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第七章 貴族と冒険者ギルド
第八十二話 駆け引き
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「貴方がイズミさんですか…ご活躍は多方面から聞いております。私は冒険者ギルド本部のアッシュと申します」
アッシュと名乗る男は、軽く会釈をして話を続けた。
「今回の調査にて『暁と盃』の援護をして戴いたとの事。誠にありがとうございます」
「いえいえ、お気になさらず」
イズミはなるべく印象が悪くならないように気を付けつつ、言葉少なく返答をした。
「詳細は『暁と盃』が本部に戻ってからになるかと存じますが、サイクロプスのドロップ品や頭蓋骨の調査及び鑑定は、我々冒険者ギルドで行うと言う認識でよろしいのでしょうか?」
「それで構いません。それと調査結果を私に伝える必要はありませんし、鑑定に出るドロップ品に関する全権利は『暁と盃』に譲渡します」
なるべく自分に面倒が回って来ないように、イズミは思いつく悪知恵の限りで答えた。
トーマス達は一斉にイズミの方を見たが、イズミはどこ吹く風だった。
「…分かりました。ではそのように致します。」
アッシュはあっさりと答え、手元の紙に何かを書いていた。
「それと…サイクロプスとの戦闘について幾つか確認をさせて頂きたいのですが、よろしいですか?」
イズミはこれが自分に対する彼等の本題ではないかと勘繰った。
冒険者ギルドのお偉いさんなのだから、この魔法通信の前に自分の情報を確認していると考える。
冒険者申請が通らなかった時から、狂暴化したオーガの対応、恐らく賊との戦闘や騎士の坊やの件も知っているだろう。
「答えられる範囲は限られてますが」
イズミは前置きをして、アッシュの出方を伺った。
「まずサイクロプスはAランクの魔物です。平原に潜むサイクロプスをどう探知したのでしょうか?」
「相棒のカレンがエルフ族でしてね。彼女の索敵に引っ掛かったのです」
アーティファクトの事は伏せて答えた。
「ダンジョン内に月明かりはあったとの事ですが、それだけで対象を目視出来た訳ではありませんね?」
「…一時的ですが、空に明かりを打ち出せる魔法具を使用しました」
グレネードランチャーと照明弾については、かなり大雑把にぼやかした。
「サイクロプスへの攻撃手段ですが、かなり遠距離から攻撃を行ったと聞きましたが」
「詳しくは護身の為に伏せさせて頂きますが、私は遠距離攻撃が可能な魔法具を持っております。それを使ったと言っておきましょう」
アッシュの目が鋭くなったように感じたが、それは間違いではないだろう。
武器に関しては冒険者ギルドでも秘密にしていたからだ。
「…分かりました。御協力感謝致します」
長考の末、アッシュは深追いを止めた。
変に深追いすると、互いに面倒な展開になると踏んだのだろう。
「では『暁と盃』の報告の続きを」
トーマス達が報告を再開したので、イズミは小さく息を吐いた。
「では、これで報告を終了致します」
「少々お待ちを」
トーマスが報告を終えて魔法通信を切ろうとした時に、アッシュの後ろにいた貴族の男が声を上げた。
「イズミ殿にお伺いしたい…恥ずかしながら、私には貴方の行動が読み切れない。賊を討ったと思えば魔物の討伐を独自に行い、ダンジョン発見に関与している。私の目には場当たり的な行動に写るが、何か目的がおありなのだろうか?」
この貴族は中々に答えづらい事を聞いてくる。
イズミは少しだけ間を置いて口を開いた。
「元々は冒険者に成れたらと思っていたのですが、私のような無宿人は冒険者登録が出来ないとの事でしてね…今は旅人として目的も宛も無く、自由に旅をしようと思っております」
賊を討つのは、賊が攻撃して来たからやり返しただけです。
ダンジョン発見はカレンの功績で、自分はただその場に居合わせただけです。
そう答えると、貴族は険しい表情をしつつも、この場は感謝の言葉を述べて一歩後ろへ下がった。
アッシュと名乗る男は、軽く会釈をして話を続けた。
「今回の調査にて『暁と盃』の援護をして戴いたとの事。誠にありがとうございます」
「いえいえ、お気になさらず」
イズミはなるべく印象が悪くならないように気を付けつつ、言葉少なく返答をした。
「詳細は『暁と盃』が本部に戻ってからになるかと存じますが、サイクロプスのドロップ品や頭蓋骨の調査及び鑑定は、我々冒険者ギルドで行うと言う認識でよろしいのでしょうか?」
「それで構いません。それと調査結果を私に伝える必要はありませんし、鑑定に出るドロップ品に関する全権利は『暁と盃』に譲渡します」
なるべく自分に面倒が回って来ないように、イズミは思いつく悪知恵の限りで答えた。
トーマス達は一斉にイズミの方を見たが、イズミはどこ吹く風だった。
「…分かりました。ではそのように致します。」
アッシュはあっさりと答え、手元の紙に何かを書いていた。
「それと…サイクロプスとの戦闘について幾つか確認をさせて頂きたいのですが、よろしいですか?」
イズミはこれが自分に対する彼等の本題ではないかと勘繰った。
冒険者ギルドのお偉いさんなのだから、この魔法通信の前に自分の情報を確認していると考える。
冒険者申請が通らなかった時から、狂暴化したオーガの対応、恐らく賊との戦闘や騎士の坊やの件も知っているだろう。
「答えられる範囲は限られてますが」
イズミは前置きをして、アッシュの出方を伺った。
「まずサイクロプスはAランクの魔物です。平原に潜むサイクロプスをどう探知したのでしょうか?」
「相棒のカレンがエルフ族でしてね。彼女の索敵に引っ掛かったのです」
アーティファクトの事は伏せて答えた。
「ダンジョン内に月明かりはあったとの事ですが、それだけで対象を目視出来た訳ではありませんね?」
「…一時的ですが、空に明かりを打ち出せる魔法具を使用しました」
グレネードランチャーと照明弾については、かなり大雑把にぼやかした。
「サイクロプスへの攻撃手段ですが、かなり遠距離から攻撃を行ったと聞きましたが」
「詳しくは護身の為に伏せさせて頂きますが、私は遠距離攻撃が可能な魔法具を持っております。それを使ったと言っておきましょう」
アッシュの目が鋭くなったように感じたが、それは間違いではないだろう。
武器に関しては冒険者ギルドでも秘密にしていたからだ。
「…分かりました。御協力感謝致します」
長考の末、アッシュは深追いを止めた。
変に深追いすると、互いに面倒な展開になると踏んだのだろう。
「では『暁と盃』の報告の続きを」
トーマス達が報告を再開したので、イズミは小さく息を吐いた。
「では、これで報告を終了致します」
「少々お待ちを」
トーマスが報告を終えて魔法通信を切ろうとした時に、アッシュの後ろにいた貴族の男が声を上げた。
「イズミ殿にお伺いしたい…恥ずかしながら、私には貴方の行動が読み切れない。賊を討ったと思えば魔物の討伐を独自に行い、ダンジョン発見に関与している。私の目には場当たり的な行動に写るが、何か目的がおありなのだろうか?」
この貴族は中々に答えづらい事を聞いてくる。
イズミは少しだけ間を置いて口を開いた。
「元々は冒険者に成れたらと思っていたのですが、私のような無宿人は冒険者登録が出来ないとの事でしてね…今は旅人として目的も宛も無く、自由に旅をしようと思っております」
賊を討つのは、賊が攻撃して来たからやり返しただけです。
ダンジョン発見はカレンの功績で、自分はただその場に居合わせただけです。
そう答えると、貴族は険しい表情をしつつも、この場は感謝の言葉を述べて一歩後ろへ下がった。
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