異世界無宿

ゆきねる

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第二十一章 武器が出来るまで

第三百二十話 領主が話をしたいそうです

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屋敷で偶然見つけたアヤに声を掛け、自由に使える井戸の場所を教えてもらうと、馬車置き場からマスタングを出して洗車を始める。

天気は快晴であり、正に絶好の洗車日和なのだ。

先ずは汚れを水で落とし、その後で頑固な汚れに対応する。
今回はホイールも念入りに拭いて綺麗にする予定なので、結構時間がかかる心づもりでいる。
水分補給がてら休憩を挟んでいたら、冒険者ギルドから戻って来たベリアの姿が見えた。

「イズミ、アダマンタイトの買取り金の受け取りなんだけどさ…もうヒュミトールの領主にも話が行ったみたいだ。商人ギルドも金の動きを察知しているそうだ」

「買取り自体は冒険者ギルドだろ?」

「そう。冒険者ギルドが主体で支払いをするとは言ってたけど、商人ギルドから茶々を入れられないように領主に頼んだみたいで、分割払いにはしない調整をしてるってさ」

詳しく聞くと、この冒険者からの素材買取りの段階で商人ギルドを入れると、殆どの確率で揉めるらしい。
そもそもが希少金属であり、腕の立つ騎士や冒険者ならば欲しがる装備の素材でもあるからだ。

オークションで売りに出せばかなりの儲けになるらしいが、まず単なる冒険者や旅人が出品者になる事自体が難しいとの事だった。
さっさと冒険者ギルドに買い取らせるのが、普通の冒険者としては正しい選択になるのだろう。

「俺達の手元にはアダマンタイトは残らないようにしてあるから、俺達の所には人は来ないだろ?」

「それなりの金は入って来るから、投資やら高級品やらを買わないかとか、色々誘いが来る事間違い無しだ」

そう言ったベリアの尻尾がシュンと下がる。
考えただけで気が滅入ったのだろう。

「そう言えば、ヘスティア様からの加護はどうなったんだ?」

「授かったみたいだけど、まだ実感は出来てないな」

「そうか。さっきまで馬車置き場にあの野良猫が居たから、まだ居たら聞いてみたらどうだ」

「そうする」

馬車置き場へ向かうベリアを見送ると、イズミはマスタングの洗車を再開する。
洗車の時は腕時計を外しているので気付かなかったが、大体の作業が終わった時には正午手前になっていた。

車内も軽く掃除をしていると、フラウリアが渋い顔をしながらやって来た。

「イズミさん、少しお時間を頂けますか?」

「どうぞ。此処でも大丈夫な話題であれば良いのですが」

マスタングの車内から出て来たイズミは、汗を拭ってからフラウリアの元へ向かう。

「先程、此処の領主より書面が届きまして」

「それは…いわゆる出頭命令ってやつですか?」

「まだ依頼という体ではありますけど」

そこまで言ったフラウリアは一度周囲を確認する。
特に盗聴等はされていないようで、一呼吸置いたのを見てから小声で質問する。

「…何で目を付けられましたかね?」

「思い当たる節があるとすれば…女神様への奉納の儀、ゴーレム討伐とアダマンタイト入手への関与、我々から賓客として迎えられている。その他複数ですかね」

事実を並べただけでも、どれも領主から声がかかる理由としては妥当に感じてしまう。

「断る理由もまだありませんが、相手方の魂胆は知りたいですね」

「我々からの圧もあるので、深くは聞かれないと思いますが。領主は既に冒険者ギルドからイズミさんに関する情報の提供は受けています」

「具体的には、どの程度?」

「当然、イズミさんが初めて冒険者ギルドに赴いた時から記録されている全資料です。私も確認済みですが、実際の戦闘を目の当たりにしていないと信じられない報告ばかりですけどね」

「俺も気が滅入りそうだ」

ベリアのナイフ完成もアダマンタイトの支払いも少し先になるので、近日中ならば対応可能だと伝える事にした。
それを聞いたフラウリアの姿が屋敷へと戻ったのを確認したイズミは、マスタングの元へ戻りながら大きなため息をついた。
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