5 / 39
本編
強くなりたい
しおりを挟む
【Rea】
十年ぶりに会った彼は、竜人だからでしょうか。
別れた時からあまり見た目は変わらず相変わらず息を飲む程綺麗で……。
そしてその瞳はあの日と変わらずどこか寂し気でした。
私を見て、彼が
「綺麗になったね」
そう言って優しく微笑んでくれました。
綺麗な人に『綺麗』と社交辞令を言われて反応に困ります。
まぁ、彼の番だった影響で、二十歳を超えたあたりから私の成長はゆっくり止まってしまったようで、幸か不幸か十年前に会った時とそれほど容姿は変わっていないと思うのですが。
少し世間話をした後で、彼とはすぐに別れました。
せっかく忘れかけていた彼への恋心を思い出してしまう前にとそう思ったのに、借りている部屋についてドアを閉めた瞬間、涙が溢れてその場にうずくまってしまいました。
会えばこうやってまた彼の事を忘れられなくなることが分かっていたから、また会いたいなんてそんな事を思った事もなかったのに……。
神様は残酷な事をなさるなと思います。
******
彼と会って二週間が経ちました。
彼は今頃、どの辺りを旅しているのでしょう。
そんなことを思いながら久しぶりに冒険者ギルドの隣にある食堂を訪れた時です。
全く思いも掛けず、冒険者ギルドから出て来た彼と鉢合わせました。
「エーヴェル?? どうして?! 何でまだいるの??」
また会えた喜びとは裏腹に、驚きの余り
『とっとと出ていけばいいのに』
とでも言わんばかりになってしまった私の言葉に、彼がバツが悪そうに首を掻きながら言いました。
「モンスター討伐依頼が多いらしく、しばらくここを手伝うよう頼まれたんだ」
そう言われてみれば、最近モンスターの数が増えたとか、討伐に出た手練れのパーティーが戻らないとかそんな物騒な話をよく聞く気がします。
「この街にはあとどのくらいの間いるつもり?」
また会えるかなと、そう期待してしまう心を必死に抑えた結果、まるで
『さっさと用がすんだら出て行って』
とでも言いたげな聞き方になってしまっていることに気づかずに前のめり気味に尋ねれば、彼が申し訳なさそうに言いました。
「一月程頼まれたんだが……」
「ギルドの手伝いって危なくはないの? くれぐれも無理して怪我したりしないでね?」
思わず彼に触れるのを懸命に耐えて。
でも彼がしばらくこの街にいることが嬉しくて、思わず縋るような目でそう言えば
「ありがとう。気を付ける」
彼がようやくホッとしたように顔を上げ、彼の人柄が透けて見えるような優しい穏やかな懐かしい笑顔を向けてくれました。
彼と離れた後で考えます。
お城にいたときには番ではなくなったことを理由にあっさりフラれてしまいましたが、私、今でも彼のことが好きです。
大好きです!
彼とまた会えてはっきり自覚してしまったこの気持ちは、どうしたらいいのでしょうか?
お城にいた頃、かつて彼の番であった頃の自分が書いた日記を読んだ事があります。
そこには『生まれ変わったら強くなりたい』、そう書かれていました。
番でも何でもない私にとって、王の座を退いたとは言え彼は本来手の届かない人です。
日記に書かれていた内容から察するに、かつて彼の番の私だったら、はなから彼と共にあることなんて諦めて、その姿を見ているのは苦しいからと早々にこの街をしばらくの間離れることでしょう。
でも……。
今の私はかつての私とは違うのです!
体は同じですが、かつての私が望んだ様に強く生まれ変わったのだと思っています。
そうです!!
せっかく生まれ変わったのだから、番であった私を越えるくらい彼に好きになってもらえるよう頑張ってみればいいのではないのでしょうか?!
そうと決めれば善は急げです。
少しでも彼の近くに居られるよう私も冒険者のお仕事してみようと思い、一直線に冒険者ギルドに向かいました。
十年ぶりに会った彼は、竜人だからでしょうか。
別れた時からあまり見た目は変わらず相変わらず息を飲む程綺麗で……。
そしてその瞳はあの日と変わらずどこか寂し気でした。
私を見て、彼が
「綺麗になったね」
そう言って優しく微笑んでくれました。
綺麗な人に『綺麗』と社交辞令を言われて反応に困ります。
まぁ、彼の番だった影響で、二十歳を超えたあたりから私の成長はゆっくり止まってしまったようで、幸か不幸か十年前に会った時とそれほど容姿は変わっていないと思うのですが。
少し世間話をした後で、彼とはすぐに別れました。
せっかく忘れかけていた彼への恋心を思い出してしまう前にとそう思ったのに、借りている部屋についてドアを閉めた瞬間、涙が溢れてその場にうずくまってしまいました。
会えばこうやってまた彼の事を忘れられなくなることが分かっていたから、また会いたいなんてそんな事を思った事もなかったのに……。
神様は残酷な事をなさるなと思います。
******
彼と会って二週間が経ちました。
彼は今頃、どの辺りを旅しているのでしょう。
そんなことを思いながら久しぶりに冒険者ギルドの隣にある食堂を訪れた時です。
全く思いも掛けず、冒険者ギルドから出て来た彼と鉢合わせました。
「エーヴェル?? どうして?! 何でまだいるの??」
また会えた喜びとは裏腹に、驚きの余り
『とっとと出ていけばいいのに』
とでも言わんばかりになってしまった私の言葉に、彼がバツが悪そうに首を掻きながら言いました。
「モンスター討伐依頼が多いらしく、しばらくここを手伝うよう頼まれたんだ」
そう言われてみれば、最近モンスターの数が増えたとか、討伐に出た手練れのパーティーが戻らないとかそんな物騒な話をよく聞く気がします。
「この街にはあとどのくらいの間いるつもり?」
また会えるかなと、そう期待してしまう心を必死に抑えた結果、まるで
『さっさと用がすんだら出て行って』
とでも言いたげな聞き方になってしまっていることに気づかずに前のめり気味に尋ねれば、彼が申し訳なさそうに言いました。
「一月程頼まれたんだが……」
「ギルドの手伝いって危なくはないの? くれぐれも無理して怪我したりしないでね?」
思わず彼に触れるのを懸命に耐えて。
でも彼がしばらくこの街にいることが嬉しくて、思わず縋るような目でそう言えば
「ありがとう。気を付ける」
彼がようやくホッとしたように顔を上げ、彼の人柄が透けて見えるような優しい穏やかな懐かしい笑顔を向けてくれました。
彼と離れた後で考えます。
お城にいたときには番ではなくなったことを理由にあっさりフラれてしまいましたが、私、今でも彼のことが好きです。
大好きです!
彼とまた会えてはっきり自覚してしまったこの気持ちは、どうしたらいいのでしょうか?
お城にいた頃、かつて彼の番であった頃の自分が書いた日記を読んだ事があります。
そこには『生まれ変わったら強くなりたい』、そう書かれていました。
番でも何でもない私にとって、王の座を退いたとは言え彼は本来手の届かない人です。
日記に書かれていた内容から察するに、かつて彼の番の私だったら、はなから彼と共にあることなんて諦めて、その姿を見ているのは苦しいからと早々にこの街をしばらくの間離れることでしょう。
でも……。
今の私はかつての私とは違うのです!
体は同じですが、かつての私が望んだ様に強く生まれ変わったのだと思っています。
そうです!!
せっかく生まれ変わったのだから、番であった私を越えるくらい彼に好きになってもらえるよう頑張ってみればいいのではないのでしょうか?!
そうと決めれば善は急げです。
少しでも彼の近くに居られるよう私も冒険者のお仕事してみようと思い、一直線に冒険者ギルドに向かいました。
124
あなたにおすすめの小説
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
初恋だったお兄様から好きだと言われ失恋した私の出会いがあるまでの日
クロユキ
恋愛
隣に住む私より一つ年上のお兄さんは、優しくて肩まで伸ばした金色の髪の毛を結ぶその姿は王子様のようで私には初恋の人でもあった。
いつも学園が休みの日には、お茶をしてお喋りをして…勉強を教えてくれるお兄さんから好きだと言われて信じられない私は泣きながら喜んだ…でもその好きは恋人の好きではなかった……
誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。
更新が不定期ですが、よろしくお願いします。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
竜王の花嫁は番じゃない。
豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」
シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。
──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く
紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?
あなたの運命になりたかった
夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。
コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。
※一話あたりの文字数がとても少ないです。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる