【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea

文字の大きさ
4 / 39
本編

十年後

しおりを挟む
【Ewertlars】

妙な胸騒ぎを覚えて、部屋に戻りそこに彼女がいない事に気づいた時には心臓が凍り付いたかと思った。

発見が早かった為、レーアは辛うじて一命を取り留めたが、目を覚ましたレーアは僕のことも、彼女自身の事も全て忘れていた。
そして、どういう訳か番のあの抗いがたい香りが彼女から完全に消えてしまっていた。






******

体調が戻ったレーアは、まるで生まれ変わったように明るく、そして逞しくなっていて。
また僕に恋をしてくれて、しばらくの間城の中で楽しそうに暮らしていた。


それは幸せな事のはずなのに。
喜ばしい事のはずなのに。
レーアはそこに確かにいるのに……。

心から愛した彼女とは全く違う反応を返すレーアに。
思い出を共有出来ない彼女に。
番の香りを失った彼女に。

僕の中で喪失感は日々どうしようもないくらい強くなっていって

『あぁ、あの弱い彼女こそが僕の番であって彼女はあの晩確かに死んでしまったのだな』

と、そう思った。




無邪気に僕の事を慕ってくれるレーアは妹のようにかわいらしくて。
少しの間家族と過ごすようなおだやかな時間が続いた。


しかし、彼女が番でない以上、自分は新たに本来迎えるべき家の出の妃を迎え入れなければならなかった。

その事をレーアに告げた時の、彼女の悲しむような、諦めたような表情には胸を締め付けられる物があった。
それでも。
番であった彼女に離縁を切り出されたときに感じたような、あの世界から色が抜けていくような絶望感は感じなくて、あぁ本当にこれでさようならなんだなと、僕の中には寂しさだけが残った。






******

しばらくした頃、心配になって彼女の故郷に様子を見に行ったが、どうやら記憶の戻らなかった彼女はそこには戻っていなかったようだった。

妙な未練を残さぬ為、敢えて彼女の足取りを調べたりはしなかった。
そうしているうちに時間が経ち、レーアその後どこでどうしているのかは誰にも分からなくなった。




その後、結局僕は新たに妃を娶る事はなかった。
そして僕の我儘を誰も責めたりはしなかった。





短過ぎるといわれる十年の僕の治世が終わり、王位を弟に譲った僕はまた冒険者を装って当てのない旅に出た。
長い長い旅の後、偶然立ち寄った大きな冒険者ギルドのある街で、何かに導かれるようにして、またレーアに会った。


声を掛けようか、このまま立ち去るべきか迷った時、僕に気づいたレーアが、まるで懐かしい友達に会ったかのように気さくに僕に手を振って見せた。

強い磁石に引き寄せられるように、思わず彼女の傍にフラフラと歩みよれば。
少女から美しい女性に姿を変えた彼女が、城にいた頃と同じ様にまぶしい程に明るく笑って、また僕を苦しめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

初恋だったお兄様から好きだと言われ失恋した私の出会いがあるまでの日

クロユキ
恋愛
隣に住む私より一つ年上のお兄さんは、優しくて肩まで伸ばした金色の髪の毛を結ぶその姿は王子様のようで私には初恋の人でもあった。 いつも学園が休みの日には、お茶をしてお喋りをして…勉強を教えてくれるお兄さんから好きだと言われて信じられない私は泣きながら喜んだ…でもその好きは恋人の好きではなかった…… 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新が不定期ですが、よろしくお願いします。

竜王の花嫁は番じゃない。

豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」 シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。 ──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

あなたの運命になりたかった

夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。  コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。 ※一話あたりの文字数がとても少ないです。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

処理中です...