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二章 高等学校二年生の王子
25.エクロース家の謝罪
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エクロース公爵家の件に関して、僕は父上に相談することにした。
貴族社会のことを僕はロヴィーサ嬢に指摘されるくらいよく分かっていない。今回のことをどうおさめるかは父上に聞いた方がいいような気がしたのだ。
王城に父上を訪ねて行くと、父上は僕を歓迎してくれた。
お茶とお菓子を用意してくれて、応接室で話をする。
僕は今日あったことを父上に話した。
「エクロース公爵家のハンナマリ嬢が僕を廊下に呼び出して話しかけてきたのです。何の用かと思えば、僕をジュニア・プロムに誘いたいと」
「エクロース公爵家の令嬢がエドに声をかけて来たのか?」
「はい、『ジュニア・プロムにエドヴァルド殿下をお誘いしたいのです。受けていただけませんか?』と」
その時点で父上の表情は難しいものになっていた。それに気付いていたが僕は続けて言う。
「僕はハンナマリ嬢が婚約者がいることも聞いていましたし、僕とロヴィーサ嬢は婚約しています。それなのにジュニア・プロムに誘うなど新興の公爵家であるミエト家にマウントを取ろうとしたのかと憤慨したのです」
「エド、それは怒るところが違うかな」
「え? そうなのですか?」
父上に注意されて僕は戸惑ってしまう。
父上は落ち着いた声で僕を諭す。
「ミエト家と王家の結婚が一大事業であるのは確かだが、エドはそれよりもハンナマリ嬢に指摘しなければいけないことがあった。公爵家の令嬢からエドに話しかけるようなことは許されていないし、婚約者でもないのに勝手に名前を呼んだのも失礼だ」
「あ、そうでした」
僕はロヴィーサ嬢がマウントを取られるのではないかということを考えすぎていて、もっと基本的なことを考えられていなかった。
公爵家の令嬢程度がこの国の王子である僕に先に声をかけていいはずがない。それに婚約者でもないのに僕の名前を呼んでいいはずがない。
高等学校はある程度は身分を置いておいて授業を行うので忘れがちだが、僕は王子でハンナマリ嬢は侯爵家の令嬢だった。
「婚約のことを持ち出してあまり責めると、エクロース公爵家に恥をかかせることになる。恐らく、エクロース公爵家から謝罪の手紙が届くことだろう。それを待ちなさい」
高等学校の廊下にはたくさんのひとがいたし、父上の耳にも入ってしまったのだから、誰かエクロース公爵家の縁者がハンナマリ嬢のことをエクロース公爵家のご両親に伝えるだろう。
そうなればエクロース公爵家から謝罪の手紙が来る。
父上に説明してもらって、僕とロヴィーサ嬢はミエト家に帰った。
「よく考えてみればロヴィーサ嬢も父上やエリアス兄上やエルランド兄上と同席するときに、話しかけられるまで黙っていますよね」
今日もロヴィーサ嬢は話しかけられていないので静かに父上の話を聞いていた。こういうところもロヴィーサ嬢は淑女のマナーが叩き込まれているのだ。
緊急時でなければロヴィーサ嬢は静かに僕と父上とエリアス兄上とエルランド兄上の話を聞いていて、自分から話しかけたりは決してしなかった。
僕の婚約者なのでそれが許されているにも関わらず、ロヴィーサ嬢は分を弁えている。
「今回の件はわたくしも暴走しましたね。エド殿下に声をかけたということで、嫉妬で目が眩んでいたのかもしれません」
「それだけ嫉妬されるということは幸せです」
ロヴィーサ嬢と僕が話していると、爺やが手紙を持ってくる。
それはエクロース公爵家からのものだった。
「手紙が来ましたね。存外早かったです」
「エクロース公爵家にも危機感があったのでしょう」
僕が手紙の速さに驚いていると、ロヴィーサ嬢が言って封筒をペーパーナイフで開ける。
中には謝罪の手紙が入っていた。
娘のハンナマリ嬢が僕に話しかけてしまったこと、婚約者でもない異性を名前で呼んでしまったこと、僕に大変失礼なことをしたと国王陛下もお怒りであろうことを謝罪し、直接謝りに来たいと書いてあった。
「どうしましょう? 謝罪を受けますか?」
ロヴィーサ嬢に問いかけると、ミエト公爵家の当主らしい落ち着いた様子で頷く。
「謝罪をお受けして、ミエト家とエクロース家が友好関係を築けるというのを見せましょう」
「分かりました。僕、お返事のお手紙を書きますね」
ロヴィーサ嬢よりも直接話をした僕が手紙を書いた方がいいような気がして、僕はエクロース公爵家に返事を書いた。
直接会う日時と場所、それに僕から「騒ぐなどはしたないと父に諫められました。これは誤解として以後はミエト家とエクロース家、共に仲良くしましょう」とメッセージを添えておいた。
エクロース家の動きは迅速だった。
翌日には馬車でミエト家にやって来て、僕とロヴィーサ嬢にご両親が深々と頭を下げていた。
「娘はまだ十六歳とはいえ、あまりにも教育不足でした。教育をし直すつもりです」
「王子殿下が国王陛下に諫められるようなことをしでかしてしまい、申し訳ありません。二度とこのようなことがなきように、娘を教育していきます」
「ロヴィーサ様も申し訳ありませんでした」
「今回のことはエドヴァルド殿下が仰った通り誤解として、ミエト家とエクロース家の両家が仲良くやっていけたらよいと思っております」
「寛大なお心に感謝いたします」
「本当に申し訳ございませんでした」
平謝りのエクロース家のご両親に、ハンナマリ嬢も深々と頭を下げていた。発言することを許されていないのか、ハンナマリ嬢は涙を堪えてずっと頭を下げ続けている。
「今後はミエト家の催しにも、ハーヤネン家の催しにも来てくださいますよね」
「もちろんです。喜んで行かせていただきます」
「これまで行かずに失礼を致しました」
ロヴィーサ嬢の望む方向にエクロース家のご両親は頭を下げて了承した。
これで今回の件は丸くおさまった。
エクロース家のご両親とハンナマリ嬢が帰ってから、ロヴィーサ嬢が僕に聞いてきた。
「エクロース家へのお手紙に何を書いたのですか?」
「騒いでしまったので、父上に諫められたことを書きました。いけないことをしてしまったなと思って」
「あぁ、それで」
納得しているロヴィーサ嬢に僕は首を傾げる。
「いけませんでしたか?」
「その書き方だと、貴族的には『御令嬢のしでかしたことで父上に叱られたけれど、このことをどうしてくださいますか?』という捉え方になりますね」
「えー!? そうだったのですか!?」
僕は全く意識せずに書いていたけれど、エクロース家のご両親は僕に脅されたと思って戦々恐々として謝罪に来たようなのだ。
僕はまだまだ貴族社会のことが分かっていない。分かっているロヴィーサ嬢がいてくれて良かったと心から思った。
僕も高等学校から帰って、ロヴィーサ嬢も研究課程から帰って、おやつも食べていないのでお腹がぺこぺこだった。
エクロース公爵家が早く謝罪して、この件をおさめたかったのは、僕の手紙のせいもあったので仕方がなかったが、あまりにも早い動きに僕は驚いてもいた。
自分の息女がしでかしてしまった場合には、素早い動きが大事になってくるのかもしれない。
父上にも丸くおさまったことは手紙に書くつもりだったので、明日にはミエト家とエクロース家が良好な関係になっていることは周囲に知られているだろう。
「お団子を作りましょうか」
「お団子ですか?」
お団子といったら、もち米で作ったお持ちのようなものを丸めたあれだろう。
黄な粉をつけて食べるのか、餡子で食べるのか、どちらもロヴィーサ嬢は作ってくれたことがあるが、美味しかったのを思い出す。
餅粉を使ってお団子を作ったロヴィーサ嬢が、それを竹串に刺す。かるくあぶって焼き目を付けた時点で、香ばしくて美味しそうな匂いがしていた。
それにロヴィーサ嬢は不思議なたれを作ってくれた。
醤油と砂糖と水と片栗粉で作ったとろりとしたたれは、艶があってお団子の上にかけるととても美味しそうである。
緑茶を入れたロヴィーサ嬢がそれを居間に持っていく。
ソファに座った僕は我慢できずにお団子の串を取って食べ始めた。
しょっぱいのに甘いたれが、焼き目を付けた香ばしいお団子によく合う。しょっぱいのと甘いのが混ざっていて、どれだけでも食べられそうな気がする。
もぐもぐと食べていると喉が渇いて来て、合間に飲む緑茶も冷たくてとても美味しい。
「緑茶は水出しにしてみました。さっぱりして冷たくて美味しいでしょう?」
「とても美味しいです」
王城では大人しいロヴィーサ嬢も、ミエト家ではとてもよく喋る。僕の前ではリラックスしてくれているのだと嬉しくなる。
「わたくしも、初対面でエドヴァルド殿下のお名前を呼んでしまいましたね」
「あれは緊急時でしたからね。それに、ロヴィーサ嬢は貴族ではなく、冒険者の『赤毛のマティルダ』として僕に会っていました」
失礼なことがあったのではないかと今更に頭を下げるロヴィーサ嬢に僕は何も失礼なことはなかったと答える。
ロヴィーサ嬢を僕の婚約者にしようとかなり早い時期から考えていたので、僕の中ではロヴィーサ嬢は僕を名前で呼んでいい相手だった。
「あれからかなり時間が経ちましたね」
ロヴィーサ嬢が僕を助けてくれてからもう二年近くの年月が経っていることになる。
僕はロヴィーサ嬢と出会えてよかったと思っているし、ロヴィーサ嬢も同じ気持ちでいてくれていると思っている。
「ロヴィーサ嬢、早く十八歳になりたいです」
「ゆっくりでいいのですよ。時間は誰にでも平等です。共に成長していきましょう」
ロヴィーサ嬢はそう言ってくれるけれど、僕は心が急いて仕方がなかった。
貴族社会のことを僕はロヴィーサ嬢に指摘されるくらいよく分かっていない。今回のことをどうおさめるかは父上に聞いた方がいいような気がしたのだ。
王城に父上を訪ねて行くと、父上は僕を歓迎してくれた。
お茶とお菓子を用意してくれて、応接室で話をする。
僕は今日あったことを父上に話した。
「エクロース公爵家のハンナマリ嬢が僕を廊下に呼び出して話しかけてきたのです。何の用かと思えば、僕をジュニア・プロムに誘いたいと」
「エクロース公爵家の令嬢がエドに声をかけて来たのか?」
「はい、『ジュニア・プロムにエドヴァルド殿下をお誘いしたいのです。受けていただけませんか?』と」
その時点で父上の表情は難しいものになっていた。それに気付いていたが僕は続けて言う。
「僕はハンナマリ嬢が婚約者がいることも聞いていましたし、僕とロヴィーサ嬢は婚約しています。それなのにジュニア・プロムに誘うなど新興の公爵家であるミエト家にマウントを取ろうとしたのかと憤慨したのです」
「エド、それは怒るところが違うかな」
「え? そうなのですか?」
父上に注意されて僕は戸惑ってしまう。
父上は落ち着いた声で僕を諭す。
「ミエト家と王家の結婚が一大事業であるのは確かだが、エドはそれよりもハンナマリ嬢に指摘しなければいけないことがあった。公爵家の令嬢からエドに話しかけるようなことは許されていないし、婚約者でもないのに勝手に名前を呼んだのも失礼だ」
「あ、そうでした」
僕はロヴィーサ嬢がマウントを取られるのではないかということを考えすぎていて、もっと基本的なことを考えられていなかった。
公爵家の令嬢程度がこの国の王子である僕に先に声をかけていいはずがない。それに婚約者でもないのに僕の名前を呼んでいいはずがない。
高等学校はある程度は身分を置いておいて授業を行うので忘れがちだが、僕は王子でハンナマリ嬢は侯爵家の令嬢だった。
「婚約のことを持ち出してあまり責めると、エクロース公爵家に恥をかかせることになる。恐らく、エクロース公爵家から謝罪の手紙が届くことだろう。それを待ちなさい」
高等学校の廊下にはたくさんのひとがいたし、父上の耳にも入ってしまったのだから、誰かエクロース公爵家の縁者がハンナマリ嬢のことをエクロース公爵家のご両親に伝えるだろう。
そうなればエクロース公爵家から謝罪の手紙が来る。
父上に説明してもらって、僕とロヴィーサ嬢はミエト家に帰った。
「よく考えてみればロヴィーサ嬢も父上やエリアス兄上やエルランド兄上と同席するときに、話しかけられるまで黙っていますよね」
今日もロヴィーサ嬢は話しかけられていないので静かに父上の話を聞いていた。こういうところもロヴィーサ嬢は淑女のマナーが叩き込まれているのだ。
緊急時でなければロヴィーサ嬢は静かに僕と父上とエリアス兄上とエルランド兄上の話を聞いていて、自分から話しかけたりは決してしなかった。
僕の婚約者なのでそれが許されているにも関わらず、ロヴィーサ嬢は分を弁えている。
「今回の件はわたくしも暴走しましたね。エド殿下に声をかけたということで、嫉妬で目が眩んでいたのかもしれません」
「それだけ嫉妬されるということは幸せです」
ロヴィーサ嬢と僕が話していると、爺やが手紙を持ってくる。
それはエクロース公爵家からのものだった。
「手紙が来ましたね。存外早かったです」
「エクロース公爵家にも危機感があったのでしょう」
僕が手紙の速さに驚いていると、ロヴィーサ嬢が言って封筒をペーパーナイフで開ける。
中には謝罪の手紙が入っていた。
娘のハンナマリ嬢が僕に話しかけてしまったこと、婚約者でもない異性を名前で呼んでしまったこと、僕に大変失礼なことをしたと国王陛下もお怒りであろうことを謝罪し、直接謝りに来たいと書いてあった。
「どうしましょう? 謝罪を受けますか?」
ロヴィーサ嬢に問いかけると、ミエト公爵家の当主らしい落ち着いた様子で頷く。
「謝罪をお受けして、ミエト家とエクロース家が友好関係を築けるというのを見せましょう」
「分かりました。僕、お返事のお手紙を書きますね」
ロヴィーサ嬢よりも直接話をした僕が手紙を書いた方がいいような気がして、僕はエクロース公爵家に返事を書いた。
直接会う日時と場所、それに僕から「騒ぐなどはしたないと父に諫められました。これは誤解として以後はミエト家とエクロース家、共に仲良くしましょう」とメッセージを添えておいた。
エクロース家の動きは迅速だった。
翌日には馬車でミエト家にやって来て、僕とロヴィーサ嬢にご両親が深々と頭を下げていた。
「娘はまだ十六歳とはいえ、あまりにも教育不足でした。教育をし直すつもりです」
「王子殿下が国王陛下に諫められるようなことをしでかしてしまい、申し訳ありません。二度とこのようなことがなきように、娘を教育していきます」
「ロヴィーサ様も申し訳ありませんでした」
「今回のことはエドヴァルド殿下が仰った通り誤解として、ミエト家とエクロース家の両家が仲良くやっていけたらよいと思っております」
「寛大なお心に感謝いたします」
「本当に申し訳ございませんでした」
平謝りのエクロース家のご両親に、ハンナマリ嬢も深々と頭を下げていた。発言することを許されていないのか、ハンナマリ嬢は涙を堪えてずっと頭を下げ続けている。
「今後はミエト家の催しにも、ハーヤネン家の催しにも来てくださいますよね」
「もちろんです。喜んで行かせていただきます」
「これまで行かずに失礼を致しました」
ロヴィーサ嬢の望む方向にエクロース家のご両親は頭を下げて了承した。
これで今回の件は丸くおさまった。
エクロース家のご両親とハンナマリ嬢が帰ってから、ロヴィーサ嬢が僕に聞いてきた。
「エクロース家へのお手紙に何を書いたのですか?」
「騒いでしまったので、父上に諫められたことを書きました。いけないことをしてしまったなと思って」
「あぁ、それで」
納得しているロヴィーサ嬢に僕は首を傾げる。
「いけませんでしたか?」
「その書き方だと、貴族的には『御令嬢のしでかしたことで父上に叱られたけれど、このことをどうしてくださいますか?』という捉え方になりますね」
「えー!? そうだったのですか!?」
僕は全く意識せずに書いていたけれど、エクロース家のご両親は僕に脅されたと思って戦々恐々として謝罪に来たようなのだ。
僕はまだまだ貴族社会のことが分かっていない。分かっているロヴィーサ嬢がいてくれて良かったと心から思った。
僕も高等学校から帰って、ロヴィーサ嬢も研究課程から帰って、おやつも食べていないのでお腹がぺこぺこだった。
エクロース公爵家が早く謝罪して、この件をおさめたかったのは、僕の手紙のせいもあったので仕方がなかったが、あまりにも早い動きに僕は驚いてもいた。
自分の息女がしでかしてしまった場合には、素早い動きが大事になってくるのかもしれない。
父上にも丸くおさまったことは手紙に書くつもりだったので、明日にはミエト家とエクロース家が良好な関係になっていることは周囲に知られているだろう。
「お団子を作りましょうか」
「お団子ですか?」
お団子といったら、もち米で作ったお持ちのようなものを丸めたあれだろう。
黄な粉をつけて食べるのか、餡子で食べるのか、どちらもロヴィーサ嬢は作ってくれたことがあるが、美味しかったのを思い出す。
餅粉を使ってお団子を作ったロヴィーサ嬢が、それを竹串に刺す。かるくあぶって焼き目を付けた時点で、香ばしくて美味しそうな匂いがしていた。
それにロヴィーサ嬢は不思議なたれを作ってくれた。
醤油と砂糖と水と片栗粉で作ったとろりとしたたれは、艶があってお団子の上にかけるととても美味しそうである。
緑茶を入れたロヴィーサ嬢がそれを居間に持っていく。
ソファに座った僕は我慢できずにお団子の串を取って食べ始めた。
しょっぱいのに甘いたれが、焼き目を付けた香ばしいお団子によく合う。しょっぱいのと甘いのが混ざっていて、どれだけでも食べられそうな気がする。
もぐもぐと食べていると喉が渇いて来て、合間に飲む緑茶も冷たくてとても美味しい。
「緑茶は水出しにしてみました。さっぱりして冷たくて美味しいでしょう?」
「とても美味しいです」
王城では大人しいロヴィーサ嬢も、ミエト家ではとてもよく喋る。僕の前ではリラックスしてくれているのだと嬉しくなる。
「わたくしも、初対面でエドヴァルド殿下のお名前を呼んでしまいましたね」
「あれは緊急時でしたからね。それに、ロヴィーサ嬢は貴族ではなく、冒険者の『赤毛のマティルダ』として僕に会っていました」
失礼なことがあったのではないかと今更に頭を下げるロヴィーサ嬢に僕は何も失礼なことはなかったと答える。
ロヴィーサ嬢を僕の婚約者にしようとかなり早い時期から考えていたので、僕の中ではロヴィーサ嬢は僕を名前で呼んでいい相手だった。
「あれからかなり時間が経ちましたね」
ロヴィーサ嬢が僕を助けてくれてからもう二年近くの年月が経っていることになる。
僕はロヴィーサ嬢と出会えてよかったと思っているし、ロヴィーサ嬢も同じ気持ちでいてくれていると思っている。
「ロヴィーサ嬢、早く十八歳になりたいです」
「ゆっくりでいいのですよ。時間は誰にでも平等です。共に成長していきましょう」
ロヴィーサ嬢はそう言ってくれるけれど、僕は心が急いて仕方がなかった。
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