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本編
十年後
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【Ewertlars】
妙な胸騒ぎを覚えて、部屋に戻りそこに彼女がいない事に気づいた時には心臓が凍り付いたかと思った。
発見が早かった為、レーアは辛うじて一命を取り留めたが、目を覚ましたレーアは僕のことも、彼女自身の事も全て忘れていた。
そして、どういう訳か番のあの抗いがたい香りが彼女から完全に消えてしまっていた。
******
体調が戻ったレーアは、まるで生まれ変わったように明るく、そして逞しくなっていて。
また僕に恋をしてくれて、しばらくの間城の中で楽しそうに暮らしていた。
それは幸せな事のはずなのに。
喜ばしい事のはずなのに。
レーアはそこに確かにいるのに……。
心から愛した彼女とは全く違う反応を返すレーアに。
思い出を共有出来ない彼女に。
番の香りを失った彼女に。
僕の中で喪失感は日々どうしようもないくらい強くなっていって
『あぁ、あの弱い彼女こそが僕の番であって彼女はあの晩確かに死んでしまったのだな』
と、そう思った。
無邪気に僕の事を慕ってくれるレーアは妹のようにかわいらしくて。
少しの間家族と過ごすようなおだやかな時間が続いた。
しかし、彼女が番でない以上、自分は新たに本来迎えるべき家の出の妃を迎え入れなければならなかった。
その事をレーアに告げた時の、彼女の悲しむような、諦めたような表情には胸を締め付けられる物があった。
それでも。
番であった彼女に離縁を切り出されたときに感じたような、あの世界から色が抜けていくような絶望感は感じなくて、あぁ本当にこれでさようならなんだなと、僕の中には寂しさだけが残った。
******
しばらくした頃、心配になって彼女の故郷に様子を見に行ったが、どうやら記憶の戻らなかった彼女はそこには戻っていなかったようだった。
妙な未練を残さぬ為、敢えて彼女の足取りを調べたりはしなかった。
そうしているうちに時間が経ち、レーアその後どこでどうしているのかは誰にも分からなくなった。
その後、結局僕は新たに妃を娶る事はなかった。
そして僕の我儘を誰も責めたりはしなかった。
短過ぎるといわれる十年の僕の治世が終わり、王位を弟に譲った僕はまた冒険者を装って当てのない旅に出た。
長い長い旅の後、偶然立ち寄った大きな冒険者ギルドのある街で、何かに導かれるようにして、またレーアに会った。
声を掛けようか、このまま立ち去るべきか迷った時、僕に気づいたレーアが、まるで懐かしい友達に会ったかのように気さくに僕に手を振って見せた。
強い磁石に引き寄せられるように、思わず彼女の傍にフラフラと歩みよれば。
少女から美しい女性に姿を変えた彼女が、城にいた頃と同じ様にまぶしい程に明るく笑って、また僕を苦しめた。
妙な胸騒ぎを覚えて、部屋に戻りそこに彼女がいない事に気づいた時には心臓が凍り付いたかと思った。
発見が早かった為、レーアは辛うじて一命を取り留めたが、目を覚ましたレーアは僕のことも、彼女自身の事も全て忘れていた。
そして、どういう訳か番のあの抗いがたい香りが彼女から完全に消えてしまっていた。
******
体調が戻ったレーアは、まるで生まれ変わったように明るく、そして逞しくなっていて。
また僕に恋をしてくれて、しばらくの間城の中で楽しそうに暮らしていた。
それは幸せな事のはずなのに。
喜ばしい事のはずなのに。
レーアはそこに確かにいるのに……。
心から愛した彼女とは全く違う反応を返すレーアに。
思い出を共有出来ない彼女に。
番の香りを失った彼女に。
僕の中で喪失感は日々どうしようもないくらい強くなっていって
『あぁ、あの弱い彼女こそが僕の番であって彼女はあの晩確かに死んでしまったのだな』
と、そう思った。
無邪気に僕の事を慕ってくれるレーアは妹のようにかわいらしくて。
少しの間家族と過ごすようなおだやかな時間が続いた。
しかし、彼女が番でない以上、自分は新たに本来迎えるべき家の出の妃を迎え入れなければならなかった。
その事をレーアに告げた時の、彼女の悲しむような、諦めたような表情には胸を締め付けられる物があった。
それでも。
番であった彼女に離縁を切り出されたときに感じたような、あの世界から色が抜けていくような絶望感は感じなくて、あぁ本当にこれでさようならなんだなと、僕の中には寂しさだけが残った。
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しばらくした頃、心配になって彼女の故郷に様子を見に行ったが、どうやら記憶の戻らなかった彼女はそこには戻っていなかったようだった。
妙な未練を残さぬ為、敢えて彼女の足取りを調べたりはしなかった。
そうしているうちに時間が経ち、レーアその後どこでどうしているのかは誰にも分からなくなった。
その後、結局僕は新たに妃を娶る事はなかった。
そして僕の我儘を誰も責めたりはしなかった。
短過ぎるといわれる十年の僕の治世が終わり、王位を弟に譲った僕はまた冒険者を装って当てのない旅に出た。
長い長い旅の後、偶然立ち寄った大きな冒険者ギルドのある街で、何かに導かれるようにして、またレーアに会った。
声を掛けようか、このまま立ち去るべきか迷った時、僕に気づいたレーアが、まるで懐かしい友達に会ったかのように気さくに僕に手を振って見せた。
強い磁石に引き寄せられるように、思わず彼女の傍にフラフラと歩みよれば。
少女から美しい女性に姿を変えた彼女が、城にいた頃と同じ様にまぶしい程に明るく笑って、また僕を苦しめた。
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