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二章 高等学校二年生の王子
24.もう一つの公爵家
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高等学校で上級生に呼び出された。
アルマスとヘンリッキと話している最中だったので、僕は話を続けたかったが、どうしても来て欲しいという上級生に仕方なく席を立った。
授業の合間の休憩時間の出来事である。
廊下に出るとその上級生は僕に言ってきた。
「ジュニア・プロムにエドヴァルド殿下をお誘いしたいのです。受けていただけませんか?」
女性の上級生は僕をジュニア・プロムに誘ってきた。
季節は初夏になっていて、エルランド兄上たち六年生は卒業式が近くなっているし、五年生は進級が近くなっている。
五年生の夏休み前にジュニア・プロムといって、いわゆるプロムナード、クラシックなダンスパーティーが開かれる。六年生は卒業式後にシニア・プロムが開かれる。
どちらもパートナーを誘って参加するのだが、僕に声をかけてきた上級生を僕はまじまじと見つめてしまった。
ジュニア・プロムと言っているから五年生なのだろう。
金色の髪を巻いていて、服も清楚だが豪華な布が使ってあるワンピースだ。
僕に声をかける時点で、ただの貴族ではないことは分かっていた。
「お名前を伺ってもよろしいですか?」
警戒しつつ僕が問いかけると、上級生は頬を染めて慌てる。
「名乗りもせず失礼いたしました。ハンナマリ・エクロースと申します」
エクロース家。
聞いたことがある。
この国の二つしかなかった公爵家のうちの一つだ。
ミエト家が公爵家になる前には、この国には二つの公爵家しかなかった。
ヘンリッキのハーヤネン公爵家と、目の前にいるハンナマリ嬢のエクロース公爵家だ。
これはエクロース公爵家による、新参者の公爵家であるミエト公爵家に対する嫌がらせではないのだろうか。
ミエト公爵家の当主であるロヴィーサ嬢の婚約者の僕をジュニア・プロムに誘うことで、ミエト公爵家にエクロース公爵家の代々続く威光を見せつけようという企みに思えてならなかった。
「僕がミエト公爵家のロヴィーサ嬢と婚約しているのはご存じですよね」
「分かっております。エドヴァルド殿下がロヴィーサ様と仲睦まじいのも知っております」
「僕とロヴィーサ嬢との婚約は、王家とミエト家で交わされたもの。ロヴィーサ嬢はミエト家の当主です。あなたはエクロース公爵家の御令嬢。身分が違うのは分かりますよね?」
ミエト公爵家の当主となるとミエト公爵なのだが、エクロース公爵家の御令嬢となると扱いは侯爵と同等になる。
ロヴィーサ嬢の方がこのハンナマリ嬢よりは身分が上なのだ。
そんな相手の婚約者をジュニア・プロムに誘うという意味がハンナマリ嬢には分かっていない。
「大それたことは考えておりません。エドヴァルド殿下をお慕いしておりまして、一度だけの思い出を作りたいだけなのです」
涙目になって頭を下げられても、僕にはハンナマリ嬢は由緒ある公爵家の威光を使って、ロヴィーサ嬢にマウントを取りに来たようにしか思えなかったのだ。
「お断り致します。あなたも、公爵家の御令嬢ならば自分の立場というものを理解すべきです」
きっぱりと断って教室に戻ると、ドアのところでヘンリッキとアルマスが立ってこっちを見ていた。僕は憤慨しつつ席に着く。ヘンリッキとアルマスも席に着いた。
「何を考えているんだろう。僕のロヴィーサ嬢にマウントを取りに来るなんて!」
「そ、そうだったのかな? 俺は貴族のことはよく分からないが、あのひと、泣いてたぞ?」
「泣いたら済むと思うの? ロヴィーサ嬢と僕の間に入ろうとしたんだよ」
「貴族的な企みはなくて、純粋にエドヴァルド殿下に恋心を抱いていたのではないでしょうか?」
「そんなわけないよ。僕はそんなにいい男じゃないし、王子って肩書がなければ、ただの十三歳の子どもだよ」
僕に本当に気持ちがあるのならば、これまでに話しかけたことがあってもいいはずだ。それを一度も話しかけずに、初めて話しかけたと思ったらジュニア・プロムに誘うなんて、常識知らずに思えてならない。
「エクロース公爵家のハンナマリ様でしょう? 高等学校を卒業したら、結婚が決まっていると聞いたことがありますよ」
「それならば、尚更不実だ。結婚が決まっているのに、違う相手をジュニア・プロムに誘うなんて」
怒っている僕にヘンリッキの言葉もアルマスの言葉も届かなかった。
エクロース公爵家は御令嬢にどんな教育をしているのか。
僕はその日ずっと腹を立てていた。
ミエト家に帰るとロヴィーサ嬢とおやつを作る。
ロヴィーサ嬢は今日はシュークリームを作ってくれた。
ただのシュークリームではない。中にアイスクリームを詰めた、シューアイスだったのだ。
シュークリームは食べるときにどうしても中のクリームが後ろから零れ出てしまう。だからといって一口で食べると口いっぱいになってとてもお行儀が悪い。
それを解決するのがシューアイスだった。中に入っているのは固形のアイスクリームなので、クリームが零れることはない。
綺麗に手を洗っていたのでアイスシューを手に持ってかぶり付く。パリパリのシュー生地に冷たいアイスクリームが挟まれていてそこに桃も入っていてジューシーでとても美味しい。
飲み物も気温が上がって来たので冷たいものになっていた。
上機嫌でアイスシューを食べていた僕だが、高等学校のことを思いだすと表情が曇る。
エクロース公爵家とは一度話し合いの場を設けた方がいいのかもしれない。
「冷たすぎましたか? 頭が痛くなったのでは?」
「いえ、そうではありません」
表情が曇った僕をロヴィーサ嬢が心配してくれるが、僕は正直に今日あったことを話してみようと思っていた。
「今日、高等学校でエクロース公爵家の御令嬢、ハンナマリ嬢にジュニア・プロムに誘われました」
「ハンナマリ様は、高等学校を卒業されたら隣国に嫁ぐのではなかったのですか?」
「そのようなのですが、僕に声をかけて来たのです」
僕はこれをエクロース公爵家からミエト公爵家への挑発だと思っていた。
「エクロース公爵家は、ミエト公爵家が新興の公爵家なので、マウントを取ろうとしたのではないでしょうか。僕は許せません! ロヴィーサ嬢と僕の間に入ろうとするなんて!」
そんな馬鹿らしい理由で僕とロヴィーサ嬢の仲が邪魔されるのは本当に許せない。
僕が憤ると、ロヴィーサ嬢は小首を傾げている。
「エクロース公爵家にそのような思惑があったのでしょうか」
「ないとロヴィーサ嬢は思われるのですか?」
「あまりにも、稚拙ではないですか」
ロヴィーサ嬢は僕とは違う意見のようだった。
「貴族の嫌がらせとはこんなに分かりやすく行われるものではありません。もっと陰湿に、それと分からないようにしないと、エド殿下は今怒っていらっしゃって、国王陛下に相談するおつもりでしょう? そうなると、エクロース公爵家の地位が危うくなります」
「もっと陰湿に、それと分からないように……」
「エクロース公爵令嬢のハンナマリ様のやったことは、許されませんが、王家とミエト家を侮辱したということで、逆にミエト家と王家からエクロース公爵家が責められる隙を作るような軽率な行動です」
ロヴィーサ嬢は王城で国王陛下である僕の父上の前で婚約式もして婚約を誓った仲なのである。確かに、こんなにあからさまに行動していれば、エクロース公爵家の方が責められても仕方はない。
「ロヴィーサ嬢に言われると冷静になれます。確かにその通りでした」
「ハンナマリ様の一人のお考えだったのではないのでしょうか」
「それにしても、エクロース公爵家の教育を問われる行動ではありますよね」
「その通りです。高等学校でひとが見ている中で、エド殿下をジュニア・プロムに誘うなど、軽率すぎます。隣国との縁談が流れてもおかしくはありません」
今度はハンナマリ嬢の地位が危うくなるような事態になってきていることに気付く。
政略結婚とは心の通い合わない相手と行うものだし、ハンナマリ嬢が結婚を望んでいないのかもしれないが、家同士の重要な繋がりだ。
ハンナマリ嬢はそれを壊してしまいかねない行動をしてしまった。
「今回のことは、エド殿下には不快だったかもしれませんが、ミエト家のためにそれを利用させてもらいましょう」
「どういうことですか?」
「このことを公にしない代わりに、エクロース公爵家の弱みを握って、ミエト家が優位に立つのです」
新興の公爵家であるミエト家の方がエクロース家よりも立場が弱いのは当然のことだ。ハーヤネン家はヘンリッキとハンヌのことがあったから、ミエト家を尊重してくれているが、エクロース家はミエト家を認めていないようなところがあった。
「わたくしのお誕生日にも、ハーヤネン家で行われたアルマス様のお誕生日にも、エクロース家は出席をしていません。今後は出席を断れないようにして、エクロース家とミエト家の関係性を見せつけてやりましょう」
もしかすると、ロヴィーサ嬢も怒っていたのかもしれない。
僕はロヴィーサ嬢の海よりも深い青い目を見て呟く。
「ロヴィーサ嬢も嫉妬したのですか?」
ぼっとロヴィーサ嬢の頬が赤くなった。
「それは嫉妬いたします。ハンナマリ様はわたくしよりもエド殿下と年が近いのですし、同じ高等学校にも通っています」
「怒っていたのは僕だけではなかったのですね」
「恥ずかしいです、エド殿下! 言わないでくださいませ!」
あ、来る!
僕は避けることができずにロヴィーサ嬢に肩を叩かれて、横向きに吹っ飛んで壁にめり込みそうになった。
魔族なので怪我はなかったが、すぐには起き上がれない僕をロヴィーサ嬢が抱き起す。
「ごめんなさい、エド殿下!」
「いいのです。ロヴィーサ嬢は照れ屋さんですね」
こんなところも可愛いと思ってしまうのだから、僕はロヴィーサ嬢に夢中でどうしようもないのだ。
アルマスとヘンリッキと話している最中だったので、僕は話を続けたかったが、どうしても来て欲しいという上級生に仕方なく席を立った。
授業の合間の休憩時間の出来事である。
廊下に出るとその上級生は僕に言ってきた。
「ジュニア・プロムにエドヴァルド殿下をお誘いしたいのです。受けていただけませんか?」
女性の上級生は僕をジュニア・プロムに誘ってきた。
季節は初夏になっていて、エルランド兄上たち六年生は卒業式が近くなっているし、五年生は進級が近くなっている。
五年生の夏休み前にジュニア・プロムといって、いわゆるプロムナード、クラシックなダンスパーティーが開かれる。六年生は卒業式後にシニア・プロムが開かれる。
どちらもパートナーを誘って参加するのだが、僕に声をかけてきた上級生を僕はまじまじと見つめてしまった。
ジュニア・プロムと言っているから五年生なのだろう。
金色の髪を巻いていて、服も清楚だが豪華な布が使ってあるワンピースだ。
僕に声をかける時点で、ただの貴族ではないことは分かっていた。
「お名前を伺ってもよろしいですか?」
警戒しつつ僕が問いかけると、上級生は頬を染めて慌てる。
「名乗りもせず失礼いたしました。ハンナマリ・エクロースと申します」
エクロース家。
聞いたことがある。
この国の二つしかなかった公爵家のうちの一つだ。
ミエト家が公爵家になる前には、この国には二つの公爵家しかなかった。
ヘンリッキのハーヤネン公爵家と、目の前にいるハンナマリ嬢のエクロース公爵家だ。
これはエクロース公爵家による、新参者の公爵家であるミエト公爵家に対する嫌がらせではないのだろうか。
ミエト公爵家の当主であるロヴィーサ嬢の婚約者の僕をジュニア・プロムに誘うことで、ミエト公爵家にエクロース公爵家の代々続く威光を見せつけようという企みに思えてならなかった。
「僕がミエト公爵家のロヴィーサ嬢と婚約しているのはご存じですよね」
「分かっております。エドヴァルド殿下がロヴィーサ様と仲睦まじいのも知っております」
「僕とロヴィーサ嬢との婚約は、王家とミエト家で交わされたもの。ロヴィーサ嬢はミエト家の当主です。あなたはエクロース公爵家の御令嬢。身分が違うのは分かりますよね?」
ミエト公爵家の当主となるとミエト公爵なのだが、エクロース公爵家の御令嬢となると扱いは侯爵と同等になる。
ロヴィーサ嬢の方がこのハンナマリ嬢よりは身分が上なのだ。
そんな相手の婚約者をジュニア・プロムに誘うという意味がハンナマリ嬢には分かっていない。
「大それたことは考えておりません。エドヴァルド殿下をお慕いしておりまして、一度だけの思い出を作りたいだけなのです」
涙目になって頭を下げられても、僕にはハンナマリ嬢は由緒ある公爵家の威光を使って、ロヴィーサ嬢にマウントを取りに来たようにしか思えなかったのだ。
「お断り致します。あなたも、公爵家の御令嬢ならば自分の立場というものを理解すべきです」
きっぱりと断って教室に戻ると、ドアのところでヘンリッキとアルマスが立ってこっちを見ていた。僕は憤慨しつつ席に着く。ヘンリッキとアルマスも席に着いた。
「何を考えているんだろう。僕のロヴィーサ嬢にマウントを取りに来るなんて!」
「そ、そうだったのかな? 俺は貴族のことはよく分からないが、あのひと、泣いてたぞ?」
「泣いたら済むと思うの? ロヴィーサ嬢と僕の間に入ろうとしたんだよ」
「貴族的な企みはなくて、純粋にエドヴァルド殿下に恋心を抱いていたのではないでしょうか?」
「そんなわけないよ。僕はそんなにいい男じゃないし、王子って肩書がなければ、ただの十三歳の子どもだよ」
僕に本当に気持ちがあるのならば、これまでに話しかけたことがあってもいいはずだ。それを一度も話しかけずに、初めて話しかけたと思ったらジュニア・プロムに誘うなんて、常識知らずに思えてならない。
「エクロース公爵家のハンナマリ様でしょう? 高等学校を卒業したら、結婚が決まっていると聞いたことがありますよ」
「それならば、尚更不実だ。結婚が決まっているのに、違う相手をジュニア・プロムに誘うなんて」
怒っている僕にヘンリッキの言葉もアルマスの言葉も届かなかった。
エクロース公爵家は御令嬢にどんな教育をしているのか。
僕はその日ずっと腹を立てていた。
ミエト家に帰るとロヴィーサ嬢とおやつを作る。
ロヴィーサ嬢は今日はシュークリームを作ってくれた。
ただのシュークリームではない。中にアイスクリームを詰めた、シューアイスだったのだ。
シュークリームは食べるときにどうしても中のクリームが後ろから零れ出てしまう。だからといって一口で食べると口いっぱいになってとてもお行儀が悪い。
それを解決するのがシューアイスだった。中に入っているのは固形のアイスクリームなので、クリームが零れることはない。
綺麗に手を洗っていたのでアイスシューを手に持ってかぶり付く。パリパリのシュー生地に冷たいアイスクリームが挟まれていてそこに桃も入っていてジューシーでとても美味しい。
飲み物も気温が上がって来たので冷たいものになっていた。
上機嫌でアイスシューを食べていた僕だが、高等学校のことを思いだすと表情が曇る。
エクロース公爵家とは一度話し合いの場を設けた方がいいのかもしれない。
「冷たすぎましたか? 頭が痛くなったのでは?」
「いえ、そうではありません」
表情が曇った僕をロヴィーサ嬢が心配してくれるが、僕は正直に今日あったことを話してみようと思っていた。
「今日、高等学校でエクロース公爵家の御令嬢、ハンナマリ嬢にジュニア・プロムに誘われました」
「ハンナマリ様は、高等学校を卒業されたら隣国に嫁ぐのではなかったのですか?」
「そのようなのですが、僕に声をかけて来たのです」
僕はこれをエクロース公爵家からミエト公爵家への挑発だと思っていた。
「エクロース公爵家は、ミエト公爵家が新興の公爵家なので、マウントを取ろうとしたのではないでしょうか。僕は許せません! ロヴィーサ嬢と僕の間に入ろうとするなんて!」
そんな馬鹿らしい理由で僕とロヴィーサ嬢の仲が邪魔されるのは本当に許せない。
僕が憤ると、ロヴィーサ嬢は小首を傾げている。
「エクロース公爵家にそのような思惑があったのでしょうか」
「ないとロヴィーサ嬢は思われるのですか?」
「あまりにも、稚拙ではないですか」
ロヴィーサ嬢は僕とは違う意見のようだった。
「貴族の嫌がらせとはこんなに分かりやすく行われるものではありません。もっと陰湿に、それと分からないようにしないと、エド殿下は今怒っていらっしゃって、国王陛下に相談するおつもりでしょう? そうなると、エクロース公爵家の地位が危うくなります」
「もっと陰湿に、それと分からないように……」
「エクロース公爵令嬢のハンナマリ様のやったことは、許されませんが、王家とミエト家を侮辱したということで、逆にミエト家と王家からエクロース公爵家が責められる隙を作るような軽率な行動です」
ロヴィーサ嬢は王城で国王陛下である僕の父上の前で婚約式もして婚約を誓った仲なのである。確かに、こんなにあからさまに行動していれば、エクロース公爵家の方が責められても仕方はない。
「ロヴィーサ嬢に言われると冷静になれます。確かにその通りでした」
「ハンナマリ様の一人のお考えだったのではないのでしょうか」
「それにしても、エクロース公爵家の教育を問われる行動ではありますよね」
「その通りです。高等学校でひとが見ている中で、エド殿下をジュニア・プロムに誘うなど、軽率すぎます。隣国との縁談が流れてもおかしくはありません」
今度はハンナマリ嬢の地位が危うくなるような事態になってきていることに気付く。
政略結婚とは心の通い合わない相手と行うものだし、ハンナマリ嬢が結婚を望んでいないのかもしれないが、家同士の重要な繋がりだ。
ハンナマリ嬢はそれを壊してしまいかねない行動をしてしまった。
「今回のことは、エド殿下には不快だったかもしれませんが、ミエト家のためにそれを利用させてもらいましょう」
「どういうことですか?」
「このことを公にしない代わりに、エクロース公爵家の弱みを握って、ミエト家が優位に立つのです」
新興の公爵家であるミエト家の方がエクロース家よりも立場が弱いのは当然のことだ。ハーヤネン家はヘンリッキとハンヌのことがあったから、ミエト家を尊重してくれているが、エクロース家はミエト家を認めていないようなところがあった。
「わたくしのお誕生日にも、ハーヤネン家で行われたアルマス様のお誕生日にも、エクロース家は出席をしていません。今後は出席を断れないようにして、エクロース家とミエト家の関係性を見せつけてやりましょう」
もしかすると、ロヴィーサ嬢も怒っていたのかもしれない。
僕はロヴィーサ嬢の海よりも深い青い目を見て呟く。
「ロヴィーサ嬢も嫉妬したのですか?」
ぼっとロヴィーサ嬢の頬が赤くなった。
「それは嫉妬いたします。ハンナマリ様はわたくしよりもエド殿下と年が近いのですし、同じ高等学校にも通っています」
「怒っていたのは僕だけではなかったのですね」
「恥ずかしいです、エド殿下! 言わないでくださいませ!」
あ、来る!
僕は避けることができずにロヴィーサ嬢に肩を叩かれて、横向きに吹っ飛んで壁にめり込みそうになった。
魔族なので怪我はなかったが、すぐには起き上がれない僕をロヴィーサ嬢が抱き起す。
「ごめんなさい、エド殿下!」
「いいのです。ロヴィーサ嬢は照れ屋さんですね」
こんなところも可愛いと思ってしまうのだから、僕はロヴィーサ嬢に夢中でどうしようもないのだ。
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