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王都突入編
152話 ヘイ、そこの金髪ガール
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「さあー、温泉のあとは待ちに待った夕食の時間にゃあっ!」
浴衣を羽織り、皆で食事処に向かう。
小鍋や煮物、お刺し身、和を全開にした豪華な料理が並べられていく。
オンリー・テイルにある食材でここまで再現が可能なことに驚いた。口をつける前からテンションがうなぎ登りである。
僕とニャニャンはお酒、ホムラとナコはジュースを注文する。
最初、ホムラもお酒をと言ったのだがニャニャンが全力で阻止していた。ニャニャンにしては珍しく、真剣な顔付きだったのでそれなりの理由があるのだろう。
考えられるのは酒乱か、ホムラならありえそうな話である。
皆でグラスを持ち上げ、さあ乾杯という直前、
「それでは、今日の主役のソラにゃんから挨拶をどうぞ」
「相変わらず、無茶振りしてくるよね」
素直な気持ちを簡潔に言葉にしよう。
僕が主役であるならば、もう一人主役といっても過言ではない人物がいる。
僕はその人物に向けて微笑みかける。
「ナコ、僕を信じて付いて来てくれて――ありがとう」
乾杯、と皆でグラスを合わせる。
その瞬間、ナコがポロポロと涙を零し出した。ホムラがナコの背中をなでながら、すごい形相で僕を睨んでくる。
ニャニャンがやれやれといった顔付きで、
「ソラにゃんも罪なこと言うねえ」
「いや、泣かせるつもりなんて1ミリ足りともなくて――心に思い浮かんだ言葉を口にしただけだよ」
「うぅ、うぁああっ」
ナコの涙がさらに加速してしまう。
「ソラちゃんもう喋らないでよっ! ナコちゃんが泣いちゃうでしょっ!! 一生口を閉じておいてっ!」
「極論すぎないっ?!」
「……ごめん、なさい。クーラは、悪くないです、違うんです」
ナコは言う。
「クーラの言葉が、とても嬉しくて」
「……ナコ」
「クーラ、私を連れて行ってくれて――ありがとうございます」
お互いを想い合う、それはなんて幸せなことだろうか。
乾杯の挨拶からかなり道が逸れた気はするが、王都に着いて改めて気持ちを言葉にすることができてよかったと思う。
――僕たちは一つの目標を達成した。
あとは夢のオフ会、僕の妹の存在、少しずつではあるが一歩ずつ着実に進んでいると実感できた夜だった。
楽しい夕食も幕を閉じ、各々部屋に戻る。
今ごろ、ナコとホムラはゆっくりと二人で再会を喜びあっているに違いない。
ナコも誰かのいる前では素直になれないだけだろう。
「さて、と」
僕はそっと扉を開き――部屋を出る。
ナコの監視の目から逃れた今、僕を縛るものはなにもない。
ナコとの絆がより深まった気がした矢先にこれはどうかと思うが、チャンスは今しかないのだ。
そう、今行かずして――いつ行く?
すでに館内の大部分は消灯されており人の気配はない。僕は抜き足差し足忍び足、廊下を突き進んで行く。
ここまで来れば一安心、あとは外にでるだけといった折、
「ヘイ、そこの金髪ガール、どこに行くんだい?」
僕の行動を見透かしていたのか。
待っていたと言わんばかりに――壁に寄りかかりながら腕を組み、ニャニャンが出入り口の前に立っていた。
浴衣を羽織り、皆で食事処に向かう。
小鍋や煮物、お刺し身、和を全開にした豪華な料理が並べられていく。
オンリー・テイルにある食材でここまで再現が可能なことに驚いた。口をつける前からテンションがうなぎ登りである。
僕とニャニャンはお酒、ホムラとナコはジュースを注文する。
最初、ホムラもお酒をと言ったのだがニャニャンが全力で阻止していた。ニャニャンにしては珍しく、真剣な顔付きだったのでそれなりの理由があるのだろう。
考えられるのは酒乱か、ホムラならありえそうな話である。
皆でグラスを持ち上げ、さあ乾杯という直前、
「それでは、今日の主役のソラにゃんから挨拶をどうぞ」
「相変わらず、無茶振りしてくるよね」
素直な気持ちを簡潔に言葉にしよう。
僕が主役であるならば、もう一人主役といっても過言ではない人物がいる。
僕はその人物に向けて微笑みかける。
「ナコ、僕を信じて付いて来てくれて――ありがとう」
乾杯、と皆でグラスを合わせる。
その瞬間、ナコがポロポロと涙を零し出した。ホムラがナコの背中をなでながら、すごい形相で僕を睨んでくる。
ニャニャンがやれやれといった顔付きで、
「ソラにゃんも罪なこと言うねえ」
「いや、泣かせるつもりなんて1ミリ足りともなくて――心に思い浮かんだ言葉を口にしただけだよ」
「うぅ、うぁああっ」
ナコの涙がさらに加速してしまう。
「ソラちゃんもう喋らないでよっ! ナコちゃんが泣いちゃうでしょっ!! 一生口を閉じておいてっ!」
「極論すぎないっ?!」
「……ごめん、なさい。クーラは、悪くないです、違うんです」
ナコは言う。
「クーラの言葉が、とても嬉しくて」
「……ナコ」
「クーラ、私を連れて行ってくれて――ありがとうございます」
お互いを想い合う、それはなんて幸せなことだろうか。
乾杯の挨拶からかなり道が逸れた気はするが、王都に着いて改めて気持ちを言葉にすることができてよかったと思う。
――僕たちは一つの目標を達成した。
あとは夢のオフ会、僕の妹の存在、少しずつではあるが一歩ずつ着実に進んでいると実感できた夜だった。
楽しい夕食も幕を閉じ、各々部屋に戻る。
今ごろ、ナコとホムラはゆっくりと二人で再会を喜びあっているに違いない。
ナコも誰かのいる前では素直になれないだけだろう。
「さて、と」
僕はそっと扉を開き――部屋を出る。
ナコの監視の目から逃れた今、僕を縛るものはなにもない。
ナコとの絆がより深まった気がした矢先にこれはどうかと思うが、チャンスは今しかないのだ。
そう、今行かずして――いつ行く?
すでに館内の大部分は消灯されており人の気配はない。僕は抜き足差し足忍び足、廊下を突き進んで行く。
ここまで来れば一安心、あとは外にでるだけといった折、
「ヘイ、そこの金髪ガール、どこに行くんだい?」
僕の行動を見透かしていたのか。
待っていたと言わんばかりに――壁に寄りかかりながら腕を組み、ニャニャンが出入り口の前に立っていた。
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