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第1部 大韓の建国

【南魏国】

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 このならず者達を率いている首領は、陳燕と言い、かつての魯国の王子であった。
軍師として支えているのは、かつて魏朝で科挙の進士(科挙の最終試験である殿士に合格した者の事)であり、「深花」でもあった呂丘安であった。
 「深花」とは、科挙の合格者のうち第3席の事を指す。進士の中で、首席合格した者を特に「状元」と呼び、続く第2席が「榜眼」、第3席は「深花」と呼ばれた。
 魏朝に仕えた状元も榜眼も、北遼軍に殺されてすでにこの世にはなく、深花の呂丘安だけが生き残り、この山塞の軍師として陳燕を支えていたのである。
 彼らは、北遼を中華から一掃し、魏朝の再興を目指していた。その為、山塞の首領に過ぎないはずの彼らが、南魏と称していた。首領である陳燕は魏の皇族ではない為、自らを魏の相国と称して、周辺地域を支配していた。いずれ魏の皇族が見つかれば、その椅子に座って頂く為に。
 この南魏国は、太湖に浮かぶ島々を総称して呼んでいた様である。
 太湖は、北岸の無錫、西岸の宜興、東岸の蘇州、南岸の湖州(浙江省)に囲まれた湖で、琵琶湖のおよそ3.4倍の大きさである。周辺は、「魚米の郷」と呼ばれる中国でも有数の豊かさを誇る穀倉地帯・淡水漁業地帯であり、食べるに困らず、周辺は水滸伝の梁山泊の様に水軍でなければ山塞に辿り着く事が出来ない為、難攻不落であった。また、お茶の栽培や陶磁器の生産地としても有名な土地だ。
 南魏国は、斉の李王が皇帝を僭称した事に対して激怒し、周辺の斉の領土に度々掠奪を繰り返していた。
 斉の武帝は、日頃から苦々しく思っており、遂に討伐命令を下した。一触即発の不穏な空気が住民達に広がっていた。
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