転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
上 下
70 / 384
最強の武者Gozaru編

70話 パラサイトシリーズ

しおりを挟む
「まずは、わかりやすい形で理由を説明いたそう」

 ゴザルさんが立ち上がり――スラリと、鞘から刀を抜いた。

「ナコ殿、ここ最近の鍛錬と同じく拙者にかかってくるがよい」
「はい、胸をお借りしますっ!」

 ナコがハッピーと共に爆走した。
 なんか普通に始まっちゃったけど、僕が意識を失っている間に修行までしていたの?
 ナコの動きがまたすごい。
 黒い波動による連撃、高速移動を織り交ぜた撹乱、一つ一つのアクションにさらなる磨きがかかっている。
 いやもうゴザルさん相手にめちゃくちゃ善戦してるんですけど。

「ナコ殿は筋がよい! これは拙者も手は抜けぬでござるよ!」
「ありがとうございますっ!」

 目にもとまらぬ剣戟の嵐。
 超人決戦かな? ありえないスピードで強くなっていくナコ――どんどんと遠くに行ってしまう。
 嬉しいような、悲しいような、成長力半端なぁいっ!
 ゴザルさんが強いのは当たり前と思っていたが、ゲーム時と考えるのはまた違うんだよな。レベル差よりもスキルの創意工夫――ゴザルさんもまた試行錯誤の上、今の強さまで上り詰めて来たのかもしれない。
 それから3分ほど経過した後、

「ここからでござる。ここからでござるよっ!」

 ゴザルさんが叫び出した。
 なにが始まるんだと思ったのも束の間、急速にゴザルさんの動きが停滞する。
 その隙を見逃さず――ナコが会心の一撃、ゴザルさんが鍛錬場の端まで吹っ飛んだ。

 ――「「えぇっ?!」」

 思わず、ナコとハモってしまう。
 いきなり生まれたての子鹿のように震えだしたかと思えば、あっさりとナコにやられてしまった。
 ナコも目を丸くして驚きながら、

「ここ最近、3時間置きに――3分稽古を付けてくれていたんです。今日は一試合が長いなと思っていたのですが」
「……そこ、なのでござるよ」

 ゴザルさんが立ち上がり、ふらついた足取りでこちらに向かって来る。

「理由は拙者が装備している『破壊虫の鎧』であってな」

 破壊虫の鎧。
『パラサイトシリーズ』の一種だ。パラサイトシリーズとは、簡単に言うならば寄生装備のことである。
 性能はめちゃくちゃいいのだが、寄生は状態異常に分類され、専用のアイテムで駆除しない限り永遠に外すことができない。
 ふと、リーナと話していた記憶が蘇る。

 ――「それがねー、今まで攻撃力や防御力が高かったレア装備は全くといっていいほど効果が薄かったんだよね」

「鎧が尋常じゃないくらい重すぎて、全力をだせるのが3分限定なのでござるよっ!」

 どこかのヒーローばりの限定感である。

「普通に動くぶんには問題ない。戦闘となると別、魔力をフルで消費しながらようやく戦えるといった具合でござる」

 状況を把握、僕は端的に結論を言う。

「つまり、リアルになった今も寄生状態は健在ということで?」
「そうなの、脱げないのぉおおおっ! 脱ごうとしても身体に張り付いて取れないのぉおおおおおっ! 助けて、ソラぁああああああっ!!」

 口調変わってますよゴザルさん。
 ゴザルさんはバリバリのロールプレイング派だ。その世界観にのめり込むのが大好きというかなんというか(二度目)。
 手強いダンジョン、見晴らしのいい景色、そういったところにギルドメンバーで冒険に行っては渋いエモートにて「皆のもの見るでござる、あの宵闇に輝く満月を――まんまるな・黄金チーズケーキ・食べたいな」などと、個性的で俳句のルールすら無視したことをよく呟いていた。

「ゴザルさん、大好きなロールプレイングは?」
「いやいや、ははっ! それどころじゃないよね? 日常生活どれだけ苦労してるかわかる? ご飯時なんて兜の隙間からロールパン詰め込んだり、トイレの時なんてデッドオアアライブ感半端ないし。拙者とかござるとか悠長に入り浸ってる場合じゃないから」
「清々しいほど過去の自分を全否定っ!」
「……こんな状態で皆に会いに行けない、馬鹿にされる」

 ゴザルさんが言う。

「主にニャニャンのことだね」
「そう、ニャンは指差すレベルで笑ってくる。オムツ履いてたのー? とか普通に聞いてきそうだし」

 ニャニャンなら絶対にやる。

「ゴザルさん、これSクラスの防具だよね? 寄生を駆除するのにも同等のレアアイテムが必要だったような」
「そのためにオーラ・ストーンまで探索しに行った。ハイスパイダーから運良く入手できないかなって。ソラの仲間の話では倒された後だっていうし、結局序盤のダンジョンだからドロップ率1%にも満たないレベルだし。ドロップ率が優遇される上級ダンジョンに行くしかないとは思うんだけど、3分だけ全力だしたところで攻略できるわけないし」

 ゴザルさんが両膝を抱えながらブツブツと呟く。

「……『天使の雫』、どうにかして手に入れないと」

 ん? 天使の雫?
 確か、アクアニアスのホームから持ってきていたような。僕はアイテムボックスを開いて確認をする。

「あ、そのアイテムなら僕持ってるよ」
「なんでもします、譲ってください」

 恐るべきスピードでゴザルさんが土下座した。

「ふ、普通に渡すって。僕の命の恩人なんだから――そういや、第二層の通路は崩落で封鎖されていたはずだけど、その状態でどうやって脱出したの?」
「え? さっきも言ったけど3分は全力がだせるから、普通にソラを担いで落ちて来た穴をもう一回登っただけ」
「「……」」

 僕とナコは言葉を失う。
 あの滑り台のような穴、身体能力だけでよじ登って来たの?
 現状も含め、全てが規格外のゴザルさんであった。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。 だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。 仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。 素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。 一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...