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第十四章 運び屋稼業も楽じゃない
第百八十四話 魔王来たる
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走り始めたマスタングの車内にて、ベリアが質問を投げた。
「さっきの奴等は何者だ?」
「聞いてはいないが、死んだ奴はアンドレアスと呼ばれてたな」
「…流来の誓い。Aランクの冒険者パーティーだ、聞いた話では大男が前衛で敵を薙ぎ払うと」
苦虫を噛み潰したような表情をするベリアだったが、イズミは表情1つ変えずに言葉を紡いだ。
「Aランクにしては、迂闊な奴だったよ。相手の戦闘スタイル、使用する武器の特徴も知らずに、取り敢えず自分が戦えば何とかなるみたいな自信が命取りだったのさ」
「派手にやらかすと、今後はもっと冒険者ギルドと険悪な関係になるかもしれないぞ?」
「ベリア…俺とマスタングが冒険者ギルドに関係悪化して困るとでも?」
イズミの笑顔を見たベリアの顔から血の気が引くのが分かる。
イズミの言葉に、本気を感じたのだ。
「現状冒険者ギルドは俺にとって、そこまで利用価値は無い」
「いや確かにギルドの上層部にはキナ臭い話があったりもするけど」
「派閥争いや魔物騒ぎの対応、国とのイザコザに巻き込まれる可能性を考えると、むしろ冒険者ギルドは俺の旅路には邪魔だな」
「そりゃイズミなら自力で解決するかもだけどよ、度が過ぎるとギルドから賞金首として指名手配される事もあるぞ」
「カーネリアと卵を無事に届けた後なら、指名手配されても別に良いかな…でも旅がし難くなるか、度が過ぎないように頑張るか?」
イズミとベリアは今後の旅路に関して打ち合わせをしつつ、当初の予定より少し早めに移動をする。
何者かに追跡される可能性も、捨て切れないからだ。
その日の夕方。
夜営地とした場所でベリアが焚火の準備をしてくれた。
炎魔法でサッと火を点けると、炎が安定するのを待つ。
イズミはマスタングに周囲の索敵を頼んでから、夕食の準備に取りかかる。
「イズミ…何かゴメンな」
カーネリアがマスタングから降りてきて、ボソリと呟いた。
「気にするな。俺は出自が特殊なんだ、仕事と信念の為なら世界を敵に回す覚悟すら持て…そう教わっていてね」
カーネリアの頭を優しく撫でる。
「カーネリアが気にする事じゃないのさ。俺が自らに定めたルール、そして俺が自分で引き受けた仕事だ。ちゃんと無事に届けますよ…さて、夕食にしましょう!」
「イズミ…ありがとう。スープには七味?が欲しい!」
しんみりした雰囲気を振り解くかのように、カーネリアの元気な声が響いた。
食事を皆で取っていると、唐突にカーネリアがイズミのバングルを指差す。
「イズミ、なんか光ってるぞ?」
左手に付けているバングルの石が光の反射ではなく、自ら淡い光を放っている。
「…こんばんは。今はお時間よろしいですか?」
石かルノさんの声が聞こえる。
原理は一切分からないが、聞こえたならば返事をするのが道理だろう。
「ルノさん、食事中ですが大丈夫ですよ」
「分かりました。では…」
ルノがそう言うと石の光が消える。
同時にルノさんがヌルっと何もない空間から現れた。
今回は男性も同伴している。
「おぉ…お主がイズミか」
男がイズミを見つめる。
ふと視線をベリアに向けると、尻尾をブワッと逆立て目を真ん丸にして固まっている。
「!王、来たんだ!」
「カーネリアよ、息災か?」
「元気も元気!卵も無事!」
笑顔でピースサインをするカーネリアを見て、イズミは少し安心した。
安心はしたのだが…
「王、ですか」
「私の夫ですわ」
ルノがしれっと言った。
「うむ。我はこの世界にて魔王と呼ばれている。名は長いので省略させて貰うが、今後ともよろしく頼みたい」
「ご丁寧にどうもありがとうございます。此方こそ、何卒宜しくお願い致します」
魔王が右手を差し出して来たので、イズミは握手を交わす。
まさか魔王が目の前に現れるとは…
自分は勇者でも何でも無いのだが、事実は小説より奇なりという言葉が、冷や汗を浮かべるイズミの脳内にて浮かんでいた。
「さっきの奴等は何者だ?」
「聞いてはいないが、死んだ奴はアンドレアスと呼ばれてたな」
「…流来の誓い。Aランクの冒険者パーティーだ、聞いた話では大男が前衛で敵を薙ぎ払うと」
苦虫を噛み潰したような表情をするベリアだったが、イズミは表情1つ変えずに言葉を紡いだ。
「Aランクにしては、迂闊な奴だったよ。相手の戦闘スタイル、使用する武器の特徴も知らずに、取り敢えず自分が戦えば何とかなるみたいな自信が命取りだったのさ」
「派手にやらかすと、今後はもっと冒険者ギルドと険悪な関係になるかもしれないぞ?」
「ベリア…俺とマスタングが冒険者ギルドに関係悪化して困るとでも?」
イズミの笑顔を見たベリアの顔から血の気が引くのが分かる。
イズミの言葉に、本気を感じたのだ。
「現状冒険者ギルドは俺にとって、そこまで利用価値は無い」
「いや確かにギルドの上層部にはキナ臭い話があったりもするけど」
「派閥争いや魔物騒ぎの対応、国とのイザコザに巻き込まれる可能性を考えると、むしろ冒険者ギルドは俺の旅路には邪魔だな」
「そりゃイズミなら自力で解決するかもだけどよ、度が過ぎるとギルドから賞金首として指名手配される事もあるぞ」
「カーネリアと卵を無事に届けた後なら、指名手配されても別に良いかな…でも旅がし難くなるか、度が過ぎないように頑張るか?」
イズミとベリアは今後の旅路に関して打ち合わせをしつつ、当初の予定より少し早めに移動をする。
何者かに追跡される可能性も、捨て切れないからだ。
その日の夕方。
夜営地とした場所でベリアが焚火の準備をしてくれた。
炎魔法でサッと火を点けると、炎が安定するのを待つ。
イズミはマスタングに周囲の索敵を頼んでから、夕食の準備に取りかかる。
「イズミ…何かゴメンな」
カーネリアがマスタングから降りてきて、ボソリと呟いた。
「気にするな。俺は出自が特殊なんだ、仕事と信念の為なら世界を敵に回す覚悟すら持て…そう教わっていてね」
カーネリアの頭を優しく撫でる。
「カーネリアが気にする事じゃないのさ。俺が自らに定めたルール、そして俺が自分で引き受けた仕事だ。ちゃんと無事に届けますよ…さて、夕食にしましょう!」
「イズミ…ありがとう。スープには七味?が欲しい!」
しんみりした雰囲気を振り解くかのように、カーネリアの元気な声が響いた。
食事を皆で取っていると、唐突にカーネリアがイズミのバングルを指差す。
「イズミ、なんか光ってるぞ?」
左手に付けているバングルの石が光の反射ではなく、自ら淡い光を放っている。
「…こんばんは。今はお時間よろしいですか?」
石かルノさんの声が聞こえる。
原理は一切分からないが、聞こえたならば返事をするのが道理だろう。
「ルノさん、食事中ですが大丈夫ですよ」
「分かりました。では…」
ルノがそう言うと石の光が消える。
同時にルノさんがヌルっと何もない空間から現れた。
今回は男性も同伴している。
「おぉ…お主がイズミか」
男がイズミを見つめる。
ふと視線をベリアに向けると、尻尾をブワッと逆立て目を真ん丸にして固まっている。
「!王、来たんだ!」
「カーネリアよ、息災か?」
「元気も元気!卵も無事!」
笑顔でピースサインをするカーネリアを見て、イズミは少し安心した。
安心はしたのだが…
「王、ですか」
「私の夫ですわ」
ルノがしれっと言った。
「うむ。我はこの世界にて魔王と呼ばれている。名は長いので省略させて貰うが、今後ともよろしく頼みたい」
「ご丁寧にどうもありがとうございます。此方こそ、何卒宜しくお願い致します」
魔王が右手を差し出して来たので、イズミは握手を交わす。
まさか魔王が目の前に現れるとは…
自分は勇者でも何でも無いのだが、事実は小説より奇なりという言葉が、冷や汗を浮かべるイズミの脳内にて浮かんでいた。
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