。手順は間違ってない。これで、脱出できるはず!
気が付くと、カンナさんのお店まで戻ってきていた。傍らには、安心した様子のアイダさんの顔。
「よかった、無事に帰ってこられたんですね」
アイダさんの言葉に私はぶんぶんと首を縦に振る。よかった。本当に無事に戻ってこられてよかった。あの場所に戻されてたらと思うとぞっとする。
「あとは、シュウさんを待つだけですね」
私が言ったのとほぼ同時に私の隣にシュウさんが現れた。
「あ、シュウさん! よかった、シュウさんも戻ってこられたんですね!」
私が声をかけると、シュウさんは大きなため息をついた。
「……どうなるかとは思ったが、出口が封鎖されていなくてよかった」
「え」
「……いや、あの抜け道自体は会社に属する全員に送られた連絡事項のメールに記載があったんだが。……ただ、本来の用途を失ったので、当分封鎖するとあったんだ」
いやいやいや! 封鎖されている可能性があったの!?
「……そんなことを言えば、不安にさせるだけかと思って黙っていた、すまない」
いや、それなら最後まで黙っておいて頂けると助かります、ハイ。思わず出かかった言葉を飲み込む。よし、話題を変えよう。
「それじゃ、無事に脱出できたことですし。シュウさん、あの男性についての情報を教えてください」
シュウさんと男性の関係。それが分かれば、一歩前進になるかもしれない。もちろん、私が作った道具で得た男性のステータスも後でじっくり見てみるつもりだけど、まずは、シュウさんから話を聞きたい。
「……わかった。単刀直入に言おう。あの男は、こちらと同じ、ナイトメアソフトウェアに所属していた社員だ」
20
お気に入りに追加
615
あなたにおすすめの小説
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる