71 / 359
最強の武者Gozaru編
71話 天使の雫
しおりを挟む
ゴザルさんのパラサイト装備、駆除作業を実行する。
使用方法は――以前ナコに使った天使の鍵と同じく、対象に近付けるか当てるかのどちらかだろう。アイテムボックスから取り出すと小さな瓶に虹色の液体、なんともわかりやすい形状である。
さすがに、使用方法は一つに違いない。
「じゃあ、天使の雫をかけるよ」
「つ、ついに解放される――嬉しい! お願いします」
まず、両腕に一滴ずつ垂らす。
その瞬間、青紫色の瘴気のようなものが噴き出し、鎧の両腕部がバラバラになって外れた。
続けて、胴体、両足、ゴザルさんの姿が露わになっていく。
「え? ゴザルさん?」
思わず、僕は声を漏らす。
ザ・マッチョです的な男性がでてくるかと思いきや――透き通るように白い肌、ナコより少し大きいくらいの小柄な背丈、控えめながらもしっかり膨らんだ胸、兜の隙間からは煌めく銀色の髪が流れ出ている。
全身が女性であることを物語っていた。
「く、クーラ、見ちゃ駄目!」
ナコが僕の目を隠す。
基本的に装備の下は軽装がメイン、完全に乙女の下着だったよな。
そんな僕たちの態度を不思議に思ったのか、
「二人共、慌ててどうかした?」
「……いや、どうしたもなにも。ゴザルさんって女性だったの?」
「私? そうだけど」
ゴザルさんはなにかを思い出したように手を叩き、
「あ、そういえば、私今まで皆の前で装備外したことなかったもんね。中身を見せるのはソラが初めてかもしれないわ」
キャラクターの性別はリアルと共通していることが多い。
オンリー・テイルのゲームは仕様上、キャラクターを作成する段階にて個人の証明書が必須となっている。個人の証明書に記載されている性別でしかキャラクターは作成できないのだ。
僕のよう家族に協力してもらい自身の性別とは逆のキャラクターを作成することも可能ではあるが、手間もかかるため大多数はありのままいく人が多いだろう。
ゴザルさん、男性にしては声が高いなぁとは思っていたけれど――厳つい装備の見た目からは女性だったなんて想像もしていなかった。
僕は反対方向を向き、ナコの目隠しを外してもらう。
「ゴザルさん、上からなにか羽織ってくれると嬉しいな。そんな裸に近い状態僕に見られたらまずいでしょ」
「まずいもなにも、女の子同士気にしないわよ?」
「僕の中身男だよ」
「あ、そっか――そうだった?! すっかり見た目から、女の子って意識が根付いて忘れちゃってた。は、恥ずかしい、見なかったことにして」
ゴザルさんがドタバタすること数秒の後、
「も、もう大丈夫。こっち向いていいわよ」
赤を基調とした袴姿。
慌ててアイテムボックスから取り出し装備したのだろう。
まさに『和』を感じさせる風貌でゴザルさんの雰囲気によく相まっていた。
……首から下はである。
絶妙に残った一部分。
兜のせいで全体的なバランスがおかしくなっている。
早いところ駆除してあげよう。
「ゴザルさん、ラストの寄生装備――兜に天使の雫をかけるよ」
「うぅー。ソラ、本当にありがとう。これで美味しい空気が吸える」
僕は天使の雫を振りかけようと瓶をふりふり、
「やば、もう一滴も残ってなかった」
「は?」
「胴体、両手、両足で全部使い切っちゃったみたい」
「え? 今、私どんな格好になってるの?」
「夜道で出会ったら全力で逃げるレベルかなぁ」
「痴女に言われたくないっ!」
「唐突にひどいっ! 僕の姿見てそんなこと思ってたの?!」
「うわーん、助けてソラぁあああああっ!」
そうは言われても、天使の雫は使い切ってしまった。
天使の雫はSランクに該当するアイテム、すぐに取りにいける代物でもない。
「お侍さん、兜だけなら重さはマシになったんじゃないですか?」
「そうだ、その通りよナコ殿! ううん、ナコちゃんっ!!」
ナコの何気ない一言、ゴザルさんがガバリと立ち上がり、
「今の姿だったら最強に近いくらい動けるはずだわっ!」
ゴザルさんが刀を抜いて構えを取る。
「火の刃―― 緋炎」
ステップを踏むよう、それはまるで演舞のようだった。
風の刃、水の刃、土の刃、氷の刃、雷の刃、ゴザルさんは流麗な動きにて太刀筋を刻んでいく。
「うわぁ、綺麗です」
ナコが感嘆の声を上げる。
奇抜な兜姿という点はスルーするとして、ナコの言う通り美しいの一言に尽きる。素人目にもわかるくらいに、無駄のない鮮麗な動きをしている。
「……うんっ! 頭が重すぎて少しバランスが崩れるけど、ナコちゃんの言う通り全然許容範囲っ!」
ゴザルさんはパンっと両手を打ち合わせながら、
「というわけで、上級ダンジョンに行くの手伝って」
どういうわけで?
使用方法は――以前ナコに使った天使の鍵と同じく、対象に近付けるか当てるかのどちらかだろう。アイテムボックスから取り出すと小さな瓶に虹色の液体、なんともわかりやすい形状である。
さすがに、使用方法は一つに違いない。
「じゃあ、天使の雫をかけるよ」
「つ、ついに解放される――嬉しい! お願いします」
まず、両腕に一滴ずつ垂らす。
その瞬間、青紫色の瘴気のようなものが噴き出し、鎧の両腕部がバラバラになって外れた。
続けて、胴体、両足、ゴザルさんの姿が露わになっていく。
「え? ゴザルさん?」
思わず、僕は声を漏らす。
ザ・マッチョです的な男性がでてくるかと思いきや――透き通るように白い肌、ナコより少し大きいくらいの小柄な背丈、控えめながらもしっかり膨らんだ胸、兜の隙間からは煌めく銀色の髪が流れ出ている。
全身が女性であることを物語っていた。
「く、クーラ、見ちゃ駄目!」
ナコが僕の目を隠す。
基本的に装備の下は軽装がメイン、完全に乙女の下着だったよな。
そんな僕たちの態度を不思議に思ったのか、
「二人共、慌ててどうかした?」
「……いや、どうしたもなにも。ゴザルさんって女性だったの?」
「私? そうだけど」
ゴザルさんはなにかを思い出したように手を叩き、
「あ、そういえば、私今まで皆の前で装備外したことなかったもんね。中身を見せるのはソラが初めてかもしれないわ」
キャラクターの性別はリアルと共通していることが多い。
オンリー・テイルのゲームは仕様上、キャラクターを作成する段階にて個人の証明書が必須となっている。個人の証明書に記載されている性別でしかキャラクターは作成できないのだ。
僕のよう家族に協力してもらい自身の性別とは逆のキャラクターを作成することも可能ではあるが、手間もかかるため大多数はありのままいく人が多いだろう。
ゴザルさん、男性にしては声が高いなぁとは思っていたけれど――厳つい装備の見た目からは女性だったなんて想像もしていなかった。
僕は反対方向を向き、ナコの目隠しを外してもらう。
「ゴザルさん、上からなにか羽織ってくれると嬉しいな。そんな裸に近い状態僕に見られたらまずいでしょ」
「まずいもなにも、女の子同士気にしないわよ?」
「僕の中身男だよ」
「あ、そっか――そうだった?! すっかり見た目から、女の子って意識が根付いて忘れちゃってた。は、恥ずかしい、見なかったことにして」
ゴザルさんがドタバタすること数秒の後、
「も、もう大丈夫。こっち向いていいわよ」
赤を基調とした袴姿。
慌ててアイテムボックスから取り出し装備したのだろう。
まさに『和』を感じさせる風貌でゴザルさんの雰囲気によく相まっていた。
……首から下はである。
絶妙に残った一部分。
兜のせいで全体的なバランスがおかしくなっている。
早いところ駆除してあげよう。
「ゴザルさん、ラストの寄生装備――兜に天使の雫をかけるよ」
「うぅー。ソラ、本当にありがとう。これで美味しい空気が吸える」
僕は天使の雫を振りかけようと瓶をふりふり、
「やば、もう一滴も残ってなかった」
「は?」
「胴体、両手、両足で全部使い切っちゃったみたい」
「え? 今、私どんな格好になってるの?」
「夜道で出会ったら全力で逃げるレベルかなぁ」
「痴女に言われたくないっ!」
「唐突にひどいっ! 僕の姿見てそんなこと思ってたの?!」
「うわーん、助けてソラぁあああああっ!」
そうは言われても、天使の雫は使い切ってしまった。
天使の雫はSランクに該当するアイテム、すぐに取りにいける代物でもない。
「お侍さん、兜だけなら重さはマシになったんじゃないですか?」
「そうだ、その通りよナコ殿! ううん、ナコちゃんっ!!」
ナコの何気ない一言、ゴザルさんがガバリと立ち上がり、
「今の姿だったら最強に近いくらい動けるはずだわっ!」
ゴザルさんが刀を抜いて構えを取る。
「火の刃―― 緋炎」
ステップを踏むよう、それはまるで演舞のようだった。
風の刃、水の刃、土の刃、氷の刃、雷の刃、ゴザルさんは流麗な動きにて太刀筋を刻んでいく。
「うわぁ、綺麗です」
ナコが感嘆の声を上げる。
奇抜な兜姿という点はスルーするとして、ナコの言う通り美しいの一言に尽きる。素人目にもわかるくらいに、無駄のない鮮麗な動きをしている。
「……うんっ! 頭が重すぎて少しバランスが崩れるけど、ナコちゃんの言う通り全然許容範囲っ!」
ゴザルさんはパンっと両手を打ち合わせながら、
「というわけで、上級ダンジョンに行くの手伝って」
どういうわけで?
20
お気に入りに追加
416
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜
Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。
だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。
仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。
素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。
一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる